これは日常系と呼んで良いのだろうか?-アニメ『小林さんちのメイドラゴン』感想

2017年冬アニメの『小林さんちのメイドラゴン』を見た。きっかけは某動画共有サイトで人気が出ているようだったこと。京都アニメーションが作っているから安心して見られるというのもある。

映像の質には文句の付けようがない。流石京アニ、専門的なことは分からないけれどすごく丁寧に作られている感じがする。全盛期に比べると若干落ちるかもしれないが、絵がとにかく良く動く。結構手の込んだ複雑な動きもする。見ているだけで楽しい。

絵の質感について・・・今作はまるで水彩画や色鉛筆画のような柔らかい感じの絵だ。手書き風というか、良い感じのアナログ感があると言うべきだろうか。色使いがパステルカラーで目に優しい。

可愛くて魅力的なキャラクター・・・メイド以外にもロリとか巨乳、おねショタ、百合など様々な属性を持ったキャラクター(主にドラゴン)が登場する。

公式サイト/キャラクター紹介

※以下ネタバレが含まれますので未視聴の方はご注意ください

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気になった所

絵やキャラクターは好きなのだが、ストーリーにはちょっと気になる所があった。

『小林さんちのメイドラゴン』はなんだかところどころ暗いアニメだった。結構深刻でおも~いシリアスシーンが挟まれるのが辛いぜ。頭空っぽにして見られる日常系とはちょっと違うのかなと思う。

キャラクターたちがワイワイ楽しくやった後に深く考えさせられるようなシーンを入れてくる。EDに異種間コミュニケーション云々って歌詞があるけど、そういう価値観の違いから来る葛藤みたいなテーマも入ってるんだろうね。

正直言って、あんまり重いシリアスは欲しくなかった。萌え豚の勝手な意見なんだけれども。そういうのは最初から硬派だと分かる作品でやってくれたら良かった。
日常系萌えアニメだと油断してたから、暗いシーンでちょっと(いや、かなり)落ち込んでしまったぞ。

以下、具体例をいくつか挙げる。

シリアス&落ち込んだシーンの紹介

第4話「カンナ、学校に行く!」より

小林、トール、カンナの3人が学用品を買いに出かけ、学校指定の店に入るシーン。トールは、体操服や運動靴のデザインがみんな同じであることに疑問を持ち小林に尋ねるが…

小林「差異をなくすためだよ」

トール「みんなと違うとどうなるんですか?」

小林「排除される…こともある。(中略)人間は異物を好まないんだ」

トール「愚かですね」

愚かだと思うけど、みんな普通と違うものは怖い(から仕方ない)と言う小林。
トールは、ドラゴンの力を使いひったくりを退治した時のことを回想する。人間達の怯えたような視線を思い出し「なんかわかります」と答える。

それを聞いていたカンナが悲しそうな表情で小林の裾を引っ張る。
小林「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだけど気を使わせた」

これ、視聴者(日常系だからシリアスが無いと勘違いしてた層)にも言って欲しいです。気は使ってないけど、すごく暗~い気持ちになった。

この回(第4話)には、トールが人間に対しシニカルな見方をする場面がいくつもある。

下校中、カンナの「(学校が)楽しかった」という発言に対して「楽しくないこともあると思いますよ」と言っちゃうトールさん。小さい子にそんなこと言うのはやめてあげてよ…。

第5話「トールの社会勉強!」より

トールが「人間に寄り過ぎている」と感じたファフニールは、彼女に、「元の世界に戻った時人間を殺せるのか」と問う。元の世界に戻る気はなく小林と暮らすことを決意したトールに対し、

「100年やそこらでお前が愛着を持つ人間は死ぬのだ。だったら…」

と、これ以上人間と深く関わるのはやめ、元の世界に戻ることを勧める。

トールとファフニールが向き合っている

©クール教信者・双葉社/ドラゴン生活向上委員会(第5話より引用)

寿命の大きく異なる者同士、いくらお互いがかけがえのない存在になっていたとしても、いずれは別れが来る。愛するものを失い、残された者は残りの長い人生を喪失感を抱えながら生きることになる。
異種間交流する上で避けられないテーマではあるが、日常系アニメに持ってくるには重すぎる。

どこかで似たようなシーンを見たことがあると思ったら映画『ロード・オブ・ザ・リング』だった。

人間の男アラゴルンに恋をしたエルフの娘アルウェンに、父エルロンドが同じようなことを説いていた。命に限りのある人間とは別れ海の向こうの国に渡り、エルフの永遠の命を生きるよう諭していた。

ちなみに映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作小説『指輪物語』を書いたのは、英国の作家J.R.R.トールキン。
『小林さんちのメイドラゴン』のトールの名前は北欧の神からでは無く「こっちの世界(人間界)の作家から取った(第2話より)」らしい。この作家がJ.R.R.トールキンだと言われている。

トールキンの小説でドラゴンが関係するのは『指輪物語』の前日譚『ホビットの冒険』(映画版のタイトルは『ホビット』)。奪った数多の財宝の上で眠る貪欲な龍、スマウグが登場する。ファフニールに少し似ている。

話がそれてしまったが、見て落ち込んだシーンの紹介を続ける。

第7話「夏の定番!」より

小林とトールがそれぞれの親のことを話す。トールは小林のことを親に紹介したいが、それはできないと言う。

「きっと(小林さんは)殺されてしまうなって」

悲しいけどドラゴンの世界ではそれが常識。人間と仲良くするトールのほうが異端なのだ。

小林(独白)「言葉が通じるってことと、分かり合うってことの差を見せつけられる」

このシーンにも結構心を抉られた。水着回でドタバタをやった後に持ってくるのがね。落差が大きくてもう…。

ネット上の感想を見ると、愉快なシーンだけではなく暗いのが挟まれているのが魅力という意見も。同じものを見ても感じ方は人それぞれなんだなあと思った。
それと、原作はもっとシリアスで暗く、アニメはこれでも明るく日常系寄りになっているとか…。

京アニがある程度アク抜きした感じなのかな?原作の雰囲気を壊さない範囲でシリアスを削ったということでしょうか?機会があれば原作を読んで比べてみたい。あんまり暗いと病みそうだけど…。

キャラクターの性格設定に違和感

一部キャラクターの性格が変、と言うか違和感がある。特に気になったのが滝谷。ファフニールを快く住まわせてあげる所から分かるように、気遣いのできる良いやつで、印象の良いキャラクターではあるのだけど、人格が2つに分裂していると思う。

会社では爽やかイケメン(少しキザ)の滝谷が、プライベートでは変な喋り方のグルグルメガネ出歯オタクになるのは流石に変化が大き過ぎだ。

いくらフィクションだと言ってもついて行けない。荒唐無稽なギャグアニメなら良いのだけど、ちょくちょくシリアスシーンが入ってくる本作でこれはちょっと…。二重人格か何かの病気に見えてしまう。

小林さんも酒飲んだ時に人が変わるけど、それはまあギリギリ設定として受け入れられる。それがトールと出会い、好かれるきっかけでもあったのだし。

小林さんというキャラクターについて思うこと

酒飲みなのは別に気にならないが、発言が少々説教臭く感じる。若いのに精神は老いてる感じ。

変に達観していると言うか。それにセリフが所々キザな感じで鼻につく。滝谷と同じく良いやつではあるんだけどあんまり好きになれない。嫌いという訳では無いのだが。

どっかのコメントで「小林は俺TUEEEE系主人公みたい」って言われてたけど、確かに一部そっち系の要素が含まれている気がする。飲んだくれの所さえ除けば完全無欠なんだよな小林さん。

仕事が速く何でもそつなくこなす。

周囲への気配りができて慕われる。

冷静沈着で何事にも動じない。

パワハラ上司もさらりと退職に追い込むし、有能すぎて人間っぽくないんだよ、まるで機械。完璧すぎて人間としてのリアリティが無いとも言える。
(捉え方よっては、感情を持たないロボットのような人間がドラゴンとの交流で家族や愛の意味を知り、心を取り戻す物語なのかもしれないな、これは)

小林さんは女性だったから良かったけど、これが男性主人公だったら視聴者から袋叩きにされてそう。小林さんの性別が女だから見えにくくなっているけど、実質ハーレムものだものなあ、女性型のドラゴン達に好かれて同棲するなんて。

小林さんは見た目も含め女性的な要素が希薄だから、性別を男に変えても違和感無く話が成り立つ。逆に考えれば、「読者・視聴者に不快感を与えないため」という戦略的理由から、従来男性キャラにやらせる役回りを女性にやらせたと言えるのかもしれない。

京都アニメーションは変わったのか

作品の内容について感想を書いてきたけど、今度は制作会社の京都アニメーションについて。

ここ数年の京アニはなんで変わり種の原作をアニメ化したがるんだろう。高い技術力とブランドがあるから王道作品をやればそれなりのヒットが狙えるのに。

『日常』とか本作のように独特で人を選ぶ作品をチョイスするのが。『日常』も映像のクオリティはかなり高く感じたけど、奇抜なセンスのギャグ&シナリオだったから合わない人は全く笑えず見るのが苦痛だったと思う。

そもそも最近の京アニはよそから原作を持ってくることが少なく、自社レーベル(KAエスマ文庫)のラノベ原作ばっかり。小説の賞を創設して作品を募集、自社レーベルで刊行してアニメ化する。よそではあんまりやってない方式だ。

keyのノベルゲームやハルヒをアニメ化していた頃とはかなりスタンスが変わったようだ。このような原作選びをするのは商業的な理由だろうと思うけれど、たまには流行った漫画やラノベもアニメ化してもらいたいな。

おわりに

映像とキャラクター、日常シーンは楽しめたから視聴を続けたが唐突に挟まれるシリアスシーンは好きになれなかった。

キャラクターのドラゴンたちは個性的で可愛いが、そのぶんシリアスシーンの雰囲気と合わないような気がした。まあ、シリアスはほぼトール関連なんですけどね。他のドラゴン達はのんきに日常系をやっている。

トールだけ重くて暗くて、病んでいて異質に感じる。だけど見方を変えれば物語の主題は「小林とトールの異種間交流」だから、他のドラゴンたちの日常シーンのほうがオマケなのかもね。

未視聴の方へ、『小林さんちのメイドラゴン』はただの日常系だと思って見ないほうが良い。シリアスが苦手な人にはおすすめできない作品だ。

癒しを求めて見ると重たいシーンで逆に疲れる。一方でガッツリシリアスが見たい人には物足りないだろうし、ターゲットをいまいち絞り込めていない感じがする。

萌えキャラの出る日常系が好きで鬱展開・シリアス展開に耐性がある方は是非ごご覧になって下さい。シナリオに好き嫌いはあるけど、クオリティ自体はとても高い作品。

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