作画が良いけど物語は…『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の感想。

筆者は最近ガンダムシリーズを見始めたにわかです。これまでに見たガンダムシリーズは、ファースト、Z、逆襲のシャア、鉄血のみ。

『0083』は初代『ガンダム』と『Zガンダム」の間の出来事を描いたOVAです。

ジオンの残党が核弾頭を積んだ試作機のガンダムを連邦から強奪、これを使い連邦への攻撃を企てます。その計画を阻止するため連邦側の主人公、コウ・ウラキたちが活躍するストーリーでした。

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映像が素晴らしい

映像のクオリティはメチャクチャ高いです。手描きアニメの中では最高クラスの出来に見えました。さすが景気が良かった時代のOVA。掛かっている金額が今のテレビアニメとは比べ物にならないほど多いのでしょう。

とにかくメカの描き込みが凄い。線が非常に多く細部まで描かれています。リアルさが段違い。ジムでさえカッコイイ。アルビオンほか戦艦もいいですね。

線が多い絵が滑らかに動くのに感動を覚えました。本作のように精密な絵が動く手描きアニメはもう作られないのではないでしょうか。今や戦艦やメカは3DCGで描かれることが主流になっていますし。

あと序盤、地球が舞台だった時の暑そうな感じが良かったです。映像から暑さが伝わってくる。

軍服が半袖で、ピシッと着るんじゃなくて、中のシャツが見えるようなちょっとゆるい着方してるのがなんかいいです。オーストラリアの暑さの前では仕方ないのでしょうね。ピシっと着ていたら暑くて仕事にならない。

ストーリーは…

映像はとんでもなくいいんですよ。すごすぎる。

一方でストーリーは並以下だと思いました…。残念ながら物語的にはあまり良かったと言える点がないです。ハイクオリティの映像、戦闘シーンを楽しむ作品だと考えたほうが良さそう。

特に最終回が釈然としません。話に聞いていた通りなんともコメントしづらい終わり方でした。見終えた時にどんな顔をすればいいんでしょう、これ。

ポカーンとしてしまいますよ。ハッピーエンドでもバッドエンドでもない訳わからんエンド。

『Zガンダム』に矛盾なく繋げないといけないので、ジャブローを破壊したり地球をメチャクチャに汚染するわけにいかないのは分かりますが、穀倉地帯にコロニーが落下して終わりってどう反応すればいいのやら。

一応、ガトー(ジオン残党のエースパイロット)の狙い通りだったんですかね?

しかし落としてどうなるって感じ。あれだけ命を掛けて必死にやったのに、それで良かったのかと思ってしまいました。

あとガトーとニナ(アナハイムの女性エンジニア)の関係も取って付けた感じでヒジョーに不自然でしたね。

納得がいかない点

最終回のコロニー落とし以外にも納得がいかない点がありました。

コウがガンダムに乗る必然性

コウがガンダムを任せられている理由が今ひとつ納得できません。まぁ、操縦が上手だからなんでしょうけど、あまり説得力がないんですよね。

厭味ったらしいベテランパイロット、モンシアではないですが、もっと経験豊富な人に操縦させるべきだと思えてしまう。

『0083』にはニュータイプが登場せず、主人公のコウもただの人です。それなのに素人がベテランより優れているなんてことがあり得るのでしょうか。

映像を見てもコウの操縦が上手いと納得させるような描写が少ない。この人が操縦の天才だと分かる描写があれば受け入れられますが、機体の性能に頼っているようにしか見えませんでした。

ファーストやZの場合は主人公がニュータイプという設定がありました。それにファースト終盤のアムロは映像を見るだけでも圧倒的に操縦が上手いと分かるじゃないですか。

敵の攻撃は全部避けるしガンガン戦艦を沈めます。赤い彗星を翻弄できるほど強くなってました。

一方でコウは単に主人公だからガンダムに乗っているようにしか見えないのですよね。ご都合主義感があります。

コウの利敵行為

月のフォン・ブラウン市でコウが出会った、元ジオン兵の片腕の男(ケリィ)の件ですが、彼が敵だと分かっているのに何故モビルアーマーの修理を手伝ったのか。

仲間や自分がそれによって殺されるかも知れないのに。いくら助けてもらった恩があると言っても躊躇するでしょう。コウの心理が今ひとつわからない。

そもそも敵になるというのがどういうことか分かった上で手伝っているようには見えなかったです。頭空っぽの間抜け面で手伝っているように見えてしまいました。

彼が眼の前のことしか考えられない、想像力のない人に見えてしまったんですよね。せめて直したふりしてどっかに細工して動かないようにしとけよと。

モビルアーマーが直ったことで、ケリィのパイロットとしてのプライドを満足させてあげることはできたけど、それ以外何もメリットが何もなかった気がしますね。彼が亡くなって黒髪の女の人(ケリィの妹?恋人?)は悲しんだでしょうし。

ガトーと同じく、損得勘定ではなく信念や理想のために生きる半ば狂ってしまった人の悲しみを描きたかったのだと思いますが、コウが修理を手伝うくだりを入れる必要はあったのでしょうかね。疑問です。

彼はあまりにも重い罪を犯してると思うんですが。

バニング大尉の最期

本作には主人公を導いてくれるまともな大人がいます。コウたちの上官バニング大尉は、本当に人間ができている。

力で部下に言うことを聞かせるという教育方針ではなく、部下を信頼して大きな仕事も任せ失敗したら自分が責任を取ります。上に立つ者として非常に有能だと思いました。

ファーストではホワイトベースに大人がいなかったし、Zはやたらめったら殴るだけの脳筋ばっかで若者を上手に導ける大人がいませんでした。クワトロは殴らないけどフラフラしてて情けないですし。

バニングは単に優秀な上官であるだけではなく女好きだったりと、意外と軟派な部分があってそのギャップも魅力でした。

で、そこまではいいのですが、この人の退場の仕方があまりにも理不尽。戦闘中に敵に撃たれて亡くなったわけではなく、戦いを終え艦に戻る途中でドカーンですよ。

戦闘による損傷でどこかの部品が故障したらしく、それが原因で大爆発です。(ネット情報によるとショートした配線の火花が推進剤に引火して爆発したらしい。)

しかしモビルスーツってそんなに脆いのでしょうか?兵器なので戦闘で損傷することは想定されてるだろうに安全対策がなされてないんですかね。危険すぎます。せめて警報装置くらいは欲しいですね。

なんかバニングを退場させるための負のご都合主義に見えてしまいました。他の作品でこういう退場の仕方した人はいないでしょう。

あと、モンシアはただのスケベで嫌なヤツのまま終わりましたね。実はいい所もあるよっていう流れかと思ったけど、終盤はフェードアウトしてほとんど話に関わりませんでした。

ニナの存在

この人はガンダムファンから結構嫌われてるみたいですね。ネットを見ると、紫豚とかガンダム三大悪女の一人とか書かれていました。

この人は行動原理が意味不明ですね。キャラクターの行動に一貫性がなく何かがおかしい。精神を病んでるのかも。

終盤、かつてガトーの恋人だったという設定が明かされますが、そのへんの詳しい経緯がよく分からないし、不自然な感じでしたねぇ。

直前までコウとイチャイチャしてたのに、急に彼を裏切りガトーの味方をしたのは意味不明。いきなりなにそれと思いました。

でもこれニナの性格が悪いというより、脚本の犠牲になっただけじゃないんですかね。

ニナに限らず最終回付近の展開がおかしいんですよ。ガトーの恋人設定も後付けみたいですし(序盤にガトーが基地に侵入した際顔を見たけど正体に気づかない)。

何故かガトーを助けコウを見捨てた点、それなのに平気な顔をしてコウと再会した点を除けば言うほど変な人ではないのかもしれません。終盤までは割と普通の人だったかも。

不祥事隠し

三機のガンダム試作機は存在自体が無かったことにされたようですが、直接的に情報を知っているアルビオンクルーが処分されてないのが不思議です。多くはニコニコしながらティターンズに入ってたし。

ガンダム試作機の存在が抹消された結果、コウの罪状は消滅したらしいですが、直接関わっていた人間が口封じに消されないのは謎ですよ。

軍への忠誠心を無くした人が部外者に話したらバレちゃうよ。連邦上層部も結構甘いですね、不祥事をもみ消したいなら、情報を知っている下っ端を全員抹殺してもおかしくない気がするんですが。

連邦は、悪いことをしていないどころか勝利に貢献したアムロを7年間軟禁してましたよね、ニュータイプを危険視して。それなのに機密の機体に乗っていたコウを普通に泳がせといていいんかい。

コウと友人のキースはラストシーンで北米の基地(コロニーが落ちた所の近く)に配属されていたようですが、人里離れた場所に隔離されているってところなんでしょうか?

作中では詳しく語られていないのでよく分かりません。なんか腑に落ちないことが多いんですよねこの作品。

おわりに

映像は非常に素晴らしいものの、ストーリーがそれに追いついていない残念な作品という印象を持ちました。でも、まぁ結末以外は楽しく見ることが出来ました。

シナリオがどうであれ、圧倒的な映像美を楽しむことはできるので、十分見る価値がある作品だと思います。