【月夜涙作品】『史上最強オークさんの楽しい種付けハーレムづくり』第1巻感想

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ペンネームでマラソン大会に出場した狐作家、月夜涙先生による、シリーズ累計60万部の大人気ライトノベル『史上最強オークさんの楽しい種付けハーレムづくり』第1巻の感想です。

月夜先生のツイートによると、本作は「売り上げのほとんどが電子」とのこと。

筆者もDMMブックスで電子版を購入しました。最初は中古の紙の本を買う予定でしたが、50%ポイントバックをやっていたので電子に。

売上が電子版に偏る理由は色々考えられますが、タイトルに「種付け」や「ハーレム」が含まれる本をレジに持っていくのが恥ずかしいから、というのもありそう。

なお漫画版タイトルは「種付け」の部分が「異世界」に変えられています。買いやすくするためかな? 「ハーレム」の部分はそのままですけどね。

『異世界迷宮でハーレムを』もアニメ化されるらしいですし、ナウなヤングにとって「ハーレム」はさほど恥ずかしくない極々普通のワードなのかも?

作品概要

『オークさん』は純粋な「小説家になろう」発の書籍化作品ではありません。第13回小学館ライトノベル大賞で優秀賞に選ばれ、刊行が決定した作品です。

といっても、完全新規書き下ろしではなく、なろうで短期間連載され削除された『最強種族だが慢心せずに知識と技を極めてハーレムを作ろう』がベースになっているらしい。

分かりにくいことに、この作品はなろう連載時に何度もタイトルが変わったようです。

『最強種族に転生したが、慢心せずに技と知識を極めて亜人ハーレムを作ろう』
『魔人転生、圧倒的な力と人類最高峰の技と知識でハーレムづくり』
『女騎士の息子、英才教育の果てにハーレムを目指す』

と同じ作品のように思います。現在は削除されているので断定はできませんが。

ちなみに本作は、匿名掲示板等で「とある成人向け漫画の設定をパク…参考にして書いたのでは?」と、噂されていたやつですね。あと「麻薬入りメンチカツ」とか「オークションで負けて奴隷強奪」の場面も有名です。

※以下ネタバレ注意

あらすじ

主人公オルクは転生者という設定ですが、前世のことは語られません。トラック事故とか、過労死とか、神様の手違いとかの描写はなく、いきなり異世界の場面から始まります。

オークと女騎士の息子として産まれた主人公は人間に近い姿をしており、純粋なオークと比べ力も劣ります。そのせいで村のオークたちからいじめを受けています。

母親の女騎士は、主人公を強くするため特訓を受けさせたのですが、あまりにも厳しかったので主人公は逃亡。拷問じみた特訓をやるくらいなら「いじめられていたほうがましだ」と考えながら、鬱々とした毎日を送っていました。

そんなある日、異種族の女の子たちを初めて目にした主人公はフル勃起。しかし、どの子からも相手にされず落胆します。

強くなれば彼女たちを孕ませられると母親に諭された主人公は、強い雄になるため厳しい修業に挑むことを決意する……というのが導入部です。

その後の流れですが、各分野の実力者を教師として呼び訓練を受けます(月夜先生の他作品キャラも教師として登場)。

数年が経過し強くなった主人公は街に出て商売を開始。軌道に乗ってお金が貯まったので奴隷オークションに参加。エルフ娘を競り落とそうとするも、いけ好かない金持ちに競り負けます。

しかし主人公は諦めません。移送中の馬車からエルフ娘を強奪、追っ手から守りつつ故郷の村まで送り届けます。

エルフの村にしばらく滞在、あれこれしていると、謎の敵が村を襲撃。さらに封印が解かれ巨大な怪物が暴れ始めます。主人公は村とエルフ娘を守るため命がけで怪物に立ち向かう…というのが1巻のクライマックスでした。

全体的な感想&良かった点

意外と面白かったです。序盤の修行パートには興味をそそられませんでしたが、街に出て以降の話は楽しく読み進めることが出来ました。

以下、具体的に良かった点を語ります。

構成がきれい

同作者の『回復術士のやり直し』と違い、間延びして眠くなるようなパートがありません。一つの作品として綺麗にまとまっているので好感が持てます。『回復術士』では細かいステータスや異様に複雑な設定の解説にページ数を割いていました。

料理描写が多い点は共通しているものの、『オークさん』のほうは食材や調理法がより具体的に書かれているので読んでいて楽しいです。なんかおいしそう。

話に緩急があり、終盤に盛り上がるシーンを用意しているのも良かった。

主人公はメチャクチャ強いのですが、それでも苦戦するような強敵が出ます。なろう系チート作品だと、序盤で最強になってしまい、残りは雑魚をつぶすだけの緊張感に欠ける展開になりがち。それを回避している点は評価できます。

また綺麗にオチが付いており、1巻だけで物語は半分完結しているのですが、黒幕の存在を匂わせ伏線を張っているため、話を続けることも可能。手堅い構成ですね。『回復術士』のいきあたりばったり感とは大違いですよ。

軽くて読みやすい

まさにライトノベルという感じ。気軽に読める内容でした。文章も読みやすい。あと、目立った誤字脱字はなかったです。編集さん、校正さんが出版前にしっかりチェックしたんでしょうね。

これって本を出す際には最低限すべきことだと思うのですが、できていない出版社も多いので好感が持てます。別の出版社から出ている『回復術士』書籍版には、Web版の誤字脱字が結構そのまま残っていました。

転生者設定が効果的

ネットで本作の感想を読んでみると、「主人公の前世が語られないので転生者設定にする意味がない」という指摘がありました。

しかしながら「主人公が現代知識を持っていても作品の整合性が損なわれない」というメリットがあるので決して無意味ではないと思います。

現地主人公なのになぜか「抗体」やら「アイマー器官」を知っている『回復術士』は、やっぱり読んでいて違和感がありましたよ。

さらに、たとえ現代知識チートをしなかったとしても、転生者設定があれば現代日本人の価値観・感覚を自然に持ち込めます。なろう系小説は一人称視点で書かれることが多いですが、異世界生まれの主人公が現代日本人の感覚で色々語ってると白けるんですよね。

なんだかんだで異世界転生設定って便利だと思いますよ。

ただし『賢者の孫』の場合は、転生要素が足を引っ張っていると言われますけどね。前世の記憶がある元サラリーマンが常識知らずで「何かやっちゃいました?」は流石におかしい。

ヒロインが比較的まとも

月夜作品のヒロインは心のないオナホと批判されがちです。主人公にべた惚れし全肯定。自ら主人公との合体を求める都合のいい女ばかりという印象は否めません。

主人公の洗脳によって作り出された『回復術士』のフレイアなんて、まさに喋るダッチワイフですからねぇ。

いっぽう『オークさん』1巻に出るヒロインのエルフ娘(ティータ)には心が入っている感じでした。最初からべた惚れというわけではなく、少しずつ主人公に心を開いていきます。

また、ハーレムに拒否感を示すなど真っ当な感性を持っているのがいいですね。

気になった所&突っ込みどころ

良かった点は一通り書いたので、ここからは少々批判的な内容となります。また、物語の根幹に関わる重大なネタバレがあるので注意してください。

価値観が気持ち悪い

一番気持ち悪いと感じたのは、主人公の母親である女騎士の価値観ですね。主人公に向かって「雌に孕ませてほしいって思わせるような強い雄」になりなさい、と説教します。

女騎士いわく「どんな雌も強い遺伝子を取り入れて、強い子を産みたいって願望」があるのだそうです。女騎士本人も、かつて主人公の父親との戦いに負け組み伏せられた時、「お腹がきゅん」としたらしい。

……書いてて気持ち悪くなってきた。

まあ確かに、生物としては正しいかもしれませんが、理性ある人類ではなく野獣の考え方なのでは? たとえそれが真実だったとしても、そういうことを恥じらいもなく発言するキャラには好感が持てません。

女騎士は人間という設定だったはずなのに、完全にオークの考え方に染まってますよ。

また本作は、主人公が地の文で「孕ませ」というワードを連呼する異様な内容となっております。タイトルの「種付け」から受ける印象に偽りなし!

終始この調子なので、一部の団体から女性蔑視としてバッシングされやしないかと、勝手に心配しています。

まあ、作者はギャグとして書いているのだと思います。月夜先生が女騎士のような価値観を持っているわけではないのでしょう……たぶん。

ちなみに先生の『魔王様の街づくり!』は、政治的正しさを重視するアメコミ作家に批判されていました。いわくミソジニーでペドらしいですよ。

ドーピング

女騎士は修業前、主人公に怪しげな薬を飲ませます。これがなんと、苦痛を感じなくなる薬。疲れや辛さを感じられない状態にし、治癒魔法で体を修復しながらトレーニングすることで、通常の何倍ものスピードで体を鍛えることが可能になります。

実際主人公は3日間不眠不休で走り続けました。確かに合理的ではあるのですが、ナチュラルに倫理観が狂ってますね……。これをギャグとして笑えるかどうかで、読者の作品評価が分かれそう。

病みつき(意味深)料理

次は、有名な薬物入りメンチカツの件です。

修業を終え街に出た主人公は、資金を得るため飲食店を始めます。前世の知識を利用し、メンチカツを作って売るという発想自体は問題ないのですが、隠し味(?)としてヤベー粉を混ぜます。

「舐めると脳内に化学物質が溢れ、多幸感を覚え、興奮作用がある」粉だそうです。それって麻薬なのでは?

でも、ちゃんと言い訳が書いてあります。「まるで麻薬のように聞こえるが薬膳料理のようなもの。依存症はなく、むしろ健康にいい」らしいですよ。ほんとぉ?

すぐ後に「普通の料理では絶対に得られない感動を味わえる」とか、「完全にメンチカツがきまっている。これでメンチカツ愛好家(ジャンキー)だ」という記述があるんですけど……。

やっぱ麻薬じゃん! 「ジャンキー」というルビを振ってる時点で言い逃れはできないでしょ。依存はないけど依存はあるとかいうトンチなんですかね?

主人公の倫理観が狂っている

麻薬入りメンチカツを売ることからも分かるように、主人公は倫理面に少々問題のある人物。奴隷オークションで負けたら平気で強奪しますしね。ルールなんて完全無視です。

都市に入る時には関税を払う行列に並ばないといけないのですが、「うっとうしい」という理由で城壁を飛び越し無断で侵入しました。

また、追い剥ぎを返り討ちにし「打撲や骨折がひどく二、三か月まともに歩けもしない」ほどに痛めつけ、金品を奪ってご満悦。(ちなみに奪った金で娼館へ行きました。)

主人公いわく「反撃するのだと良心が傷まない」のだそうです。『回復術士』の主人公ケヤルガに通じる所がありますね。「復讐の美学」を彷彿とさせる。

あと、商売に介入してきたヤクザを追い詰め手駒にして、「いろいろと汚いことをやってもらっている」んですって。

そういえば『異世界スマホ』の望月冬夜くんも前世でヤクザを手駒にしてたらしいですね。そういうのに憧れがある人も多いんでしょうか? 恐ろしいヤクザを従えているという状況は、優越感があって気持ちいいのかな?

話を戻します。そんな感じで善人とは言い難い主人公ですが、ケヤルガに比べればマシな性格だと思います。洗脳やレ○プを好まない分マトモ。

この作品のテーマと深く関係するのですが、主人公は「押し倒して喜ぶ雌としかしない」という謎のポリシーを持っています。

強くて魅力的な雄になれば雌のほうから喜んで股を開くという、母の教えを忠実に守っているんですね。それはそれで気持ち悪い考え方ですが。

あと、主人公は意外に良心的。敵が傭兵だと分かったら殺害せず、無力化するだけで済ませます。ケヤルガだったらテキトーな因縁をつけ「復讐」の名目で命を奪うでしょうね。

本作主人公はところどころ倫理観が狂っていますが、完全な悪人ではなく主人公らしい部分もあります。彼に魅力を感じる読者もいるかもしれません。

中途半端なテンプレ外し

本作を読むと、なろう系のテンプレから外そうと苦心しているのが見て取れます。

月夜先生はなろう出身の作家ですし、なろう的な要素が数多く含まれてはいますが、意識的にテンプレとは違う展開を目指したようです。

まず、主人公が「チートを貰って最初から最強」ではなく数年間修業して強くなります。

また、ヒロインは『回復術士』などのオナホ軍団とは違い、主人公全肯定マシーンではありませんし、ハーレムを当然のように受け入れたりはしません。

さらに、主人公を苦戦させる強敵が出ます。新人賞経由で出版し一般向けに売るのだから、なろうとは一味違うものにしたいという気概を感じます。

しかしながら、これらのテンプレ外しには言い訳程度の意味しか存在せず、本質的にはなろうテンプレの枠内に留まっているようにも思いました。

ネタバレですが、主人公は生まれた時から最強です。本人は覚えていないのですが、強すぎる力を自分では抑えられず、幼少期に暴走事件を起こしています。

地形を変えるほど暴れまわり危険視されたので、大賢者によって力を封印され、その結果弱くなっていただけでした。封印を解いたら世界最強クラスの力を発揮できます。

さらに父親は元魔王。母親は人間の国のお姫様で人類最強の騎士。

修業をつけてくれた教師は超一流ばかりですし、環境や血筋で見てもメチャクチャ恵まれています。主人公は産まれたときから全てを持っているエリート。

ここまで恵まれていると神様チートと大差ないレベルです。個人的にはそんな主人公に感情移入できないですし、応援したくならないですね。

修業シーンも、「そこらのなろうとは違いますよ~。ちゃんと努力してますよ~」と言い訳するために、ただ入れただけという印象。数年の修業がダイジェスト的にあっさり流されます。修業シーンそのものに面白味はありません。

また、強敵が出るのは良いのですが、封印を解き力を開放すれば圧勝できますし、ヒロインもデレるまで時間が掛かるだけで、最終的には主人公のオナホールと化しそうです(1巻時点ではまだギリギリ大丈夫ですが、合体はしています)。

一味違うものにしようという努力は分かるけど、テンプレを外しきれておらず、結局いつものなろうと変わらないものになっているのは少々残念です。

まぁ、なろうテンプレが好きな人にとってはプラスの点なのですけどね。

作品総括

なろうテンプレから少し外し、王道少年漫画のような展開を取り入れようとした意欲作だと思いました。

タイトルや世界観は恥ずかしいですが、『回復術士』に比べれば他人に勧めやすい作品だと思います。無駄の少ない構成ですし、読みやすさは評価できます。

余談:元ネタは成人向け漫画

なろうや月夜先生に詳しい方はご存知だと思いますが、この作品には元ネタがあります。

それは他作者のなろう小説ではなく、しんどう先生による成人向け漫画『ショタオークくんはエルフのお姫様を上手に孕ませられるかな?』です。

 

  • 主人公の父親がオークの長で母親は女騎士。
  • 主人公は混血のため普通のオークより弱く、いじめられている。
  • 村のオークを見返すため外の世界へ旅立ち、女エルフと出会う。

これらの設定は全て、この成人向け漫画が元になっています。

さらにマズいと思ったのは、『オークさん』プロローグの特徴的なセリフ

「やーい、おまえの母ちゃん女騎士!」

です。

元ネタの『ショタオークくん』には、

「や~い!ギドのかーちゃん女騎士~っ」

というセリフがあります(※ギトは主人公の名前)。

ちょっと、流石に、これは……。

他人の作品からインスピレーションを受けて新しい作品を生み出すのは創作の基本です。決して責められることではありません。

しかし月夜先生の場合、なんのひねりもなく、そのまんま他人のアイデアを流用しているので、パクリだの盗作だの言われるんですよね。

影響を受けるのは勝手ですが、少しはアレンジしてから出さないとマズいですよ……。なろうではなく成人向け漫画が元ネタなのでバレないと思ったんでしょうかね?

まあ、笑えるくらい設定がそのままなので、興味のある方はぜひとも元ネタを読んでみてください。下のリンクから買えますよ(露骨なアフィ誘導)。

【 DLsiteリンク 】
ショタオークくんはエルフのお姫様を上手に孕ませられるかな?

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