2回目の『シン・ゴジラ』感想:画面のカッコ良さに気づく

テレ朝で『シン・ゴジラ』をやっていたので見た。これで2回目。初めて見た時には全然面白いと思えなかったけど、2回目の今回はオチが分かっているから細かい部分まで見られて、少しだけ魅力が分かった気がする。

以下少々ネタバレあり。未視聴の方注意。

初回の印象

『シン・ゴジラ』初回視聴時にあんまり面白くないと思った理由は、期待に反して地味な映画だったから。

特撮的な面白兵器が出てそれでゴジラと戦うみたいなのを期待してたんだけど、蓋を開けてみれば会話劇、政治家や官僚の早口会話シーンがメイン。予想と実際の映画が大きく違ったのでナンジャコレと思ってしまった。

ゴジラの暴れるシーンが少なくて派手さがないのが残念だった。怪獣映画なのに落ち着いていて静かな内容。若干眠い。ラストシーンも地味だしねぇ。

とまあ、あまり印象が良くない映画だったのだが、2回目だと結構受けるイメージが違った。めっちゃ面白いという訳ではないけど案外悪くないなぁと思えた。

相変わらず気になった点

2回見て分かった素晴らしい点を称賛する前に、やっぱり満足できなかった点について書いておく。

CGの質感

まずはやっぱりCGがCGっぽすぎて違和感がある。なーんかウソっぽい。ゴジラにしても、流れてくるボートにしても質感が作り物っぽくて背景から浮いてるんだよなぁ。わざと嘘っぽくしたのかなぁと思ってしまうくらい。

特撮の着ぐるみやミニチュアのような、リアルじゃないけど味のある物体を見せるためにこういうCGにしたというのなら評価できるが、リアルを目指してコレだとするとイマイチだなぁと。邦画は洋画に比べると桁違いに予算が少ないから仕方ないのだろうか。

会話

会話シーンがあんまり面白いと思えない。前述の通り『シン・ゴジラ』は会話劇。専門用語も使いながら登場人物達が凄い早口でしゃべりまくる。

会話のテンポの良さはなかなか面白いのだけど、話してる内容自体は面白みがないのよねぇ。序盤はおっ、なんか心地いいぞって思うけど、終盤までずーっとやられると流石に飽きてくる。

というか眠くなってくる。睡眠誘導効果があるよ。有名俳優達による安眠ボイスのような趣。

政治絡みのセリフ

また、とりあえず対米従属批判してみました、古い政治家批判してみました、民主主義の欠点を批判してみました、みたいに聞こえる政治絡みのセリフがしっくりこない。

そういうセリフからはなんというか熱意のようなものが感じられない。取って付けたような印象。

これ、制作陣がそういう思想を持ってるわけじゃないからだという気がするんだよな。どこか他人事みたい。そのセリフに賛成するとも反対するとも言っていない。

政治に何か言いたいからそういうセリフを入れたというわけではなく、時代の気分みたいなものを登場人物に言わせてるだけのように思う。そもそも、この映画全体が3.11以降の世相を反映したコラージュのように見える。

だから政治的なセリフにも世間の人が持ってそうな政治観を取り入れ、登場人物に言わせてるだけに思えてしまい、なんか心が動かない。

でもまぁそういうセリフを制作陣からの政治批判のメッセージだと解釈して喜んでる人たちもいるし、どの解釈が正しいのか自分には分からない。

嘘くさいカヨコというキャラクター

これは散々言われてることで今更なのだが、石原さとみが演じるカヨコ・アン・パタースンが変。『シン・ゴジラ』を高く評価してる人の中からも、このキャラクターだけは気に入らないという意見が出るくらいへんちくりん。

この映画はリアルな日本とフィクションのゴジラが戦うというのがテーマ。リアルな人間を出したいはずなのだが、カヨコは極端なまでにアニメ・マンガ的キャラクター。そのせいで世界観が台無しになってる気がする。

カヨコは米国大統領特使。日系三世でバイリンガルのはずが英語が下手くそだし、英単語交じりの変な日本語(ルー語?)をしゃべるのはまるでギャグ。

なんかね、すごい作り物っぽいキャラだよ。アニメキャラならそこまで違和感ないのだろうけど、実写でこれをやるのはちょっとまずいんじゃ…。

ラストがご都合主義っぽい

ラストのヤシオリ作戦はトントン拍子で上手く行き過ぎ、ええ~と思ってしまった。2回見てもやっぱりご都合主義感が拭えない。

ビル倒しや在来線爆弾で簡単に転倒、足止めされおとなしく口から薬品を注がれるゴジラさん…。ちょっとなぁ…。

薬物でゴジラを止めるという展開自体はある程度リアルさを感じるのだけど、ここまですんなりやられてしまうと嘘くさくなってしまうわ。

ここから良かった点

一回目では気づかなかったのだけど、映像がカッコいいですね。ゴジラCGの質感自体はあれなんだけど、構図とか撮り方が凄くクールで美しい。

破壊シーンのインパクトもたまらないわ。こんなに格好良く街を破壊していたとは。初見時には他の所に目が行っていたのか気づかなかったよ。

それに単なる東京の街の景色がメチャ美しい。こんな近未来的でセンスのいい都市でしたっけ東京。撮り方でずいぶん変わるもんだなと感動。

会議シーンもカメラの位置が妙に低かったりとか、登場人物が覗き込む画面の側から映していたりとか、凝った映像になっていて良かった。ダメな邦画にありがちな画面の安っぽさが無いですねぇ。

あと兵器やメカの映し方がとにかくカッコいい。凄くリアルで見栄えがするし音も本格的。そこだけでも視聴する価値があると思った。

離陸を待つ輸送へリと聞こえてくるエンジン音。この場面は臨場感にあふれていておおっと声が出そうなほどだった。

ミリタリー好き、メカ好きにはたまらないだろうね。そういったものに対するロマンが分かる人が作った映画だということがひしひしと伝わってくる。

さらに兵器だけではなく、何故かコンクリートポンプ車までカッコいいという。ポンプ車がゴジラの口へ薬剤を注入する場面は、完成度の高いジオラマ模型を見ているようで、絵的に独特の面白さを感じさせられた。

『シン・ゴジラ』にはとにかくオタク心をくすぐる映像が多い。

あとがき

2回見ても会話シーンを好きになることは出来なかったが、映像の凄さ、格好良さはよく分かった。今ならこの映画を高く評価している人の気持ちもなんとなく理解できるような気がする。

ただ庵野作品なら個人的にはエヴァシリーズのほうが好きだなぁ…。『シン・ゴジラ』続編を望んでいる人もいるけど、個人的にはそれより2020年公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が楽しみだ。

前作『エヴァQ』は一部で叩かれていたけど自分にとっては十分以上に面白かった。確かに暗いしわけわからない映画ではあったけど。

あの後どのような展開に持っていくのか気になって気になって…公開が待ちきれない。

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