【原作月夜涙】なろう漫画『チート魔術で運命をねじ伏せる』感想(3巻まで)

なろう漫画『チート魔術で運命をねじ伏せる』(原作:月夜涙、漫画:舵真秀斗、キャラクター原案: 夜ノみつき)を、3巻まで読んだ感想です。

原作は『回復術士のやり直し』の作者が書いたなろう小説。この前まで『回復術士』のアニメを見ていたので原作者つながりで読んでみました。

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タイトルを見て、『異世界チート魔術師』を【模倣(ヒール)】した作品なのかなと思ったのですが、中身は全然違いましたね。

VRゲーム依存症の主人公が、そのゲームの元になった異世界に召喚され、ヒロインたちと騎士学校に通いつつダンジョンを攻略する話です。

同級生の女の子と一緒に異世界転移して冒険者をやる話ではなかった。そういうのを読みたい場合は、他を当たったほうが良さそう。

ただ、タイトルに「チート」と付く割に主人公がそれほど強くなく、普通に苦戦するという部分は、『異世界チート魔術師』に似ていると言えなくもありません。

本作にはプログラミング感覚で魔術を作ったり改良したりする設定があるので、むしろ『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』のほうが共通点は多いかな。

正直、この作品の設定とストーリーは、なろう系ではよく見る感じのもので、さほど独創性を感じなかったのですが、漫画力が高いおかげか十分に楽しめました。予想以上に面白かったです。結構好きですよこの漫画。

あらすじと感想

本編の概要と読んで思ったことを書きます。

※ネタバレ注意

ゲーマーが異世界へ

完璧な五感を再現できるVR-RPG『イルランデ』に熱中する主人公ソージは、ある時、ゲーム内にいる大事な女性クーナを失ってしまいました。

彼女を取り戻すためゲームをやり直そうとするのですが、『イルランデ』は突然サービスを終了してしまいます。

VRマシーンを拳で叩きながら「いやだ!そんなの認めない!」と泣き叫ぶ主人公は、まさにゲーム依存症患者という趣で、見ていて笑えました。

ケモミミ少女クーナに本気で恋をしていた主人公が絶望にうちひしがれていると、突然選択肢が出現。2つの条件を飲めばゲーム世界に召喚してもらえることになります。

「一度現実に戻れば二度とゲーム世界には戻れない」「死んだら強制的にログアウトされる」という軽い条件だったので、迷わずゲーム世界行きを選ぶ主人公。するとボクっ娘女神が現れ、話しかけてきました。

なんと、今までプレイしていたゲームは、女神が異世界を模して作ったシミュレーションでした。本物の異世界を救うために必要な英雄を生み出すために作られたゲームなんだそうです。

異世界の言語と常識をプレゼントしてもらった主人公は、ゲームで作った魔術のデータを維持したまま異世界に降り立ちます。

封印都市へ

クーナを探しに封印都市へ向かう途中、森で魔物との戦闘になり「ランク」「神の加護」「魔石」などの設定が説明されるのですが、ここでは省略。漫画を読んでください。

街の前まで行くと、クーナが奴隷商人に捕らえられていたので救出。しかし、クーナは入場料を払わず街に侵入するため、わざと捕まっていたのでした。やろうと思えば能力を使って簡単に脱出可能だったようです。

「火狐族」という種族の亜人なので火が出せるみたい。ちなみに『回復術士』の主人公が買った亜人奴隷は「氷狼族」でしたね。原作者はケモミミ少女が好きなのかな?

この後、笑顔のクーナに「責任取ってもらいますからね」と言われ、顔を赤らめる主人公は可愛らしく、好感が持てました。ヒロインにデレデレなのはいいですね。どっかの主人公はヒロインを「俺の所有物」呼ばわりしていたので一切好感が持てなかった。

なお、今回異世界で出会ったクーナは、主人公が知っているゲーム世界のクーナと性格が違っているようです。ゲームでは無口で無感情な人形のような少女だったらしい。おそらく綾波レイや長門有希みたいな感じだったのでしょう。主人公はそんなクーナが、まれに見せてくれる微笑みが好きだったとのこと。

クーナは入場料を払えるだけのお金を持っていません。ゲームの経験から、彼女の歌に魅力があることを知っていた主人公は、歌って稼ぐよう言います。

試しに歌ってみたのが、

「よっこらふぉっくす。こんこんこん♪こんこんこん♪尻尾をふりふり、こんこんこん♪……」

この歌詞を見た瞬間思わず笑ってしまいましたよ。「よっこらふぉっくす」ってこの作品のネタだったんですね。ネットでよく話題に上がっていたので、原作者の書いたネタだということは知っていたのですが、どの作品のどの場面なのかは知りませんでした。いきなり例の歌詞を歌い初めたので意表をつかれましたよ。

騎士学校を受験

無事街に入ることのできた主人公たちは、騎士学校の試験を受けることにします。地下迷宮に入るために必要な免許は取得まで1年以上掛かるのですが、騎士学校の生徒になれば、すぐ地下迷宮に入る資格が得られるからです。

入学試験の対策としてクーナに勉強を教えることに。主人公は過去問の凸版を作り、インクを塗って紙に転写します。

このシーンはちょっと不思議。大量に刷るわけでもないのに何故そんな回りくどいことをするんでしょうね?なろう系には現代知識を披露しなければいけないノルマでもあるのかな?

翌日、入学試験の申込みに行くと、クーナの知り合いで没落貴族の少女アンネがいました。冤罪で家を取り潰され貴族の地位を失ったので、騎士学校を出て名誉貴族になり、家の名誉を取り戻したいようです。

その後、栄養失調で倒れたアンネを部屋に連れ込み看病。友達になった3人は、過去問という名の未来問(ゲームの方のデータを取り出した)で予習し、ズルをして座学試験を突破、実技試験に挑みます。

実技に関して3人は天才的な能力を持っていたので、トップ3に入りました。

観覧に現れた王様に受験生たちが敬礼をするのですが、近現代の軍隊式敬礼だったのには少々違和感がありました。中世っぽい世界観なのにね。まあ、敬礼の起源は中世の騎士が兜の面を上げる仕草という説があるので、別に変ではないのかな…?

最後の試験は「実戦」ですが、不正に気づいた主人公は、それを仕組んだと思われる先輩に直接対決を挑みます。この男は、なろう作品でよく見る、感じの悪い噛ませ犬キャラですね。

戦いが始まり、魔石を使いパワーアップした主人公が、『俺の魔術で、「運命」をねじ伏せる!』と言いタイトルを回収。

チートで瞬殺する展開にはならず、格上相手に苦戦しながらも、持っている能力で工夫して倒します。なろう系チート作品では珍しく、ちゃんとバトルしてるじゃん!

このあと没落貴族の子が主人公に恋をして1巻はおしまい。やっぱチョロインじゃん!次の巻では「抱いて」とか言いだします。まぁ、この作品には直接的なエロ描写はないんですけどね。

ダンジョン攻略

特待生として入学できた3人はパーティーを結成。実習で他の生徒達と地下迷宮へ。

地下迷宮にあるものは有毒なので飲み食いできません。女教官はそのことを教えるため、何も知らない生徒に迷宮の水を飲ませて苦しませます。笑顔で「ごめんごめん…」って言ってますがサイコパス味があって怖いよこの人……。

地下迷宮では、「最初に魔物に攻撃を加えたパーティーが、優先的に獲物を獲得できる」というルールなのですが、「襲われているときは反撃しても仕方ない」というルールもあるので、わざと魔物に自分を殴らせて獲物を横取りするやつがいるようです。

わざと自分を殴らせればOKというのは、『回復術士』の「復讐の美学」を彷彿とさせる理屈だなぁ……。

なお、主人公はゲームで得た知識と魔術を利用することで、魔物の出現地点が読めます。だから、他の冒険者に先回りして獲物を狩ることが可能。派手さは無いですが、チートと言えばチートですね。

この後、道具を揃え、学校に通いつつ3人で地下迷宮を攻略する話になります。女性の先輩キャラも出ましたが、3巻の時点ではまだハーレムに加わっていません。

気になった点

おおむね楽しく読めましたが、少々気になった点もありました。

脇役の扱い

まず、脇役男性キャラに対する扱いがちょっと酷いと思った。

ヒロインのクーナに好意を抱き迫ってくる男がいるのですが、クーナは彼のことを嫌悪しているらしく、過剰な攻撃を加えます。一応M男だという設定があるので、不快感は多少緩和されるのですが、それにしてもやりすぎだと思います。

ほとんど被害を与えてこない相手に過剰な報復をするというのは、なろう系によく見られる悪い点ですね。また、ヒロインが主人公以外の男性にやたらと冷たいというのも、あまり好きになれない要素です。

主人公の人格

主人公のクズな面がだんだん明らかになっていった点も気になりました。

最初はクーナに一途で純情なやつかと思っていたのですが、いつの間にか他の女性にも興味津々。まぁこれは、男の子なので仕方ない面もあるのでしょう。

しかし、ズルをして筆記試験を突破することに何の躊躇もないのはどうなんでしょうね。ここって一応、ゲームみたいな異世界であって、主人公が以前プレイしていたゲームの世界ではないんですよね。ゲーム感覚でチートをする主人公は倫理観が崩壊しているように見え、好感度が下がりました。

また、地下迷宮探索中、飢えて死にかけている冒険者に食料を分けてあげず、金を払うよう要求したり、毒抜きしていない肉を食べさせようとしたりしたのも、あんまり印象が良くなかったですね。

まあ、向こうも「殺す」と言いながら、喧嘩腰で食料を奪おうとしてきたので、冷たい対応をするのも分からんではないですが…。

確かに倫理的には問題がないのだけど、計算ずくで人情味に欠ける性格なんだなと感じました。相手も死にかけていて必死なんだから、ちょっとは優しくしてやれよと……。

なろう系作品を読む時は、聖人君子のような主人公を期待してはダメですね。大抵クズかサイコパスです。「復讐の美学」の彼に比べれば本作主人公は全然マシなので許しましょう。

設定が多め

世界観に関する設定がかなり多くて複雑。設定を解説するためのシーンが長くなってしまうのがちょっと気になりました。細々とした設定はいいからストーリーを進めてほしいと思ってしまった。

微エロ?

『回復術士』と違い露骨なエログロ描写はないですが、魔石を使うと快感でイッてしまうような描写があったのが気になりました。そういうエロ要る?

個人的には、無理やりサービスしてくれなくてもいいかなと。日常シーンや迷宮探索シーンが普通に面白いのでそれだけで十分です。この作品にエロは求めていません。

良かった点

なろう作品にありがちな欠点も目に付きましたが、それ以外の部分は結構良かったです。予想以上に面白い作品でした。

特に絵の雰囲気がいいですね。モブまでイキイキとした表情をしていて、読んでいて楽しい気分になれます。試験のシーンで、もぐらたたきをしてるコマがあったりと、遊び心も感じられます。

迷宮探索のための道具を買いに行く場面も良かった。異世界ならではの素材で作られたアイテムが出るのですが、デザインがなんともいい感じなんですよね。現実世界の道具に似ているのだけど、ちょっとだけ違っている感じが妙にリアルというか…。異世界が実際にあったらこんな感じの道具を使ってるんだろうなと信じさせる力があります。

肉など食材の描写も素晴らしく、見るからにうまそうです。

ワクワクさせてくれる風景描写もありました。第13話の、街の雑踏の中を歩く、主人公たちの後ろ姿を描いたコマは異国情緒がたまらない。こんな異世界なら行ってみたいなと思えました。

所々、「ん?」となる設定もあるのですが、絵の力で納得させてくれるのがいいですね。ストーリー自体はよくある感じのなろう系だけど、絵的、漫画的面白さがあるから楽しく読めました。

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