ピクサーのアニメ映画『リメンバー・ミー』がいい話で泣きそう

ピクサーの3DCGアニメ映画『リメンバー・ミー』(原題:Coco)の感想記事です。すごくいい映画でした。

金曜ロードショーを録画して後で観ました。

録画だとCMを飛ばせるから良いですねぇ。とはいえベストは円盤や配信など余分な映像が入っていないのを観ることなのですが。

余談になりますが、映画のネット配信全盛時代の今でも金曜ロードショーというのはありがたい。良いのは無料という点だけではありません。知らない作品に触れる機会を与えてくれるのが嬉しい。

配信となると数が多すぎでどれを観れば良いのかわからない問題があるのでね。今回の『リメンバー・ミー』も金曜ロードショーでやらなかったら、自分から選んで観ようとは思わなかったと思います。

あらすじ

wikiにしっかりしたあらすじがあるのですがコピペするのもアレなので、自分で適当に書きます。

舞台はメキシコ、主人公の少年ミゲルは音楽家になることを夢見ています。しかし彼の家庭では先祖からの掟で音楽が禁止されています。

ご先祖様が音楽絡みで嫌な思いをしたらしく、子供たちが音楽に関わらないよう厳しく教育。そのせいで大家族のメンバーはミゲル以外みんな音楽を忌避しています。

それでもミゲルは家族から隠れ、屋根裏部屋でこっそりギターの練習をしています。

メキシコには、死者の日という亡くなった先祖の魂が帰ってくるというお祭りの日があります。ミゲルはその祭りのコンテストでギター演奏を披露しようと計画するのですが、家族に見つかってしまいギターを壊されてしまいます。

コンテストを諦めきれないミゲルは、彼の尊敬する伝説の音楽家デラクルスが祀られている霊廟に忍び込み、無断でギターを拝借。そのことがきっかけで突如死者の世界に入り込んでしまいます。

生者の世界に戻るべく、亡くなったご先祖様たちに助けを求めるミゲル。元の世界に戻るためには先祖の許しを得る必要があることが明らかになります。

しかし、音楽をやめるという約束をしなければ帰さないと言われてしまい……。元の世界に帰るべく死者の国を冒険する話になります。

感想

ここから感想です。極力ネタバレはしないようにしています。

『リメンバー・ミー』は、すごくいい映画でした。家族愛と優しさのある物語で何度も泣きそうになりました。死者は生者が覚えていてくれている限り、死者の国で行き続けるという世界観も面白かった。

観る前は子供向けかなと思っていたけれど、これは年齢に関わらず楽しめる作品だと思います。普通に子供が観ても楽しい冒険活劇でありながら、しっかりしたテーマがあり、人生で色々な経験をしてきた大人だからこそ考えさせられることがある。

家族と夢の対立

『リメンバー・ミー』はテーマ性がしっかりしている作品だと思いました。

この映画の深い所は、家族は素晴らしいという単純なメッセージで終わりにしていない所。家族のせいで夢が叶えられなかったらどうするという、現実的な問題を提起しています。

冒頭から、主人公の夢と家族の掟との対立があることが示されています。音楽家になりたいけれど、家族内では音楽が禁止されている。

自分には本当にやりたいことや目指す夢があるけど親や親戚に反対され、できない。それでもなんとかしてやりたい。これは普遍的なテーマで、共感できる人も多いでしょう。

さらに話が進むと、家族(家庭)を選ぶか芸術(夢)を選ぶかという、クリエイターが直面しそうな問題へ発展します。

ミゲルのご先祖様(ひいひいばあちゃん)は、夢のために家庭を犠牲にした音楽家の夫を許していません。その怒りはひひ孫のミゲルの代まで残る呪いになっています。

ここにはピクサーのスタッフたちの思いが乗っているのかもしれません。アニメ制作は重労働で家族と関われる時間が少ないという悩みがあるのかも。

また、この家族か芸術かというテーマは宮崎駿監督の『風立ちぬ』にも通じる所があると思いました。

(ちなみに『風立ちぬ』では夢のために家庭どころか国まで犠牲にした二郎を菜穂子は許してくれましたね。宮崎駿監督にとっての理想の嫁なのしょうか……。)

分かりやすいテーマが設定されることによって物語の目的が明確になるので、すごく見やすかったです。主人公の目的は単に生者の国に戻ることではなく、ひいひいばあちゃんの夫に対する怒りを沈め、音楽禁止という呪いを解くことだと分かる。

先祖の悩みを解決することで主人公の悩みも解決するという構図です。

普遍性

話がそれますが、宮崎駿と当時ピクサーにいたジョン・ラセターの間には長い交流があるらしいです。


ジブリ映画の影響を受けているからか、『リメンバー・ミー』には『千と千尋の神隠し』を彷彿とさせる描写があります。

異界に迷い込み、元の世界へ戻るため奮闘するというストーリーが共通しているだけではなく、主人公の体が薄くなり消えそうになったりとか、大きな生き物に乗って空を飛ぶとか、オマージュにも思えるシーンがありました。

ですが、単にピクサーがジブリの影響を受けているから似ているというだけではなさそうです。

どちらの作品も共通する物語構造を持っているから、似ているように見えるのだと思います。

両作品に共通する物語構造というのは「行きて帰りし物語」と呼ばれるもので、簡単に言うと、主人公が境界を超え非日常の世界(異界)へ行き、試練を乗り越え、何かを得て元の世界へ帰るという物語のことです。

世界中の神話や民話に見られる構造です。『リメンバー・ミー』のようにあの世へ行って帰ってくる神話というのは世界中にたくさんあるらしい。

なぜか世界中に同じ構造を持った物語が存在しているという不思議。人類共通で心の奥に触れる何かがあるのでしょうかね。

詳しくはジョーゼフ・キャンベルの本を読めば書いてあります↓

それを元にした物語の作り方の本もあります。新書なのでこっちのほうが読みやすい↓

普遍的な物語構造である「行きて帰りし物語」にすることで、どの国の人にも受け入れられやすい普遍的な物語を作ることができるようです。クリエイターはそれを知っているからこの構造を取り入れようとします。

世界中で受けるものを作ろうと思ったら似たような構造になりがちなのかも。

ところでメキシコの死者の日というのも、日本のお盆に似てるんですよね。先祖の霊が帰ってくる。地理的に遠く離れた地域でも共通しているものがあるんだなと。

これも人間の心の基本的な仕組み(や深層心理?)は国を問わず共通しているからなのでしょうかね。

映像がすごい

次に映像のこと。

3DCGアニメ技術の進歩はすごい。もう全く違和感がないし、ほぼ実写のような映像になっているように感じます。キャラクターの姿はデフォルメされていますが、動きはリアルそのもの。

最近のCGアニメはあまり見ていなかったのでここまで進歩してるんだなぁと驚くばかり。

自然すぎてもう実写とアニメっていう分類がよくわからなくなってますよ。実写映画でもグリーンバックの前で演技して、背景やクリーチャーは全てCGで作ったりするので、アニメと実写の境界は曖昧になっている気が。

ところで手描きアニメは今や特殊な存在に。日本でアニメと言えば手描きですが、世界的には3DCGが主流だといいます。

個人的にはCGアニメと手描きアニメは別物だと思っています。CGアニメはどっちかといえば実写に近い。手描きには紙の上で絵が動いているという驚きと面白さがあるので無くならないでほしいですね。

メキシコ

この映画を観てメキシコの印象が良くなりました。麻薬組織と血みどろの抗争が繰り広げられている非常に物騒な国というイメージしか無かったけど、すごく魅力的な文化や風習があるんだなと。旅行してみたくなりました。

街並みとか、山とか、死者の日のお祭りの風景とか非常に興味深い。

マリーゴールドがあちこちに飾られて、花びらが絨毯みたいになっているイメージいいですね。

おわりに

他にも書きたいことがあるのですが、これ以上書くとネタバレになりかねないのでこの辺りで終わりにします。

未鑑賞の方はネタバレ無しで観たほうが面白いと思います。すごくいい話だし、エンタメとしても良く出来てるのでおすすめです。