【人生はヌルゲー?】アニメ『弱キャラ友崎くん』全話視聴後の感想

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2021年冬アニメ『弱キャラ友崎くん』を最終回まで視聴。リアルタイムで8話まで見た後、放置していたのですが、やっと最後まで見ることができました。

気づいたら春アニメの時期になっていたので、そっちを見るので忙しかったというのもあります。

それはさておき、『友崎くん』は最後まで低空飛行でしたね。大した盛り上がりもなく終わってしまいました。ラストくらいは劇的な展開が見られると思ったのでちょっと拍子抜けでしたよ。

残念ながら自分はこの作品をあまり楽しめませんでした。メインテーマのはっきりしない、個人的には薄味な作品という印象です。

以下、あらすじと具体的な感想を書いていきます。なお原作ライトノベルは未読です。

※ネタバレ注意

また、批判的な内容が多めなのでファンの方も注意してください。

あらすじ

主人公の男子高校生、友崎くんは、「アタファミ」という対戦ゲームで全国一位の実力者です。しかし陰キャの彼には友達がおらず、人生を「クソゲー」だと考えていました。

ある日、ネットで対戦した相手から「リアルで会わないか」というメッセージを受け取ります。彼が待ち合わせ場所に行ってみると、そこにいたのは同じクラスのリア充女子、日南 葵(ひなみ あおい)でした。

そこで日南は友崎のことを「うだつの上がらない奴」「最低の人間」「服装が失礼」「負け犬」などと散々罵倒。さらに彼を自宅に連れていき上から目線で説教します。

現実世界は努力でなんとでもなる「神ゲー」だと力説する日南に説き伏せられた友崎は、リア充になるため、彼女から与えられる「ミッション」に挑戦することになります。

はたして友崎くんはリア充になれるのか…という話ですね。

ネット上にはオタク向けの自己啓発本という感想もありました。自己啓発本が好きそうな日南というヒロインが出す課題に、主人公の友崎が取り組む話です。

日南葵というキャラについて

作品の詳細について語る前に、強烈な個性を持つヒロイン日南について書きます。良くも悪くも、本作のイメージを決定づけるキャラでした。

理不尽な罵倒

日南というキャラの印象は、初登場時点ですでに最悪でした。彼女のせいで作品の第一印象まで悪くなっています。

初っ端から理不尽な罵倒シーンを見せられ気分が悪くなり、1話で視聴をやめた人も少なくないのでは? 美少女に誹謗中傷されて喜ぶマゾヒスト以外は楽しめそうにない導入部分でした。

確かに友崎くんの見た目が小汚かったり雰囲気が暗かったりするのは事実です。

だからといって誹謗中傷していいことにはなりません。日南の罵倒は度を越しています。完全に人格否定の域に達しており、友崎くんが気の毒に思えるほどです。

ここまで躊躇なく他人を貶めることができる日南の人間性を疑ってしまいますよ。

説教の内容に関しても、ただの強者の論理という感じで説得力皆無なのが残念でした。

間違い探しか?化粧シーンの謎

日南が化粧を落とした状態で友崎の前に現れるシーンがあります。そこで彼女は、化粧していない自分の顔は並程度だと言いますが、絵的に違いが分かりませんでした。

友崎は、化粧なしの日南を見て、別人(姉か妹)と間違えていました。しかし。視聴者からすると顔が変化しているようには見えないので、友崎の反応には違和感しかありません。

これはキャラ設定というより作画・演出の問題だと思います。二次元の絵で化粧による変化を描くのは難しいかもしれないですが、もう少し分かりやすく描写してほしかったですね。

支配欲?

友崎が嫌いなら放っておけばいいのに、わざわざ説教をし、リア充になるためのミッションを与える日南。一体何を思ってそんなことをするのか疑問でしたが、話が進むと、彼女の目的がなんとなく見えてきました。

意地悪な見方かもしれませんが、日南は、立場の弱い陰キャ男子にマウンティングするのを楽しんでいるのかもしれません。

友崎をリア充にするというのは本当の目的ではなく、彼を自分の支配下に置くための手段でしかないのでは?

従順な友崎に命令を出し、意のままに操るのが快感なのかもしれません。日南の言動からは強い支配欲のようなものが感じられます。ちょっと病的な感じ。日南は嗜虐的な女王様タイプの人間に見えます。

一方、自分を散々罵倒した日南に敵意を抱くこともなく、あっという間に犬になった友崎もなんだか変な感じですね。

どういう精神構造をしているのか謎です。人格否定された挙げ句、毎日上から目線であれこれ指図されて気分が悪くならないんですかね? マゾなの?

サイコパス疑惑

1話の罵倒の時点で日南がヤバい奴なのは分かっていたのですが、さらにドン引きさせられたエピソードがあります。

ある日、日南は友崎に、日南が決めたクラスの女子と付き合うよう命令します。なお、友崎はその女子に一切恋愛感情を持っていません。

友崎が話しかけた女子の中では一番脈がありそうだったという理由で、日南はその女子を訓練相手に選んだようです。友崎が、その女子に好意を持っていないことを知っているのにです。

いくら訓練のためと言っても、好きでもない相手を騙して付き合うのは倫理的にマズいでしょ……。罪悪感を持たないのはおかしい。相手に対して失礼な行為ですし、バレた時、心を傷つけることになるとは考えないのでしょうか?

ゲーム感覚で現実の女性を「攻略」させようとする日南は、マトモな神経をしているとは思えません。

友崎は一瞬後ろめたさを感じるものの、日南に言いくるめられてしまうんですよね……。

アメとムチを使い分け、弱い立場の人間の心を巧みに操り、自分の思い通りに行動させる。さらに倫理的にマズいこともやらせる。現実で起こったマインドコントロール犯罪を想起させます。

ネタではなく、マジでサイコパスに見える。日南は、サイコパス呼ばわりされることの多い「なろう系主人公」よりよっぽどヤバいですよ。

なお、友崎には高圧的な態度をとる日南ですが、他の人の前では優しい人のように振る舞っています。そのため周囲からの信頼は厚いようです。

本性を隠して、善人のフリをしてるのがいやですねぇ……。

また、アニメを終盤まで見ると、彼女が自分の利益のためなら嘘をついて他人を騙しても構わないと、ごく自然に考えていることが分かります。

クラスメート攻略の件を見て分かるように、他人の感情に無頓着で異様に冷淡。さらに、いつも自信満々で、異様に自己評価が高い。

これらはもろにサイコパスの特徴なんですよね。日南の行動を細かく見ていくと、チェックリストに該当する点が多すぎる。

リアルを「神ゲー」と、ゲームのように表現するのは、単にゲームが好きだからだと思っていたのですが、日南の性格を考えると別の解釈もできます。

共感力が低く、他者の感情に無頓着な日南にとっては、リアルの人間もゲームキャラと同じ「物」という扱いなのでは?

本当に現実とゲームを区別していないのではと思わされます。悪気なく、生身の人間をゲームのNPCのように扱っている感じが怖い。

日南というキャラは冗談抜きで異常者にしか見えません。萌え系コンテンツにここまでヤバいキャラはなかなかいないと思います。

同季アニメ『回復術士のやり直し』に登場する姫が作中で異常者呼ばわりされていましたが、日南のほうが何倍も異常だと感じました。

『回復術士』の方は、セリフで異常者だと言われてるだけで、そこまで異常者に見えなかった。

一方の日南は作中で一切異常者と言われず、逆に理想のリア充みたいな扱いでしたが、本性を知っている視聴者からすると狂人にしか見えないという……。

なろう作家も異常者を書きたかったら日南を参考にすべきでしょうね。

日南を否定するのがテーマ?

そんな日南が行うリア充指南は、心がないというか、計算ずくで冷たい感じ。

仮にその指南に従ってリア充になれたとして、本当に幸せなのかと疑問に思ってしまいますが、それこそが本作のテーマだったようです。

最終回まで見ると、日南が意図してサイコパス風に描かれていたことが分かります。なんと日南は、成長した友崎によって乗り越えられるべき存在として配置されていたようです。

決して日南のサイコパス的価値観を肯定するような展開にはならないのでご安心を……。

でもこれ、途中まで見た段階では、日南が理想の人間として描かれているように感じてしまいますよね。そこに拒否感を持って見るのをやめた人もいそう。

サイコパスが理想の人間だなんて、受け入れられない人が多いと思います。

ただ、現代の資本主義社会においては、サイコパス傾向のある人のほうが成功しやすいとも言われています。

経営者や弁護士など社会的地位の高い人々には、サイコパス傾向を持った人が多いという研究結果もあるようです。怖いですね。

なお、アニメ1期の段階では日南は全くデレませんし、根は優しいと感じさせるような描写もありません。最後まで感じの悪いサイコパスのままです。ラノベヒロインには性格のキツいキャラもいますが、ここまで可愛げがないのも珍しい。

日南のバックグラウンドが明かされるのを期待していたのですが、それもありませんでした。

「根っからのサイコパスではなく、過去のトラウマか何かが原因で冷たく打算的な人間になったのでは?」と設定を推測していましたが、アニメ1期にはそのような描写は存在しません。

ちなみに原作ラノベはアニメ放送時点で9巻まで出ており、アニメ1期は3巻までの内容のようです。日南の過去や今の性格が形成された経緯については、4巻以降に書かれているのかもしれません。

気になった所

本作品の一番やばい部分である、ヒロインの日南については書いたので、それ以外の気になった所について書きます。

意外にヌルゲー

視聴前は、主人公の友崎が苦労しながら努力を重ね、少しずつリア充に近づいていく話だと思っていました。

しかし実際には、日南の命令に従うだけであっさりリア充の仲間に加わってしまっているというヌルい展開。

陰キャがリア充になるまでの困難がほとんど描かれていないので嘘くさいんですよね。リア充にハブられたり、軽視されたりという描写はありません。

本作のリア充男子は優しい……というより主人公に対して非常に甘い人物ばかりで、かなりストレスフリーな展開でした。ご都合主義感が強め。

日南以外のメインキャラは本当にいいやつばかりですよ。女子もチョロインばかりで、あっさり友崎の味方になってくれます。彼のことを気持ち悪がったり馬鹿にするような子はいません。

友崎は、ほぼ挫折なくリア充に近い存在になってしまうので拍子抜けでした。陰キャ向け自己啓発ものと聞いていたのですが、そういう内容は序盤の数話で終わってしまいましたね。

その後はチョロい女の子たちと楽しく学園生活を送る話になります。困っているヒロインの悩みを聞いてあげたり、問題解決を手伝ってあげるという展開。主人公が人助けをする側に回る内容になってます。

リア充を目指すという当初の目的が早い段階で達成されてしまった結果、以降はひたすら後日談が続いているような印象を受けました。そのせいで続きが気にならないし、盛り上がりに欠けるんですよね……。

そもそも友崎は、自分を弱キャラだと思いこんでいただけでは? 客観的に見ると元からまあまあ強キャラだったように思います。

主人公の初期ステータスが高い一方、敵は弱いので、ゲームで言うならイージーモードを見せられているような気分になりました。

ラストが盛り上がらない

前述のように、メタ的に見れば、日南は友崎と対立させるために用意されたキャラクターだと思われます。

アニメ終盤までの友崎は日南の言いなりになっているので分かりにくいのですが、二人は正反対の価値観を持っています。コインの裏表のような感じで、見事な対になっている。

社交的に見える日南ですが、外面を取り繕っているだけで、実際には他人の気持ちに無頓着で非常に冷たい人間です。表面的な付き合い以上のものを求めていません。

そして、自分が得をするためなら平気で嘘をつきます。本音を出さす建前だけで生きている。

対する友崎は、人間嫌いの陰キャのように見えますが、実は温かい心を持っていて、困っている人には手を差し伸べます。

また、人を騙せない性格で、たとえ自分が損をすることになったとしても、本音で語り合いたいと考えています。そのことが伝わってくる描写が度々ありました。

11話になってやっと二人の価値観の違いが表面化し、友崎は初めて日南に逆らいます。

正反対の価値観を持った二人が正面からぶつかることになるので、最終回はドラマチックなものになるだろうと予想していたのですが、意外にあっさりと終わってしまいました。

友崎が日南の前で演説のようなことをするだけ……。日南も、ふーん、友崎ってそんな考え方してたんだ~みたいな反応をするだけでおしまい。なにそれ……?

もっと、本気で喧嘩をしてほしかった。泣きわめきながら殴り合うとか……。

最低でも、口論をして価値観をぶつけ合ってほしかったですね。結局二人の関係性も大して変わらないまま、なあなあで終わってしまったので消化不良感があります。

単に友崎が、盲目的に命令に従う犬の立場から卒業しただけなんですよね。

むしろ、友崎が終盤になるまで言いなりだったのが不思議ですよ。それまで何故反発しなかったのか謎。主人公なのに主体性がなさすぎでは?

ラストもそんな感じですし、全編を通して盛り上がるポイントが少ないです。日常系みたいなノリで、特に大きなイベントもなくメリハリのない話が続きます。少々退屈に感じてしまいました。

キャラの印象が薄い(※日南を除く)

たとえストーリーに起伏がなくてもキャラが立っていれば楽しめるのですが、本作のキャラは個人的にパンチに欠けると思いました。

日南だけはやたらと濃いキャラでしたが、他の登場人物は皆モブみたいな感じで印象が薄い。

CV:かやのん(茅野愛衣)の文学少女、菊池さんはちょっと可愛かったですが、あまり人物像の掘り下げがなく、テンプレキャラの域を出ていないように思いました。

作品内でもメタ的にも、利用されるだけの哀れなキャラに見えてしまいます。

みみみ(青髪の子)は、生徒会選挙のエピソードで出番が多かった割に印象に残りませんでした。いい子なのですが、あまり個性が強い感じではない。あと、友崎が序盤でゲームを教えた子(泉)と、なんとなく印象が似てるんですよね。

リア充男子二人もキャラが立っているとは言い難く、時々どっちがどっちか区別がつかなくなりました。

あと、キャラデザそのものは悪くないと思うのですが、若干ハンコ絵のきらいがあります。髪型と色が違うだけで、顔自体は結構似ている。

良くも悪くもエキセントリックなのは日南くらいで、残りのヒロインは常識的な性格。さらに外見も似ているので、あまり個性が感じられません。

あくまで好みの問題ですが、自分にとっては魅力のあるキャラがおらず、萌え系美少女アニメとして見てもあまり楽しめませんでした。

コメディ要素が弱い

ラブコメジャンルの作品ですが、どちらかと言えばシリアス寄りで、コメディの部分が少ないように感じました。自分にとっては、笑えるシーンがほとんどありませんでした。

軽い気持ちで視聴できないのが辛いです。シリアスの間にギャグが挟まれていれば、もう少し見やすかったと思うのですが……。終始真面目な感じで見ないといけないのでキツいです。

良かったところ

主人公の友崎くんがいいやつだった点は評価できます。心優しい頑張り屋なので応援したくなる。

ラノベには斜に構えてスカしている主人公が少なくないけど、友崎はそういうタイプではありません。意外にも熱くて真っ直ぐな心をしていたので好感が持てました。

友崎は自己評価が低いだけでかなり魅力的な男なんですよね実は。そもそも、ゲームで全国一位になれるだけでも大したもんじゃん!

できればもっと早い段階で日南に逆らってほしかったです。人格否定されたのに反感を抱かず、あっさり言いなりの犬になってしまったのはちょっと不自然な感じでした。

「頭が弱キャラなのか? それともマゾなのか?」と疑ってしまいましたよ。

あと良かったところといえば、背景の絵が美しかったですね。雲の色や光の感じが素晴らしい。ムードが出ていました。何とも言えない青春っぽさが感じられて良かったです。

おわりに

ファンの方には悪いのですが、正直見るのがキツいアニメでした。

作品の売りだと言われていた自己啓発要素ですが、日南の指示に従いさえすれば何でもうまくいくのでリアリティに欠け、ご都合主義にしか見えません。さしたる苦労もなくリア充になってしまったので、物足りない感じ。

それより問題なのが盛り上がりのなさ、ドラマ性の薄さですね。個性的とは言い難いキャラたちの日常生活を延々と見せられるだけなので少々退屈でした。

主人公が最後に逆転するという話を聞いていたので、やめるにやめられなくなってズルズルと最終回まで見たけど、期待していたような逆転劇はありませんでした。

うーん、これはおそらく中高生など若い世代向けの作品なんでしょうね。いい歳したオッサンが見るものではない。原作ラノベは大人気みたいですし、刺さる人には刺さるのでしょう。

 

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