またオレ何かやっちゃいました?TVアニメ「賢者の孫」感想(1話~12話)

記事内に広告が含まれています。

第11話「史上最強の魔法師集団」

今回もまぁ見れる回でした。

100体の魔人に襲われた隣国(スイード王国)を助けに行く孫一行(アルティメットマジシャンズ)。

彼らが空を飛んでるシーンはやっぱりシュールです。絵面がおかしすぎる。しかもゴーっという音を立ててるし、飛行機雲みたいなものも出てるし。どういうことなのよ……。

魔人は強いが……

モブの魔人も手から赤い魔法の弾を撃てるみたいですね。そういうことまでできちゃうと普通の人間にとっては脅威。物理では戦えないですし。

そんな魔人ですが主人公たちと比べれば遥かに弱いようです。

「たかだか人間ごときに討伐される気分はどうだ」とイキっている主人公は相変わらず痛々しい。格下相手に無双してもカッコよくないぞ!

それどころか、過剰な威力の魔法で敵をボコボコにする主人公たちはとても正義の味方には見えないです。魔人が悪だとしても、主人公たちも別の悪でしかありません。

ブーメラン投げ

黒髪眼鏡女が、「(魔人は)知能があって遊び半分に命を奪う分(魔物より)もっとタチが悪い」と言っていましたが、ブーメランじゃんこれ。

遊び半分で戦ってるのは主人公たちも同じでしょ! 強い力を持っている分より悪質だと思うんですが。魔人だって元は普通の人間だったと知っているのに、よくそこまで軽いノリで殺せるなぁ……。

眼鏡女の「どっちが多く狩れるか競争」っていう発言も引くわ。ただの学生がいきなり敵を容赦なく殺せる優秀な兵士になってしまっている。

魔人相手とはいえゲーム感覚で命を奪えるとはね。ここまでキャラクターに共感できないアニメも珍しいです。

そりゃ魔人を倒すこと自体が悪いとは言いませんよ。暴れて住人を襲ってるわけですし。

でも、自分らと同じ人間だったということをすっかり無視して、一切の躊躇無く遊びのように殺してしまえる所が怖いんですよ。彼らも魔人になる前は家族や友人がいたでしょうに。

やっぱ主人公一派はサイコパスの集まりなのかなぁ?も しシシリーが魔人化したら主人公は情け無用で殺すんでしょうかね? 壊れた人形なんて要らないとか考えるんでしょうか?

しかも主人公一派の中には明白に戦いを楽しんでる人がいるよね。オレンジの長髪女なんて敵を氷漬けにして喜んでるし、めちゃくちゃ嗜虐的で怖いわ。

子どもに見せるな

なろう系のこういう作品って絶対子どもに見せたくないですね。歪んだ価値観を植え付けられてしまうわ。有害すぎる。

エロがなくてもR18扱いでいいでしょ。それが厳しすぎるのならせめてR15くらいにはしてほしい。

アニメ版は絵柄がポップで受け入れやすいですが、不釣り合いなくらい内容がおぞましいんですよね。仮にも深夜アニメなんだし子供に見せていいものじゃない。

オッサンが現実逃避目的で見るならいいですが、未来のある子どもたちはこんなものを見ず、良心を持った優しいキャラクターが出るアニメを見てほしいですね。

(ネタではない)見どころ

一つだけ映像的に面白いシーンがありました。黄色髪と黒髪眼鏡がタッタッタと走って跳んで着地するシーンです。配信サイトの再生時間で言うと8分15秒ぐらいから。

ここだけ妙に躍動感があって、他のシーンの野暮ったい省エネ作画とは全く違う印象を受けました。着地後、顔の動きに合わせて髪がファサファサ揺れる所も妙にカッコいい。上手い人が描いたんでしょうか?

二人並んで走っているのを横から写してポーンと跳ぶ所を見せる。この表現はどっかで見たことあるんですよね。何の作品だったかなと。

最初は「エヴァ」かなと思ったけど、どうも違うみたい。で、いろいろ考えたんですが、「ルパン三世」シリーズのどれかだったような気もします。

改変?

最後のシーンでシュトロームが、「戦い楽しそう、なんで内緒で始めたの」みたいなことを言ってたけど、あんた、やる気をなくしてたんじゃないんかい…。

最終回で主人公と戦わせるため設定を変えたのかな? 読者によると原作でもまだ決着がついてないみたいなんですが。

まとめ

日常回と違って見ていて退屈はしませんでしたが、キャラクターの野蛮さについていろいろ考えさせられる回でした。

主人公サイドの描かれ方に違和感が残ります。彼らの振る舞いは倫理的に問題があると思うし、ちっとも応援したくならないです。

原作者と監督のコメンタリー

最終回感想の前にひとつ。

ニコ生で「生オーディオコメンタリー」というのをやっていたので見てみました。アニメ第8、9話を流しながら原作者と監督が喋るという企画。

監督の話を聞いて、内容がどんなものであろうとアニメを作るの大変なんだなぁと、再認識させられました。1話あたり20分そこらでもすごい枚数の絵を描いている。

コメントは好意的なものばかりではなかったのですが、原作者は気にしている様子でもなくメンタル強いのかなと思いました(コメントを拾っていない疑惑もあるけど……)。

原作者の人生はあまり良いものではなかったそうです。まぁ予想通りですよね、順風満帆に生きてきた人はこんなもの書かないものね。

ストレス発散のために書いていたと正直に告白をしていた所に好感が持てました。高尚なものを書いているわけじゃないことは本人も自覚しているんですね。

幸運にも、その自己満足小説に共感する読者が大勢現れ、書籍化、コミック化、アニメ化ですから本人も驚いているでしょう。

なろうで逆転

作者の境遇そのものが、現実で恵まれない人達の希望になっているのかもしれません。なろう小説書いて人生逆転みたいな感じで。

大逆転と言うほどではないかもしれませんが、部数は出ているようなので小金持ちにはなれたでしょう。シリーズ累計300万部らしい。

継続してヒット作を出すのはプロでも難しいと思うので、「賢者の孫」で稼いだ金は堅実に運用して老後資金にでもするのが無難なのかもしれません。

一発屋として終わることになるとしても、まとまったお金が手に入ったので生活に余裕が出来て生きやすくなったとは思いますね。将来設計も立てやすい。

なろう読者に媚びた小説を書いて一儲けしてやろうという人が沢山現れるのも当然の成り行きですね。成功できるのは一握りでしょうけど。

年を取れば分かる?

作者の印象は大分マシになりましたが、やっぱり作品自体は評価できませんねぇ……。物語としては微妙すぎる。なんでこれが一定の人気を得たのか謎だし、売れてるのが不思議で仕方ないですわ。

これの原作を読んだりアニメを見たりして鬱憤晴らしになるという理屈が分かりません。コメンタリーでは「年を取ったら良さが分かる」みたいなことを言ってたけど信じがたいです。

第12話「そして、世界へ…」

いよいよ最終回です。魔人の女幹部と戦うシーンがとても良かったですね。

主人公のやることか?

主人公は相変わらず容赦ないです。退却中の魔人を背後から容赦なく攻撃。強力なビームで一人残らず蒸発させるつもりのようです。

「簡単に逃げられると思うなよ」って正義側の主人公が言うセリフではないと思うんですが。怖いなぁ……。

リョナい戦闘シーン

今回は軽くリョナ要素があるので、そういうのが好きな人にはたまらないんじゃないかな?

魔人の女幹部ミリアは相当強く、主人公の取り巻きはボッコボコにやられます。女の子も悶絶顔に…。

©2019 吉岡 剛・菊池政治/KADOKAWA/賢者の孫製作委員会 第12話より引用

岩で腹パン。岩パン?

引用画像は腹に岩の塊が食い込んだときの表情ですが、かなりマニアのツボを抑えてると思います。すばらしい!

メガネの子は岩に挟まれてました。

主人公サイドが苦戦したのは初めてかな? アニメオリジナルなのかもしれない。

もしアニオリだったら「こんなのストレスフリーじゃないっ!」って原作ファンが怒らないか心配です。

でもこの後は主人公が登場し、いつも通りの展開に。

悶絶してた女の子たちは、主人公の強さを見せつけるための「ダシ」にされただけみたい。流石の女幹部も孫には勝てんと思ったのか大爆発を起こして退却。

主人公の取り巻きたちはボコられてかなりのダメージを負っているはずなのにピンピンしているというね。普通に元気。

例の服のおかげなのか、回復魔法がすごいのか知りませんがヌルゲーですね。身内に甘く敵には厳しい。

あるいはリョナられたうえ退場者まで出たら原作ファンが怒るから、ダメージをなかったことにしたのかも?

笑いどころ

空から降下する主人公と王子を見た味方兵士が、

「空から!」「魔人か!?」

と勘違いする場面は笑えました。主人公たちって、はたから見れば魔人と大して変わらないんですよね実際。かなりヤバい魔法使ってますし。

凡人の悲しみ

冒頭から救護所で怪我人を治療していたシシリー。しかし治癒魔法といえども重症患者は治せなかったようです。

もう手の施しようがないと絶望していたのですが、いいタイミングで主人公が現れ、簡単に回復させちゃいました。

シシリーは怪我人を心の底から助けたいと思って治療していたようですが、能力では主人公の足元にも及びません。

天才の前では優しさや努力など無意味。なんか悲しくなりますね。凡人は天才の引き立て役でしかない。

万事がそんな感じで、誰もが主人公sugeeeするための踏み台にしか見えないのですが……。見てるこっちの心が汚れてるのかな?

無力感に苛まれるシシリーを、上から目線でなだめる主人公に腹が立ちました。

何を言っても許してくれるロボットだからって接し方ってものがあるだろ! 普通そんな言い方されたらいい気はしないと思うんですが。

そのあと怪我人たちがズラーッと並んで、「シシリー様のおかげで助かった、あなたは聖女様だ」みたいなことを言うシーンがありました。なんかわざとらしいんですよね。誰かがお膳立てしたようにしか見えん……。

なんで大勢集合してんだよ。怪我人は安静にしとけや! もしや主人公が「シシリーを褒めろ! さもないと……死ぬぞ?」って裏で脅してたんじゃないの?

でもまあ、シュトロームみたいに絶望が原因で魔人になるかもしれないので、シシリーのご機嫌取りをしたのは正しかったのかもしれません。

闇落ちしないよね…

ヒロインが闇落ちしてくれたほうが面白いのに、なろう系チート作品だとそういう展開にはならないのでしょうね。読者が求めているストレスフリーとは違うからね。

例えば、怪我人に紛れ込んでいた魔人がシシリーに「魔人になれば主人公よりも強大な魔力を手に入れて沢山の人を救えるよ」なんて悪魔の囁きをしたら楽しいんだけどなぁ。

優しさから悪の道へ行ってしまう展開って萌える。暗黒面の力は素晴らしいぞ!

あとシシリーが魔人側に回った時、主人公がどんな対応をするのか見てみたいです。

薄情にも「壊れた人形なんていらんわ」と首スパーンをやるのか、人間に戻そうと奮闘してカートくんの時とのダブスタぶりを見せつけてくれるのか。どっちに転んでも面白い!

なにこの終わり方…

魔人対策に各国が連合を組むことになり、王子は交渉のため他国へ向かうことに。主人公は魔人が現れた時すぐにゲートで駆けつけられるよう、色んな国に行っておきたい。

両者の思惑が一致したのでみんなで世界を回ることになりました。

「そして、世界へ…」ってそういうことなのね。例のごとく民衆の歓声を受けながら空へ飛び上がり世界へ出発。でも宿が取れなかったからゲートで帰ってきておしまい。

何じゃこの終わり方は……。シュトロームとの直接対決もなく、中途半端なところで終わりました。

2期はなさそうだけど、円盤が沢山売れればあるいは…。スマホ太郎よりは売れるかな?

最終回まとめ

最終回も相変わらずしょーもない内容でしたが、全12話の中で言うとかなり面白いほうでした。

特に女魔人戦のリョナ的シーンが良かったです。表情が素晴らしいし、声もなかなかでした。最終回でやっとキャラが可愛いと思えました。

「雑魚相手にイキってた連中が、突然現れた強敵に手も足も出ず一方的にボコられる」というシチュエーションも最高! カタルシスがあります。

©2019 吉岡 剛・菊池政治/KADOKAWA/賢者の孫製作委員会 第12話より引用

最終回にこんな素晴らしいシーンを持ってきてくれるとは思ってもみませんでした。これが見られただけでもう満足です。最終回まで見た甲斐がありました。アニメスタッフに感謝です。

主人公サイドは最後まで圧勝で、傷一つ負わずに終わると思ってましたよ。アニオリだとしたら名采配。

あと常識派の赤髪の子が突然顔を掴まれ、後頭部から地面に叩きつけられたシーンが理不尽でたまりません。ここもポイント高いです。この子は全然イキってなかったのにね。

©同上

加勢した4人の中から彼女を狙ったのには何か理由があるのでしょうか。なお残り3人は男。「男がリョナられる所なんて誰も見たくないから」というのは考えすぎかな?

キャラのこと

主人公と王子は印象が悪かったです、とても。常にイキったり、権力を見せつけたりしているイメージ。ナチュラルに嫌なやつじゃん。

好きな男性キャラは、強いて言うなら爺さんかなぁ。あと敵ですが、シュトロームやカートには同情できます。少なくとも主人公よりは好感持てますね。

女性キャラでは赤髪の子と棒読みの女騎士がいいですね。

赤髪の子(マリアだったっけ?)は運悪く主人公一派に巻き込まれただけで、普通に性格の良い子だと思います。他の連中と違って力に溺れてイキったりしない。主人公の作ったチート服も着たがらなかったし。

女騎士は素朴な人柄が好印象。棒読みの声に引っ張られてそういうイメージを持っただけかもしれないけど、裏表がなくて良さそうじゃん。

シシリーはロボット過ぎて可愛いと思えないですね~。主人公の道具みたいな扱いで可哀想だわ。でも本人はそれを受け入れている。なんか哀れな存在。

小さい黄色の子と黒髪眼鏡の子はヤバイね。相当主人公に毒されてます。思考も行動も彼そっくり。優秀な信奉者ですね。

他の人達は印象が薄くてもう…。何度も書いたと思いますが、キャラの掘り下げがほとんどないまま次々と新しいキャラを出していくので、どんなやつがいるのか分からなくなりますよ。

そこんところをなんとかして欲しい。主人公以外はモブでしかないのかね?

おわりに

興味本位で見始めた「賢者の孫」ですが、無事最終回まで見届けることができました。ここまで長い道のりでした。

とはいえ、スマホ太郎こと『異世界はスマートフォンとともに。』よりは見やすかったと思います。

主人公の不快感はスマホ太郎より大きいけど、見ていてスマホ太郎ほど眠くはなりません。どちらもクソアニメと呼んで差し支えのない内容だと思いますが、酷さの方向性が違いますね。甲乙つけがたいです。

ただ作画的にはスマホ太郎より全然マシ、あっちは絵面があまりにもチープでした。ほとんど全てのシーンを、製作費の安い海外弱小スタジオに作らせたんじゃないかと疑いたくなるレベル。

対して『賢者の孫』は大きな作画崩壊もなく、必要最低限の映像クオリティは担保されていました。そこは大いに評価できます。原作がどうであれアニメスタッフは全力を尽くしたのでしょう。

来期(2019年夏)はなろう小説を原作としたアニメが4本も放送されます(広義のなろう系を含めると5本)。業界はなろう系アニメの量産体制に入っているようです。

興味深い事態になりました。可能な限りチェックして感想をアップしようと思います。

 

雑多な文章を最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。『賢者の孫』ファンの方には、否定的なことばかり書いてごめんなさい。

タイトルとURLをコピーしました