アニメ『スーパーカブ』二人乗り炎上騒動に思うこと

バイクアニメ『スーパーカブ』が二人乗り問題で炎上していました。(2021年5月26日頃。)

第6話に主人公と友人がバイクに二人乗りするシーンがあるのですが、視聴者から「免許取得後1年未満での二人乗りは違反ではないか」という指摘が出ていました。

この件について、弁護士ドットコムが製作側に質問した記事がニュースサイトに取り上げられると、一気に話題になり炎上とも呼べる状況になりました。

これは作品の内容を批判する炎上ではなく、「作品を批判するクレーマーは許さん!」という擁護の炎上です。

炎上だけならどうでもよかったのですが、詳細を知らない不特定多数が炎上に参加したことで誤解が広がり、話があらぬ方向へ行ってしまった気がします。

アニメ本編を見ていないと思われる人たちが、的外れな擁護をしているのが気になったので、ここで問題点をまとめます。

誤解について

まず、ニュースサイトのコメント欄やSNSを見ると、「表現規制派に絡まれた」とか「クレーマーが暴れている」みたいな誤解をしている人が非常に多い。

しかし実際には弁護士ドットコムが、アニメ実況をしていた一般人の「違反ではないか?」というツイートを引用し、製作側に問い合わせたというだけの話です。誰もクレームは入れていません。

本家の弁護士ドットコムの記事には当該ツイートが埋め込まれているのですが、ヤフーニュース側ではカットされているので経緯が少し分かりにくくなっている。

次に、二人乗りに関する指摘を「揚げ足取り」や、「重箱の隅をつつくような難癖」だと捉えている人が多い件。

確かに、アニメ本編を見てない人は「なんでそんな細かいことまで気にするの?」とか「他の作品でも違反くらいやってるし、フィクションだから許してやれよ」と思うことでしょう。それはよく分かります。

しかし、アニメ『スーパーカブ』を第1話から視聴し、作風を知っている人ほど違和感を覚える描写だったのです。「今まで真面目にルールを守っていたのに何故?」と疑問に感じるのも無理はない。

違反に目くじらを立てているわけではなく、それまでの作風との違いに困惑しているのです。「フィクションだから違反くらい気にするな」というのは論点がズレている。

別に悪意を持ったクレーマーが揚げ足取りをしているわけではありません。むしろ楽しんで見ていた人のほうが突っ込みを入れたくなるようなシーンでした。

作風によって許容範囲が変わる

同じ違反描写でも、そのアニメの作風によって視聴者の反応は大きく変わります。荒唐無稽なギャグ作品やファンタジー要素の強い作品なら違法行為も気になりません。

しかし本作は現代日本が舞台であり作風もシリアス。リアル路線の作品です。スーパーカブの車体に関しては本田技研工業が監修に付き、可能な限り実車に近づけた描写が行われています。

それ以外にも、原付乗りに共感されそうな小ネタが盛り込まれたり、実在する地名が出たりと、現実に即した描写が多い作品でした。リアルさが売りと言っても過言ではないでしょう。

また、主人公は不良やアウトローではなく、内気な女子高生です。問題のシーンまでは、律儀に道路交通法を守っていましたし、安全に気をつけて乗っていることが見ていて分かりました。

排気量50cc以下の原付一種には最高速度30km/h制限があるので、改造に出し排気量を上げ、原付二種に変更したことも説明されています。「違反上等」というキャラならわざわざそんなことはしません。

最初から「道交法なんてくそくらえ」「法律は破るもの」という作風なら逆に突っ込みは入らなかったでしょう。これがヤンキーや暴走族のアニメだったら誰も文句は言わないと思います。

今まで真面目にルールを守っていた主人公が、突如平然と違反をしたのが違和感なんですよね。そこに引っかかった視聴者がいたということ。

世界観はリアルですし、主人公も比較的常識のある人物として描かれていたので、「急にどうしちゃったの!?」と言いたくなるのはよく分かります。

もし『ゆるキャン△』の主人公がゴミのポイ捨てをしたり、落ち葉の上で焚き火を始めたら突っ込みを入れたくなるでしょう。

もし『サザエさん』の登場人物が平然と万引きするシーンがあったとして、「フィクションだから」という理由でスルーするでしょうか?

二人乗り描写そのものが問題なのではなく、そのシーンだけ作中で浮いてしまったのが問題なのですよ。元々の作風、世界観からズレているから気になってしまう。

最初からリアリティのないファンタジーだったり、ルールなんて守らない犯罪者が主人公だったら誰も気にしません。

一方、リアルな世界観で真面目に生きてきた登場人物が、いきなり何の躊躇もなく法を犯した場合、違和感を覚える人が出ても不思議ではないです。

違反に言及されない問題

原作書籍版では、違反だと分かった上であえて二人乗りしたことが描写されているようです。これをどう解釈するかは人それぞれですが、個人的にはアニメ版みたいにスルーするより何倍もマシだと思います。

今までルールを守っていた人物が、説明もなく、平然と違反を行う所を見せられると、やっぱり違和感が残りますよ。なぜ原作の描写をカットしたのか疑問です。

また、本編で違反だと言及しなかったとしても、せめてテロップか何かで違反だということを示しておくべきだった。それだけでも視聴者の納得度は大きく変わったと思います。

違反について一切言及せず、さも当然のことであるかのように流したせいで、視聴者にモヤモヤが残ってしまったのでしょう。

企業コラボ問題

本作は実在する企業とコラボしています。そのせいで見る目が厳しくなり、ちょっとした違反でも指摘されやすくなっているのだと思います。

今は企業にコンプライアンスが求められる時代です。協力・監修の本田技研工業(Honda)は一部上場企業であり、世界中でバイクや車を売っているメーカー。当然高い遵法意識が求められます。

Hondaはこのアニメにおいて、スーパーカブのデザインだけ監修しているのだと思っていました。しかしインタビュー記事によると、脚本の精査にも協力しているようです。

外部リンク:カブ乗りも注目!2021年春アニメ『スーパーカブ』特集第1弾・藤井俊郎監督インタビュー! | アニバース

公道レースを描くゲームにHonda車が出せなかったのは有名です。対向車が走っているところでレースをする内容のゲームには、自社車両の使用許可を出さないのがHonda。たとえフィクションであっても、違法行為の描写には厳しい会社でした。

それほどまでに法令遵守を重視していた同社が今回の件をスルーしたのは少々不思議です。脚本の精査といっても細かい部分まではチェックしていなかったのでしょうか?

基本的に現場のクリエイターに任されているのかな?オドメーターの数字が一桁ズレているなど、細かい部分のミスが目立ちましたし、出来上がったアニメには口出ししていないような気もします。

もし違反描写があるのを知った上でOKを出したのなら、Hondaの方針が以前より甘くなったということなのでしょう。

また、本作はHonda以外にも多くの企業とコラボしているらしく、コメリやアップガレージが実名で登場します。

企業の実名を出している以上、コラボ先に迷惑をかけないよう、ある程度の配慮が必要だと考える人も多いでしょう。違反行為を描くのは構いませんが、やはりテロップで「これは違反ですよ」と注意書きくらいは出しておいたほうが良かったかも…。

警察コラボ問題

このアニメ、企業だけではなく山梨県の北杜警察署ともコラボしているんですよね。警官の服を着た主人公がパトカーの前に立っているコラボポスターが作られています。

また、警察は原作者や監督に感謝状を贈ったようです。

警察は税金で運営されていますし、交通違反を取り締まる側の存在。そことコラボしている作品なので、厳しい目で見てしまう人もいるのでしょう。

それにしても警察は、「フィクションだから違反もOK」と判断してコラボしたのか、内容を細かくチェックせずにコラボを決めたのか気になるところです。

クレーマーは存在しない問題

長々と書いてきましたが、これってそもそも炎上するような案件ではなかったんですよね。

正義感に狂った視聴者がどこかに苦情を入れたという事実はありません。せいぜいSNSや掲示板で、「これって違反じゃない?」と指摘する人がいた程度。

にもかかわらず、「表現規制派が直接製作側にクレームを入れた」かのように誤解されてしまい炎上につながりました。

実際には、弁護士ドットコムがアニメを実況しているツイートを見つけ、自主的に製作側に問い合わせただけだなんですよね。

そのツイートをしたのも、フォロワーが数万単位のインフルエンサーなどではなく、フォロワー数百人程度の一般人です。なぜ弁護士ドットコムが一般人に目を付けたのか謎。わざわざ問い合わせたのも謎…。

繰り返しますが、視聴者が直接KADOKAWAにクレームを入れたわけではないです。

にもかかわらず勘違いした人がいて、アニメが攻撃されていると思い込み、「表現の自由を守らなきゃ」「ポリコレ許さん!」「正義マンを潰せ!」と騒ぎ出しただけなんですよね。

その勢いに圧倒され、内容を確認しないまま義憤に駆られた人々が炎上を拡大。まとめサイトなどによって歪められた情報が拡散。それを見た人がムキになって炎上に加わるというカオスな状況に…。

元を正せば、二人乗りがちょっと気になった視聴者が自分のツイッターでつぶやいただけ。誰も放送中止にしろなんて言ってないんですよ。それなのに尾ひれが付いてメチャクチャなことに…。

今回の件にクレーマーや表現規制派は関与していませんよ。ここまで燃えたのは意外と言うほかない。

それと弁護士ドットコムの記事本文を読まずに、タイトルだけ見てブチギレてる人が多すぎませんかね…。本文を読んだ上でああいった反応をしたのなら、読解力が心配ですよ。

というか、炎上参加者の中で、『スーパーカブ』本編を見た人はどれだけいるのでしょう?せめて問題の第6話だけでも見てから炎上に参加してほしい…。

作品の内容を知らない人がムキになって擁護しているのを見るのは不思議な気分です。まぁ、正義感で表現の自由を守るために戦っているわけなので、温かい目で見守るべきかな…。

陰謀論:炎上商法説

※以下は根拠のない妄想なので真に受けないでください。

今回の炎上はやはり弁護士ドットコムの記事が起点になっているようです。2021年5月26日に投稿された記事ですね。

一方、問題の二人乗りシーンがあった第6話が放送されたのは5月12日深夜。

放送から炎上まで二週間の間があります。その間は大して燃えてなかったんですよ。大げさに言ってもプチ炎上という感じ。視聴者の一部が気にしていた程度でした。

本格的な炎上は、26日に投稿された弁護士ドットコムの記事を原作者がツイートし、ちょっとムキになって反論したあたりから始まったみたいです。あとはいつも通り、有名人のツイートやまとめサイト等によって拡散…。

この弁護士ドットコムの記事というのが妙な感じなんですよね。前に書いたように、一般人のツイートを取り上げ、わざわざK社に問い合わせるという謎ムーブによる産物です。

半分は宣伝みたいな内容ですし、K社側が持ちかけた案件ではないかと疑ってしまいますよ。アニメが思ったほど話題にならなかったのでテコ入れでやったという邪推もできる。

記事が出た後は、しっかり燃え上がるようSNSやまとめサイトを利用し工作した…という妄想が可能。100%確実に炎上を起こすのは不可能ですが、燃えやすくなるよう下地を整えること自体は難しくなさそう。10年近く前の話ですが、大手まとめサイトがアニメ制作会社とつながっているという疑惑がありましたね。

今回は「批判の炎上」ではなく「擁護の炎上」だったので、作品の印象が悪くなるということはありません。イメージを落とさず知名度が上げられるので製作側にとってはメリットばかりです。

あるいは、K社があえて燃えそうな人物を選んでアニメを作ったという妄想もできます。

主演声優は少し前に過去の問題発言を掘り起こされ、軽く炎上していました。また原作者も以前から荒れそうなツイートをしがちな人物でした。

炎上しやすく話題になりやすい人物を採用することで、費用を掛けずに作品を宣伝することができます。

まあ、意図的に炎上を起こした証拠は一切ないので妄想の域を出ません。陰謀論です。炎上商法に関する内容は、全て事実無根の空想(フィクション)なので絶対に信じないでください。また、関係者の方々を誹謗中傷する意図はありません。

おわりに

一般人の何気ないツイートを第三者が取り上げ、公式に問い合わせただけで、ここまで炎上するとはね…。ネットの恐ろしさを実感しました。

二人乗りは若干気になったけど、ここまで話題になるようなネタではなかったでしょ…。

それより個人的には第5話の富士山エピソードのほうがやばかったと思いますね。礼子が狂っているようにしか見えずドン引きしましたよ…。カブが可哀想。あと身体丈夫過ぎ。

それはさておき、炎上を見かけたらまずは冷静にならないといけませんね。感情的になって炎上に加担しないよう気をつけたいです。

次:『スーパーカブ』二人乗り騒動が地上波で取り上げられた件


バイクの本田ちゃん

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