『ゆゆ式』OVA「困らせたり、困らされたり」感想

記事内に広告が含まれています。

『ゆゆ式』OVA「困らせたり、困らされたり」を見た感想です。

興味はあったものの、ちょっと高いなと思って手を出せずにいたのですが、先日ネットで円盤を購入。発売から1年以上経ってからの入手です。

「困らせたり、困らされたり」とても作り込まれた作品でした。収録時間こそ30分以下と短いですが、内容は充実していて視聴後の満足感はとても大きかったです。値段以上の価値があると思いました。

まだ見ていないファンの方はぜひとも見て欲しいです。自分もお金の出し惜しみをせず、もっと早く見ておけばよかったと反省してます。

季節とタイトルのこと

時系列的に高校2年の秋の話が中心になっています。アバンタイトルは半袖を着ているから夏の話。イチョウの葉が舞うOP映像を経て、本編は秋の話になります。

タイトルの「困らせたり、困らされたり」というのはあいちゃん(相川千穂)のセリフ。ゆずこたちが唯を困らせようとしている所を見て「困らせたり、困らされたり、なんかいいよね」と言います。

困らせること自体を「いいね」と言ったわけではなく、困らせあうことができるような信頼関係、ゆずこたちの仲の良さにいいねと言ったのでしょうね。

『ゆゆ式』のエッセンス

このOVAには『ゆゆ式』の良さが凝縮されているように思います。

OVAというのは、収録時間と価格設定から分かるように、熱心なファン向けの映像作品。30分未満の作品に6000円以上のお金を払おうと思うのは、その作品が大好きな人間だけだと思います。

でもこのOVAはマニアックな方向に走ること無く、『ゆゆ式』を知らない人が見ても十分楽しめる内容でした。むしろTV版より先にこっちを見せたいくらい。

『ゆゆ式』のエッセンスというか、楽しい部分が凝縮されていて、どういう作品なのか伝わりやすいし、魅力もつかみやすいです。

原作エピソードの選び方が上手いと思います。原作には結構難解なネタがあるけど、そういうのは控えているようでした。

初見の人でもクスッと笑えるような、比較的分かりやすいネタを選んでアニメ化しているように思います。でも『ゆゆ式』らしさはしっかりあります。

TVアニメ版では2話の「なんつってっつっちゃった」で脱落(視聴断念)した人が多いと聞きますが、OVAには人を選ぶネタが無いから新規の人も見やすいと思います。

変わらないテーマ

「ノーイベント グッドライフ」という作品テーマはOVAでも徹底されています。事件も行事もなにもなく、3人の日常会話を中心に話が進みます。

箱庭感がなんとも心地よいです。3人だけの世界。閉ざされた狭い世界。なんというか落ち着きますね。包まれている感じがとてもいい。冬のお布団みたいな幸福感を味わえます。

(3人だけの世界と書きましたが、OVAにもあいちゃんやふみおか、お母さん先生はちゃんと登場するのでご安心を。)

また、何気ないセリフから、楽しい日常も永遠に続く訳ではないことを感じさせられます。終わりがあるから今のこの時が大事なのだと。

それでも重い空気にならない絶妙な塩梅なのがいいですね。基本はたわいのない会話です。

映像のこと

OVAですがジャンルがアクションではないのでメチャクチャ動くというわけではありません。会話が中心の作品だから当然といえば当然。

ただオープニング映像はキャラの動きが小気味よく、何回も見返したくなりますし、縁が制服のままお風呂に入るシーンなど、随所随所で面白い動きをします。

オープニング映像の冒頭部分の動きが、TV版の「あーしーたを」の所と同じで一瞬使い回しかなと思ったのですが、見比べてみると新しく描かれていることが分かりました。

構図は同じですがキャラデザがしっかり変わっています。分かりやすいのはスカーフのサイズ。OVAは制服のスカーフが太くて長いです。

キャラデザ

キャラデザは原作寄り。TV版から変更されていて漫画の絵がそのまま動いてるような感じです。

TV版ではすらっとした体型でスタイルが良い感じでしたが、OVAでは丸っこく若干膨らんだ感じになりました。セクシーな感じのキャラデザから、可愛らしい感じに変わったとも言えます。

TV版

©三上小又・芳文社/ゆゆ式情報処理部「アニメイトタイムズ」より引用

OVA版

©三上小又・芳文社/ゆゆ式SP情報処理部「ニコニコニュースオリジナル」より引用

TV版キャラデザも好きだったけどこれもいいですね。

OVA唯ちゃんが二人を見る表情からは慈しみのようなものが感じられ印象に残りました。

塗りの感じもTV版とは違っています。デジタル特有のテカテカ、ツルッとした無機的な感じが抑えられていて、温かみが感じられます。色味が淡くなっているのも良い感じです。

OVAは全体的に画面が落ち着いた感じになっていました。季節が秋ということとも関係しているのでしょうね。とても上品です。

TV版では結構フェティッシュな映像(脚へのこだわり等)を入れていたけど、OVAでは控えめでした。OPにヘソチラがあるくらいでしょうか。

あとがき

『ゆゆ式』ってほんとうに独特の作風をしていると思います。日常系作品はたくさん作られているけど似たような作品が見当たりません。

ただ女の子たちが会話してる所を見るだけなのだけど、すごく引き込まれます。ストーリー性もイベントも無いのになぜか面白い。虚無にならないところがすごいです。

見るととても穏やかな気分になれますね。リラックスできる。

きらら系や日常系というカテゴリの中には、ドラマ性があって賑やかな作品もありますが『ゆゆ式』は日常描写を徹底した、日常だけで見せる穏やかな作品です。

刺激が足りないと思う人もいると思いますが、この雰囲気が好きな人にとってはたまらない魅力があります。

TVアニメ2期やOVA第二弾が作られるのを楽しみに待ちたいです。

(追記:dアニメストアで見れるようになっています。2021年5月1日時点。)


ゆゆ式 12巻

タイトルとURLをコピーしました