スマホ太郎やその弟分など、退屈さを楽しむアニメはもう十分に堪能した。そろそろ面白い異世界ものを見てみたいなぁと思って選んだのが『この素晴らしい世界に祝福を!』。
なろう系では『このすば』と『リゼロ(Re:ゼロから始める異世界生活)』の評判が良かったのだが、『リゼロ』の方は内容が重そうだったからパス。面白いのだろうけど、シリアスなアニメに耐えられる心の余裕がない。
これが酷くなるとスマホ太郎信奉者みたいにとにかくうすい虚無アニメしか見られなくなりそうだから気をつけないといけないのだが…。
『このすば』は、基本コメディだったし強敵との戦闘シーンでも深刻になりすぎず気楽に見られるのが良かった。疲れていても見られるし、なかなかいい感じだ。
なお原作は未読、以下アニメのネタバレが少々あるのでご注意ください。
あらすじ
引きこもりの主人公カズマは事故で命を落とし異世界に転生することになるのだが、転生させてくれる女神アクアの態度があまりにも悪い。
腹を立てた主人公は、転生者特典のチート能力を貰う代わりに女神を道連れにすること選び、魔王軍に滅ぼされかけの異世界へ転生する。
主人公のパーティには女神アクア以外にもクセの強い女の子が加入。強力な爆裂魔法が使えるものの一日一回限定で使うと力尽きて倒れてしまう厨ニ魔法使いめぐみん(本名)と、防御力は高いが攻撃が当たらないドMのへんたい騎士ダクネス。
主人公は嫌がったけど、成り行きで仲間になってしまった。
中世風のゲーム的異世界でちょっとおかしな仲間たちと協力しながらクエスト報酬を稼ぎ、なんとかかんとか生きていく話。コメディ作品で真面目に冒険しないので日常系に近い感覚で見ることもできる。
ただ完全な異世界日常ものというわけではなく、ちょこちょこ強いモンスターとの戦いがあってメリハリがついている。
『このすば』の良かった所
次に『この素晴らしい世界に祝福を!』アニメ1期の良かった所を挙げる。
重くない
上にも書いたが、シリアスになりすぎず疲れていても楽しく見られるのがいい。かと言って事件も何もないかったるい日常系という訳ではなく、ギャグとシリアスの塩梅がよろしい。
異世界に輝きがある
主人公の転生した異世界がとても美しく希望に満ち溢れた世界として描かれている、特に映像面で。魔王軍のせいで人口が減っているという設定はあるけど、街や人々は輝きを失っていない。
街とそこに暮らす人々(主人公たちも含む)が明るく生き生きと描かれていて、そこはかとない希望と幸福を感じさせる。生きていくのにいろいろ苦労はあってもここにいることが幸せだーっていう感じが伝わってくる。タイトルにある通り「素晴らしい世界」だ。
世界観が分かりやすいのはエンディングの映像。曲もマッチしてていい感じなんだけど、街と人の描写が凄くいいのよ~。とってもいい世界に見える。
キャラ達が幸せそう
チートは使えないし、レベルが低くて冒険にも出られないから肉体労働でその日暮らしをする転生直後のカズマとアクア。宿にも泊まれず寝るのは馬小屋の藁の上。
元の世界以上に過酷なんだけどなんか幸せそうなんだよね。口ではいろいろ言うんだけど心は満ち足りてる感じ。
何気ない日常描写からもエンジョイしてることが伝わってきてイイ!例えば仕事上がりに牛乳飲む所(第1話終盤)とか、労働者達と意気投合してワイワイやるところとか。
それに食べ物がうまそう。食事シーンが結構多いのだけど、食べてるキャラクター達がすっごい嬉しそうで見てる方も幸せな気分になれる。
初めは不満たらたらな二人だったけど、なんだかんだで異世界生活を楽しむようになっていた。
カズマは異世界で死亡し元の世界に転生させてもらえることになった時、異世界の仲間たちのことを思い出し涙を流していた(第7話)。本人が涙に驚いていたことから分かるように、自覚はしていなかったものの異世界での暮らしを相当気に入っていたようだ。このシーン好き。
アクアも「結構楽しい日々を送ってる」「連れてこられたことももう気にしてない」と言ってた。
ちょっと気になった所
ダメな所とまでは言わないけど見ていて「これはどうなの?」と思った点を書く。
主人公の死の扱い
カズマは人助けして命を落としたのかと思いきや、ただの勘違いで無駄死に。そのうえ失禁していたので皆から笑われたという。
死者を案内する女神も大笑いしていたけど、視聴者としてはあんま笑えない。いくらギャグ系転生ものと言っても死を軽く描きすぎで、どうなのと思った。
普通笑うかこれ?駄女神のアクアはまぁ人間を虫けら程度にしか思ってないだろうから分からんでもないのだけど、現世の人達まで笑っていたというのがよく分からん。
死人は死人だぞ、死体見て笑うってサイコパスかよ。しかも家族まで笑ってたというのはエグいなぁ。全然大切に思われてなかったってことだよな…。
引きこもりの穀潰しが一人いなくなって良かったね程度ってことか。ギャグテイストで書かれているけど現実が結構悲惨、やっぱりカズマは転生したほうが幸せだなこれじゃ。
盛り上がらない前半
前半(5話まで)に眠いエピソードが多い。つまらなくはないのだけど遅い。刺激が少なくテンポも良くないので見るのをやめようかなと思ってしまった。結局、再生速度をちょっとだけ上げて視聴。
キャベツが襲ってくるエピソードなど面白いのもあったけど、全体的に冗長な印象。もっと各話数にエピソードを盛り込んで、テンポを速めてもいいんじゃないかと思った。
6話以降は内容が充実していて文句なしに面白いと思えただけに残念。
絵のこと
話は変わり絵のことについて。
結構絵が独特な作品だった。それがこの作品の魅力であり、見る人によっては欠点にもなる。ネットを見ても賛否両論。
萌え系のはずなのに女の子の顔があんまり可愛らしくないし、キャラデザが妙に簡素なんだよなぁ。
線が少なく簡略化された絵柄。直線的というかラフな感じで描きやすそう。厳しい見方をすると手抜きっぽいとも言える。
だけどよく動く。絵を単純化することで動かしやすくしてるのだと思う。戦闘シーンにはカメラがぐるーと回り込んだりとか見ててワクワクする映像があるし、日常のなんでもない場面もしっかり動く。
ただ京アニのようなヌルヌル映像ではない。クオリティの高さを感じさせるアニメーションではないのだけど、あらゆる場面に動きが付いている。
多少崩れたりカクカクしているかもしれないけど大体いつも動いてる。普通なら手を抜くようなシーンでも紙芝居にならない。
一枚絵としてのクオリティを下げるのと引き換えに、動きを充実させているのだろう。綺麗な絵でよく動いてくれるのがベストなんだけど、予算やスケジュールに制約があるから仕方ないね。
最近では『ヤマノススメ サードシーズン』2話(一人原画回)がそんな感じだった。あれはギャグアニメじゃないしその話だけ絵柄が違いすぎたから違和感バリバリだったけれども…。
『このすば』はおちゃらけた作風だからこの絵でも許されてる部分があると思う。
ただ、原作絵が好きな人が怒りたくなるのは分かる。萌えアニメとして見るなら微妙なキャラ絵だ。ギャグに振ってるってことなのかな。
あとがき
一癖も二癖もある変わり者ばかりのパーティーメンバーが、不平不満を言いながらも、それぞれの長所を生かして敵や困難に立ち向かう所が魅力的だ。
主人公達はあまり強くないし、街を危機から救っても報われない。魔王討伐どころか万年金欠で食っていくのにも苦労している。
でも何気ない日常描写から異世界生活を心から楽しんでいることが伝わってきて、見ている方も幸せな気分になれるいいアニメだった。
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