2022年冬のなろう系アニメ『わしかわ』こと、『賢者の弟子を名乗る賢者』を第4話まで見た感想です。
第1話が原作ファンの期待を裏切るような出来だったらしく、悪い意味で話題になっていた作品ですね。ネット上では怒りや落胆のコメントを目にすることが多かったです。
特に叩かれていたのが、1話後半の無音演出(数分間BGMだけで声や効果音がない)ですが、筆者としては、このアニメの一番の問題点はそこじゃないと思いました。その点については後で詳しく書きます。
原作は「小説家になろう」発の純なろう系小説で、作者はりゅうせんひろつぐ先生。連載開始は2012年なので、アニメ化されたなろう作品の中では、けっこう古い方みたいですね。
あらすじみたいなもの
筆者は原作未読ですし、アニメを見てもイマイチ設定や世界観を理解できなかったので、正確なあらすじは書けません。なんかこういう感じなのかなという個人的な解釈の範囲で、あらすじみたいなものを書いてみます。ご了承ください。
……主人公は、好きな映画の人物をモチーフにした老賢者「ダンブルフ」のアバターを作り、VRMMOをプレイしていました。しかしある日、気がつくと可愛らしい幼女の姿になっていました。
しかもなんと、ゲームではなくゲームそっくりの異世界に入り込んでしまったようです。さらに30年の時が経過していました。
ダンブルフは王国に仕える偉大な賢者の一人だったため、幼女の姿になったことが知れ渡ると混乱を招くかもしれません。そこで、賢者の弟子「ミラ」を名乗ることにしました……
という感じの話です。間違ってるかもしれんけどね。
各話の感想
第4話まで個別に見ていきましょう。
第1話「わし、かわいい……」
1話は、主人公が幼女の姿になる前、老賢者時代の話。アニオリ部分が多いらしいです。
初っ端から動きが少なくチープな絵面で期待感ゼロ。魔物の3DCGも酷いですね。画面から浮きすぎやろ!
ボスの悪魔みたいなモンスターも人形感がすごい。彫像みたいな質感で生きてる感じがしないですよ…。まるで置物やん。
あと、魔物の大軍との合戦シーンで、主人公の背後から天使みたいなのが突然現れ、歌を歌い出したのはシュールでした。ちょっと笑いそうになりましたよ。演出の意図が不明です。
これってもしかして、楽曲を売るためにやったんですかね?それとも原作設定的に何か意味がある歌なのでしょうか?歌そのものは悪くなかったのだけど、目的が分からないので気になってしまいました。
余談ですが、なろう系アニメ『賢者の孫』では、6話のED映像が、本編とは無関係のVTuberによるMVに差し替えられ、微妙なクオリティのダンスが流れるという珍事がありました。あれはくっそシュールでしたよ。
「レコード会社が売り出したいVTuberをゴリ押しでねじ込んだのではないか?」と言われてました。業界の闇を感じますね。
第2話「わし、ウソついた……」
2話は、主人公が幼女の姿になってしまい、しかも30年も経過していてビックリという所から始まります。説明が少なめなので、初見の筆者にはちょっと意味がわからなかった。
王様の命令を受け、賢者の弟子として、臣下と一緒に魔物の討伐に出かけるのですが、相変わらずCGがヒデェな…。
とはいえアニメーション的には、4話までの中では一番マシな回だったと思います。ある程度動きがありますね。騎士団長が剣を振るう所とか良かったね。
第3話「わし……こういうのに弱いんじゃよなぁ」
3話は、冒険者たちと墓地的なダンジョンへ潜る話です。
初登場の冒険者(ほぼモブキャラ)の過去話に尺を使う謎の構成でした。初対面のキャラの感動エピソード流されても、一切感情移入できず、置いてけぼりですよ。
主人公、王様、メイドなどメインキャラの深堀りも十分されてないのに、なぜモブの話に時間を取るんでしょうね?後から重要人物になるんか?
第4話「わし、もう限界!」
前回の続き。ダンジョンの奥へ進みます。
今回は映像面がヤバい!1話からすでに動きが少ないアニメでしたけど、ついに紙芝居と変わらんレベルの映像になってしまいました。
特に移動シーンが酷い。一切動きがなく、放送事故感が凄かった。会話しているのに口が動いてないのはヤベーよ!口パクさせる余力すらないらしく、完全なる静止画になってしまいました…。どんだけ低予算なんや???
低品質3DCGの魔物は相変わらずですし、かなりきついです。
また、今回は「なろう系あるある」の主人公賛美がしっかり入ってましたね。「ミラちゃんすっご~い!」
姿が変わる前のダンブルフのことも褒められます。ここまで褒められたら大満足でしょうね。みんな承認欲求に飢えてるからね、仕方ないね。
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気になった点
4話までの内容を総括し、気になった点を書きます。
予算少なすぎ疑惑
各話感想のところでも少し書きましたが、このアニメは相当少ない予算で作られているようですね。
スケジュールが間に合わなかった結果として静止画だらけになったわけではなく、そもそもカネがないので、紙芝居にするしかなかったのだと思います。動かないだけで、作画そのものが崩れているわけではないですから。
出資者(製作委員会)的には、アニメ本体の出来はどうでもよく、原作小説とコミカライズの宣伝にさえなれば良いという考えなのでしょう。
実際、アニメ1話に対する不評で話題になり、良くも悪くも作品の知名度は上がってますからね。筆者はアニメ化まで、この作品の存在を知りませんでしたし、宣伝にはなってるはず。
ただ、ファンの気持ちを考えると、ケチ臭いアニメ化は嫌ですね。アニメ化するなら、アニメーションとして成立させられる最低限の予算は組むべきだと思います。
低予算アニメは数多くありますが、ここまで動かないのは珍しい。3DCG部分さえほとんど動かないのは異常ですね、手描きに比べ低コストで動かせるのにね…。
本作はこれまでアニメ化されたなろう作品の中でも、ぶっちぎりで低予算なのでしょう。散々叩かれた「スマホ太郎」こと『異世界はスマートフォンとともに。』でさえ、もっと動きがありましたよ。
はっきり言って本作は、動きがなさすぎて紙芝居と大差ありません。アニメである意味があるのか疑問です。こんなアニメ化なら、ドラマCDとCG集を出したほうがファンの満足度は高いはず。
しかし、商業的には、動かないアニメを出したほうが得なんでしょうね。それでいいのか?ラノベ・アニメ業界…とは思いますが。
初見置いてけぼり
本作は、世界観や設定が分かりにくいアニメです。
筆者は1話から4話を2回見ましたが、それでもなんとなく、ぼんやり分かったという程度。1回目は内容が頭に入って来ず、「一体何を見せられてるんだ?」という気分になりました。
原作未読の層を取り込みたいのなら、予備知識がなくてもある程度内容が理解できるように作ってほしかった。一から十まで説明しろとは言わないですが、あまりにも説明がなさすぎるのでは?
初見の人には「意味ワカンネ」と思われ、1話切りされかねない構成でしたよ。これで本当に原作の販促になると思ったのでしょうか?
逆に既存ファン向けに作ったと考えても、アニメとしてのクオリティが低いので失望されそう。
既存のファンと新規のどちらも満足させられないような出来だったのは残念です。このアニメを見て大喜びするのは、クソアニメ愛好家くらいなのでは?
説明不足な点
説明不足な点について具体的に言及します。
老人の姿だった主人公が突然幼女の姿になった理由については、一応の説明がありました。
キャラメイクで幼女を作っていたら寝落ちし、目覚めたら幼女の姿に~ってのは分かります。でも、なんでいきなり30年が経ってるんですかね?
しかも、ゲームをプレイしているわけではなく、ゲームそっくりの異世界に行っちゃった感じなんですよね。そのへんの説明が少なすぎて1回目は「ポカーン…」でした。
そもそも30年が経過したという状況が映像的に分かりにくい。セリフで、「街並みが変わっている」と言われてはいるけど、映像見ただけじゃ分からんですよ。主人公以外のキャラの外見は、30年経ってるのに全く変化がないですしね。
それでもまぁ、展開が腑に落ちるかどうかは置いておいて、30年が経過したという事実は、何度もセリフで言及されるので分からんことはない。
しかし、ゲームみたいな異世界に入り込んでしまったことは分かりにくいです。味がするとか、NPCが生きているというセリフはあったけど、さりげないんですよね。注意して視聴しないと分からない。
またこれも30年の件と同じく、「ゲームの頃には無かった展開じゃな」など、セリフによる説明のみで、映像からは違いが分かりません。どうせならゲームだった頃と映像の雰囲気を変えてほしかったなぁ…。
初見でも鋭い人なら設定を理解できるかもしれませんが、多くの視聴者は首を傾げながら見ることになりそうです。もう少し説明が欲しかった。
「もしや情報を小出しにするスタイルか?」と思いましたが、4話までは特に説明もなく進みましたね。
目的が不明
世界観や設定が分かりにくい点だけでなく、主人公の目的や物語の終着点が見えてこないのも問題だと思います。
主人公は別に「元の世界に戻りたい」わけではなさそうですし、かと言って「異世界でスローライフを楽しみたい」わけでもないようです。
4話まで見ても、王様の命令でお使いをこなすだけの話で、結局何をしたいのか分かりません。盛り上がりにも欠けますし、続きが気にならない。それぞれのエピソードのつながりも分かりづらかったです。
スローライフならスローライフでいいんですけど、何をする話なのか方針を示してくれないと、見ている方は困ってしまいますよ。
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良かった点
否定的なことをいっぱい書いたので、ここからは4話までの内容を総括し、良かった点を書きますよ。
タイトルがしっくりくる
なろう系作品のタイトルって、名が体を表していないものや、意味が掴みづらいものが少なくない気がします。
例を挙げると、『異世界はスマートフォンとともに。』は、スマホをほぼ活用せず神様にもらったチート能力で無双する話なので、タイトル詐欺とまで言われてましたし、『ありふれた職業で世界最強』は、「ありふれた職業」の意味が分かりづらいです。
そのほか、文字数が多く、異様に長いタイトルの作品も多いですね。もはや「あらすじ」と言うべきタイトルをよく目にします。「小説家になろう」の特殊な環境に最適化した結果なんでしょうけど、正直ダサいのでやめてほしいです。
一方で本作の『賢者の弟子を名乗る賢者』というタイトルは、適度な長さですし、内容をしっかり表しているので、すごく良いと思います。個人的に好感が持てるタイトルです。
字面的にもカッコいいですし、「賢者の弟子を名乗るってどういうことだろう?」と気になって手に取りたくなります。
前述の通り、主人公のアバターである賢者ダンブルフは幼女の姿になってしまい、そのことを隠すため賢者の弟子を名乗っているので、まさに内容に即したタイトルですね。
「賢者」という言葉の繰り返しがリズム感を生んでいるのもいい。
絵が綺麗
低予算の紙芝居などと散々批判しましたが、それはあくまで動画・アニメーションとして見たときの話。一枚絵としてみれば結構クオリティが高いです。
女性キャラ、特にミラは力を入れて描かれていることが分かりますね。
話はそれますが、もし、自分の好きな小説・漫画がアニメ化されるとして、
- 作画が崩れまくるけど、そこそこ動く『百錬の覇王』タイプ
- 作画は崩れないけど、全然動かない本作タイプ
どっちがマシですか?
そこそこの予算で作ってもらうに越したことはないのですが、それが叶わず低予算になった場合の話です。究極の選択ですね。
個人的に、バトルものなら前者、日常系萌え作品なら後者という感じかなぁ。本作みたいなバトルあり萌え作品の場合は難しいですねぇ。
「わし」がかわいい
個人的にロリババアってあんまり好きじゃないんですが、本作の主人公ミラちゃんは可愛いと思いました。厳密に言うとロリジジイかもしれんけどね。
絵が綺麗というのもありますし、声もいい感じ。
ミラの可愛さのおかげで、アニメとしてギリギリ見られるものになっていると思います。
声優が豪華
1話のナレーションが三石琴乃さん。老賢者時代のダンブルフがささきいさおさん。メイドが堀江由衣さん。
……といった感じで、有名声優が何名も出演されています。声優好きなら結構楽しめるんじゃないでしょうか。
「その予算を作画に回せ!」という意見もありそうですが、出番が多いメインキャラの声を当てているわけではないので、それほど予算を使ってはいないと思いますよ。
おわりに
初めて1話を見た時には「これは酷い!低予算なろうアニメの中でも最低の出来なのでは?」と思いましたが、2回見たら割と好きになりました。
正直、紙芝居レベルの映像ですし、話もワクワクする感じではないですが、何も考えず、ぼーっと眺めるアニメとしては悪くないと思います。ミラちゃんが可愛いし、空気感も良い感じです。
視聴継続ですね。これも最終回まで見ると思います。