2020年秋アニメ『神達に拾われた男』を最終話まで視聴しました。原作はなろう小説。
タイトルが同シーズンに放送されていたKey作品と似ていて紛らわしいです。神達に拾われた日?神様になった男?ごっちゃになりました……。
『神様になった日』って、なろう系でも違和感がないタイトルです。「交通事故にあった主人公が目を覚ますと異世界の神になっていた」っていう感じの話っぽい。
でも実際には不幸なヒロインを介護する系の感動ポルノらしいですね。Keyではおなじみのやつ。
『神達に拾われた男』の話に戻ります。
このアニメ、なろう系特有の不快なシーンがなかった点は評価できるのですが、取り立てて語るべき面白ポイントもなかったです。
ストーリーは平坦で盛り上がるイベントがありません。日常系をさらに薄味にしたような作品でした。
あらすじ
主人公竹林竜馬は筋肉ムキムキのオッサン会社員。ブラック企業でこき使われていました。でもある時不運な事故で死んでしまいます。
よくある神様空間へ呼び出された主人公。他作品の神様は単独のことが多いですが、本作には老人の姿をした神に加え、女神と少年の姿の神も出ます。タイトルの「神達」というのはそういうことらしい。
主人公は、なろうのお約束通り神達の力で異世界へ送られ、可愛らしいショタっ子に転生させてもらいました。
リョウマタケバヤシとして生まれ変わった主人公は、森の奥でスライムたちとひっそり暮らしていましたが、怪我をした公爵家の護衛を助けたことが切っ掛けで、外の世界へ旅立つことになります。
まぁ、一言で言えばスローライフ系の話ですね。少々モンスターと戦うシーンもあるけど、基本的に異世界での日常生活を楽しむ感じの内容。スライムを使って清掃作業をしたり、洗濯屋を始めたり……。
主人公を傷つける嫌なやつはほとんど出ません。出てもすぐに和解します。優しい世界です。
なんというか、優しすぎてあの世感が強いんですよね。異世界と言うより死後の世界、天国みたいな感じ。
前世があまりにも不遇だったので、神様が天国のような世界へ連れて行ってくれて、頑張ったご褒美を与えられている。ちょっと切なさも感じる世界観です。
良かった所
まずは評価できる点から。
スライム描写
主人公が従えているスライムたちの描写が楽しいです。3DCGで描かれているけど、透明感があって綺麗だし、フワンフワンとした動きが気持ちいい。
ニョロっと手が出てきて棒を持って戦ったりもします。とても可愛らしい。
いろんな属性のスライムがいてそれぞれ特別な能力を持っています。洗濯してくれたり、ゴミを食べて肥料にしてくれたり。
主人公がスライムの能力を生かして色々な問題を解決していく所は見ていて楽しかったです。
前世あってこその転生
はじめから異世界人でいいじゃんと言いたくなる作品も多い中、本作では前世の記憶を生かしたエピソードがあります。
また、時々辛い前世の記憶がフラッシュバックするのですが、異世界での幸せな生活との対比になっているので、異世界に転生できてほんとによかったねと思わせてくれます。
なろう系にありがちな不快要素を排除
なろう系にしては珍しく、主人公がまともな人格を持っています。サイコパスだったり、女を道具扱いするクズ野郎だったりはしない。
言葉遣いも丁寧で、常に周囲への感謝を欠かしません。よくできた人間です。
当然イキって気に入らない奴を痛めつけたりしないし、ハーレムを作るような展開にもなりません。
そもそもハーレムどころか、公爵家のお嬢様を除いてヒロインらしい人物が出てこないんですよね。主人公とお嬢様以外、全員脇役にしか見えないのはすごいです。いや、そこはむしろ欠点と言えるかも。
あと、主人公を誘惑するようなえちえちキャラも出ません。性的な描写も皆無で超健全。
邪な欲望が感じられず、主人公(というか原作者?)は本当に平穏な生活がほしいだけなんだなと思わされました。来世信仰みたいな切実ささえ感じられます。
ただ一つだけ問題点を言わせてもらうと、登場人物による主人公ageが酷く、そこだけはいつものなろうだなぁと。みんな主人公の能力に驚いて称賛するんですよね……。何をやっても褒めてもらえます。
絵が色彩豊か
絵が良かったです。温かい感じが画面から出てました。色使いが良く、ここは優しい世界なのだと映像的にも伝わってくる感じ。光の表現がいいですね。
あと作画が崩れたりもしないです。ただこれには事情があるので後で説明します。
気になった点
ここからはちょっと不満な点。
会話シーンばかりで動きが少ない
椅子に座って会話をしているシーンが、信じられないくらいず~っと続きます(特に後半)。さらに主人公のモノローグも多い。大した動きもなくただ登場人物が語っているだけの場面が長すぎです。
ひたすら喋っているだけの内容をアニメでやる意味はあるのでしょうか?
文字で読む分には楽しいのでしょうけど、映像にする必要性を感じません。ボイスドラマでいいのでは?
また、上で作画が崩れないと書きましたが、動かさないから崩れないだけです。内容的に激しい動きを要求されるシーンが少ないのですよね……。
顔アップの会話シーンは基本的に口パクを描くだけでいいので作画コストが低く、他の部分にリソースを回せるので、低予算でも一定のクオリティを保てているのだと思います。
原作を読んでいないので分からないのですが、動かさなくてもいいように、原作にあったアクションシーンをカットしている可能性もなくはないですね。
原作はホビージャパンから出ているので、アニメが低予算なのは容易に推測できます。
『異世界はスマートフォンとともに。』や『百錬の覇王と聖約の戦乙女』の原作を出版しているのがホビージャパン。どちらも歴史的クソアニメとして有名ですよね……。アニメ化の際にはあまりお金をかけない方針らしい。
ちなみに本作のアニメーションを制作しているMAHO FILMは、『異世界スマホ』のスタッフが設立した会社で、今回監督をしているのもスマホの人です。
別にアニメ制作会社やスタッフを批判する気はありません。低予算だと誰が作っても残念な出来になりますよ。悪いのは金をケチった出資者。
CGの質感
スライムは良かったのですけど、それ以外の3DCGは質感が酷いですね。
馬車を引く馬なんてやたらとテッカテカで周囲の絵から浮きすぎ。このアニメ用に作ったのではなく、どこかで安い素材を買ってそのまま使ったんじゃないかと疑ってしまいます。
内容が薄い
イベントらしいイベントがないので盛り上がりません。淡々と日常を描くだけ。さらに展開も遅く、前述の通り会話シーンばかりなので見ていて眠くなってきます。
きらら系などの日常アニメが楽しめるのは、小規模ながらも事件が起きたり、キャラが立っていたからだと気付かされました。
個性的な女の子たちがワチャワチャしている所を見るのは楽しいですが、特に掘り下げのない脇役たちと主人公がお店をやっている所を見ても一切感慨がわきません。
何の困難もなく主人公の望む通りに物事が進んでいく展開は、ストレスフリーという意味では良いのでしょう。でも、予想外のことが一切起こらないせいで刺激が少なく、見ていると頭がぼーっとしてきます。
ここまで低刺激なのは、娯楽としてどうなのでしょうか?疲れ果てている人には丁度良いのかな?
おわりに
うーん、なんとも薄味な作品でした。ただ、アニメという媒体が合わないだけで、活字で読んだら面白いのかもしれないです。
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