『エヴァ』新劇場版を見返した:Qの良さについて

2020年になり、公開間近だと楽しみにしていた『シン・エヴァ』ですが、新型ウイルス流行の影響で公開が延期に。残念ですが感染拡大防止のためにはやむを得ないです。

家で大人しく『Q』までの新劇場版を見返しました。YouTubeで無料公開してくれたカラーに感謝。

エヴァの第一印象

自分は新劇場版が公開された当時『エヴァ』のことをよく知らなかったので、映画館には見に行きませんでした。むしろ新劇場版が公開され話題になったことがきっかけで『エヴァ』に興味を持った感じです。

どんな作品なのか気になり、DVDをレンタルしてTVシリーズから旧劇場版まで目を通しました。

面白いけどなんかグロテスクで怖いアニメだなというのが当時の印象。新シリーズを映画館に見に行くようなファンにはなりませんでした。

そういうわけで新劇場版はテレビ放送や円盤レンタルで視聴。旧シリーズより見やすくなっていたので印象は良かったです。前のより好きになりました。健全なエンタメになっているし映像もきれい。

『序』と『破』も面白かったですが、やっぱり『Q』が好き。雰囲気が大好き。旧シリーズのリメイクではなく、予想もしなかった新しいものを見せてくれて感激。

『Q』がすごく良かったので、完結編の『シン・エヴァ』は絶対劇場に見に行こうと楽しみにしていたのですが。

『序』『破』振り返り

『新劇場版』は映画館では見ていないものの、テレビ放送や円盤レンタルで何回か見たはず。それなのにけっこう内容を忘れてました。旧シリーズともごっちゃになっていて、こんな話だったっけと思う部分が多数。5年くらい見てなかったので記憶が滅茶苦茶です。

例えば『破』で、トウジがエヴァに乗って暴走するくだりがあると思い込んでいました。なくてびっくり。

『序』は、だいたいTV版と同じような流れだったように思います。映像は綺麗になっているのに当時のアニメのノリが再現されていて不思議な感じ。ギャグとかセリフのセンスが90年代そのまま。そこはアップデートしないのねという。

それにしてもシンジくんが可哀想で見てられないですよ。かなり過酷な状況じゃないですか。

いきなり危険な前線に出されて、得体の知れない宇宙人?と戦わされる。攻撃されたら痛みまで感じる。大人は安全なところから指示出すだけ。そのくせ偉そうに説教してくる。

逃げたくもなるよ普通。「逃げちゃだめだ」なんて自分に言い聞かせて健気に戦うシンジくんは偉い。

彼と比べると最近の深夜アニメ主人公のクズっぷりが際立つ。チートをもらわないと戦わないし、女に戦わせて自分は後ろから指図するだけだったりする。傍観者気取りのやれやれ系とかも大嫌いだよ。

泣き言を言いながらも戦うシンジくんはホント偉い。

病んでる感

『序』からはなんかすごく病的な空気を感じます。旧シリーズの空気感が残っていて、メンタルやられてる時の気分がビンビン伝わってくる。得体の知れない不安が襲ってくるけど、誰も助けになってくれない。孤立無援で戦うしかないっていう気分。

庵野さん病んでたんですかねやっぱり。

とはいえ新劇場版になって結構マシになっている気が。記憶が定かでないけど旧シリーズはもっと病んでたように思いますよ。エグみがあった。

ビジュアルの楽しさ

『エヴァ』はメカやら兵器の描写が楽しいですね、ビジュアルのこだわりがすごい。オタク的な美的センスが感じられていい。

変圧器とか、レールとか、細々したメカとか、好きなんですねぇ。ディテールに異様な情熱を傾けてる感じがたまらない。こういうビジュアルはなかなか他の作品では見られない。

『破』のラスト

『破』は『序』のような総集編的リメイク作品ではなく、旧シリーズの要素を取り入れつつも、新しい展開のなっていたと思います。シンジくんも昔より前向きになっていました。

良い方向に向かっているように見せかけて、突然ネガティブな展開を持ってくるのは相変わらず。上げて落としてくる。それでも今回のシンジくんは困難に立ち向かい願いを叶えたように見えました。

でも『Q』でそれが全部ひっくり返され、無駄だったことが分かるという。あのラストの続きの希望ある展開を見たかったファンはがっかりしたでしょうね…。嘘予告だし。

エヴァ『Q』の良さ

『Q』は賛否両論。公開当時は予想を裏切る内容に呆れた人も多かったみたいです。今では公開から年数が経ち、割と肯定的に受け入れられるようになったみたいですが、ネット上には否定的な意見も多く見られます。

でも個人的には今の所『Q』が一番好きですね。ビジュアルと雰囲気が最高に良い。

確かに『序』『破』とは打って変わって分かりやすいストーリーを捨てているし、整合性やSF考証よりも映像のイメージを優先している印象を受けます。エンタメ映画の王道からは外れている感がある。でもそれがいい。

もし『Q』がただの旧作リメイクだったら好きにならなかったと思います。あえて今までの『エヴァ』を捨て、新しいことに挑戦しているのが素晴らしい。

ファンを喜ばせるために見慣れたテイストの無難な映画を作ることも可能だったと思いますが、それをしなかったのが潔い。某スペースオペラの新シリーズと違ってファンに媚を売っていない所に好感が持てます。

ただ、自分はこれまでの『エヴァ』シリーズにあまり思い入れが無かったので楽しめたという面もあるかもしれません。

何度も見返して細かい所まで考察しているコアなファンが、裏切られたという印象を持つのは仕方ないかも。いきなり14年後っていうのはね…。

映像

『Q』は映像のイメージが圧倒的に良いです。ストーリーなんてどうでもいいと思わせてくれるくらい圧倒的。(とはいえストーリーも悪くはないと思う。初見でも意味不明というほどではなかったし、解説しているサイトを読むとちゃんと筋道が通っていることが分かる。)

ヴンダー発進前、真っ赤な海に船がズラーッと並んでる所はカッコいいし、荒廃した世界でピアノを連弾するシーンも素晴らしいです。

ネルフ本部が長い柱の上にあって空に浮いてる感じなのも不思議でいい。外を見るため階段を降りていく所も。上がるんじゃなくて下がるという意外性と絵的な面白さがあります。

また、ラストで人間ではなくなったシンジたちが赤い荒野を歩き出すシーンには、なんとも言えない情緒があって目頭が熱くなりました。

この映画の舞台そのものがすべて精神世界っぽい感じで、それが面白いです。『序』『破』と比べて世界に現実感がなく、すべて心象風景のようにも思えてしまいます。

人類がほぼ絶滅して荒廃した赤い世界はまるで夢の中の世界。深層心理にある風景みたいで、シュールレアリスム的な雰囲気も感じさせます。

この映画からは、言葉では言い表せない感覚が伝わってくるのが良いですね。芸術的とかアート風と言って良いのか分かりませんが、ただ楽しいとか興奮するというのとは違った味わいがあります。

おわりに

個人的な予想ですが『シン・エヴァ』は『Q』より明快で楽しいエンタメになっているんじゃないかなと思います。

庵野監督は『Q』のあと鬱になったそうですが、『風立ちぬ』での声優経験や『シン・ゴジラ』製作を経て回復。現在は精神的に安定しているようです。

『エヴァ』の内容には庵野監督の精神状態が反映されていると思われるので、今度こそ綺麗に終わるような気がします。