映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の感想

この作品は昨年12月に映画館で鑑賞していたのだが、何回も見たかったのでブルーレイ(正確にはDVDやデジタルコピー付きのMovieNEX)を購入。先日、自宅でゆっくり視聴した。劇場上映とは違い、止めたり戻したりしながら見られるのがメリット。好きなシーンや分かりにくかったシーンを繰り返し見ることで作品への理解が深まる。

※少々ネタバレが含まれますので未視聴の方はご注意ください

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原作へのリスペクトが感じられるスピンオフ作品

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の直前までを描くスピンオフ作品。反乱軍の名も無き人々が、惑星を丸ごと破壊可能な銀河帝国の超兵器「デス・スター」の設計図を奪うため奮闘する物語だ。

『ローグ・ワン』にはジェダイが登場せず、作風もハードでシリアスなものだが、しっかり『スター・ウォーズ』をしていた。オリジナリティのある内容だが、原作のテイストもしっかり残されており、ジョージ・ルーカスが創造した宇宙で起こった出来事だと違和感なく受け入れられる。ギャレス・エドワーズ監督の原作に対する理解とリスペクトが感じられた。

ファンの二次創作みたいな『フォースの覚醒』とは違う

なぜか全然『スター・ウォーズ』っぽくなかった『エピソード7/フォースの覚醒』とは大違い。『フォースの覚醒』は、『エピソード6/ジェダイの帰還』の30年後という設定でありながらメカのデザインは当時とほとんど変わらず、歳をとった過去作のキャラクターが登場し、ストーリーも九割方焼き直しなのに、雰囲気が全く『スター・ウォーズ』では無かった。

表面的、視覚的には『スター・ウォーズ』なのだが、裏側にある世界観や精神が全く別物で、商業主義に陥った浅薄な作品に見えてしまう。素人が考えた中途半端な二次創作のようなシナリオで正直見るのが辛かった。実際、ディズニーの製作陣がルーカス案を蹴って独自に作った話らしいし、『スター・ウォーズ』の名を冠してはいるものの、別作品として見たほうが良いかもしれない。

その一方で『ローグ・ワン』は素晴らしい。『フォースの覚醒』ほど宣伝に力を入れてなかったからか日本ではあまり話題にならなかったけど、こっちこそ評価されるべき作品。『フォースの覚醒』に強い不満を表明していたルーカスも『ローグ・ワン』は気に入ったらしい。ルーカスが引退して権利を手放してしまったのは残念だけど、ギャレスと本作のスタッフみたいに彼の宇宙を受け継いで広げていくことのできる人がいて良かった。『ローグ・ワン』には過去作にはいないタイプのキャラクターが数多く登場するが、彼らが皆『スター・ウォーズ』世界の住人として違和感無く溶け込んでいるのが素晴らしい。

最新の映像技術でTIEファイターやXウイングを見られる幸せ

旧三部作(EP4~6)に登場した戦艦・戦闘機が現代の進んだ映像技術で描かれ、迫力のある宇宙戦を繰り広げる所も『ローグ・ワン』の魅力。

デジタル編集技術が未発達だった当時は戦闘機を一機一機フィルムに光学合成していたようで、大規模な宇宙戦は撮るのが大変。『エピソード6』ラストのエンドア上空での戦いは相当気合を入れて作ったらしく、合成を数百回繰り返すなど当時としては異例の映像だったようだが、目が肥えた今見ると質感が作り物っぽかったり、TIEファイター(戦闘機)の数が少なく感じられてしまったりと少々物足りない。
『ローグ・ワン』終盤、スカリフ上空の戦いで羽虫の大群のごとくウワァっと飛来するTIEファイター、当時デジタル技術があればこういうのが撮りたかったんだろうなとしみじみ思う。

ところで『エピソード6』の後に間を空けて作られた新三部作(EP1~3)は映像的にはかなりハイレベルになっているのだけど、宇宙船・戦闘機のデザインコンセプトが以前とは全然違うんだよね。曲線的でツルツルした質感であり、設定では前の時代なのにより洗練された感じになってる。

これには賛否両論あって自分は嫌いではないのだけど、角ばってザラザラしていて汚れた感じの旧三部作のデザインも魅力的なんだよなあ。TIEファイターやXウイングといった旧三部作の宇宙船が現代の映像技術で再現され、画面を縦横無尽に飛び回るところが見られてとても嬉しい。

蘇るターキン総督

映像技術といえば、名悪役のターキン総督がスクリーン上に蘇ったのも感無量だ。『エピソード4』でターキンを演じた俳優は既に亡くなっているのだが、体格・顔立ちの似た俳優にデジタル処理で顔の情報を貼り付けることにより、見事そのままの姿で『ローグ・ワン』に登場している。

本作の中でターキンが登場する場面は結構多いのだけど、違和感はほとんど感じられず最新の技術をもってすればここまでできてしまうのかと驚いた。また、ターキン以外にも当時の姿で登場する人物がいるので興味のある方は見て確かめて欲しい。

ベイダーの声が微妙に違う?

ダース・ベイダーも登場するのだが声に若干違和感があった。しわがれてると言うか、かすれていると言うか、力強さがない。元からかすれた感じの声ではあるんだけど、なんか以前の作品でのベイダーとは微妙に違う。ドスが効いていないと言えば良いのかな?
声を担当している人は最初の作品から変わらず、ジェームズ・アール・ジョーンズのままなのにどうしてだろう。

直近でベイダーが登場した映画『エピソード3/シスの復讐』から10年以上経過し、ジョーンズも高齢になったので声質が変わっていてもおかしくはない。だが、それよりもむしろ声を機械風にするエフェクトのかけ方が違うのではないだろうかと感じる。上手く言えないが、あまり音の強調や歪みがなくそのまま中の人の声が出ているような感じ…?

音声編集の技術も進んでいるだろうから、やろうと思えばそっくりそのまま『エピソード4』当時の声にできると思うのだけどな。微妙な違いだからそこまで気にするほどのことでもないのだが。

『ローグ・ワン』の悲劇的な結末と『新たなる希望』

『ローグ・ワン』では、帝国の圧政に立ち向かった勇敢な人々が次々と犠牲になる。この作品だけしか見ていない人にとっては、ほとんど救いがない結末である。今作のメインキャラクターは全員死亡、逃げ遅れた反乱軍の艦隊と兵士はベイダーによってメチャクチャに蹂躙される。「デス・スター」の設計図を奪えたという一点を除けばバッドエンドである。

だが、『エピソード4/新たなる希望』において、この設計図のおかげで「デス・スター」を破壊できたということを知っていれば見方が違ってくる。『ローグ・ワン』の名も無き人々が掴み取った希望(設計図)はレイア、ルークとバトンタッチされ、帝国に対する初の大勝利というハッピーエンドに繋がる。『ローグ・ワン』を見ることで『エピソード4』のラストシーンがより感動的になり、『エピソード4』を見ることで『ローグ・ワン』のラストシーンが救いのあるものに変わる。

ジェダイのルークが反乱軍にとって、いかに大きな希望の星であったかということも、フォースの使えない普通の人々である『ローグ・ワン』メンバーとの対比で明らかになる。両方を見ることでそれぞれの映画が深みを増すのだ。

SW初心者にも長年のファンにもおすすめできる作品

本編あってこそのスピンオフと言えるので、『スター・ウォーズ』シリーズをまだ見たことがない方には『エピソード4』とセットで見ることをお勧めする。また、『フォースの覚醒』を見て「ディズニーのスター・ウォーズはダメだ」と失望した古参ファンの方も、本作は大丈夫なので食わず嫌いせず見てもらいたい。長年論争の的であった『エピソード4』の謎、「デス・スター」に致命的な弱点が存在する理由が明かされ、オリジナルのシリーズがより一層楽しめるようになるだろう。