さようなら『チートスレイヤー』…炎上商法じゃなかったのは驚きです

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月刊ドラゴンエイジ(KADOKAWA、富士見書房ブランド)にて連載開始された『異世界転生者殺し-チートスレイヤー-』が炎上し、1話で打ち切りという予想外の結末を迎えました。

もう旬を過ぎたネタですが、やっと本編を読めたので思ったことを書きます。

ちなみに、記念に紙の雑誌が欲しいと思い書店を回ったのですが、どこにも置いてませんでした。売り切れたのか、回収されたのか、それとも次の号の発売が近いから返品されたのかは分かりません。

もう少し早く探しに行けばよかったです。ネットでは転売ヤーが定価の2倍以上の値段で売ってますし……。結局電子版を買って読みました。

概要

『チートスレイヤー』は、原作:河本ほむら氏、作画:山口アキ氏による漫画作品。異世界からの転生者によって恋人を惨殺された少年が、正体不明の魔女にそそのかされ、復讐のために立ち上がるという物語です。

有名なろう系主人公によく似たキャラクターが悪役として登場し、残虐行為を行うという内容に批判が殺到。ネット上で大きな話題になっていました。

「ベストナイン」と呼ばれる転生者たち9名の会議シーンが描かれるのですが、そこに登場するのは元ネタがはっきりと分かるキャラばかり。

例えば、『賢者の孫』のシン=ウォルフォードが元ネタの「ルイ=クロフォード」や、『オーバーロード』のアインズ・ウール・ゴウンのパロディ「ドーン・ウィル・デッド」などです。

他にも、転生モノどころか異世界モノでさえない『ソードアート・オンライン』のキリトにそっくりなキャラがいますし、『異世界食堂』のアレッタ(※チート持ちではないただの店員)を元ネタにしたキャラがメンバー内で浮いてます。突っ込まれるのもやむなしですね。

キャラの詳細に関しては、まとめサイトやYouTube動画などで解説されているので省略します。

意外な結末

この騒動を見た筆者は、「まーたK社※の炎上商法かよ!触ったら宣伝に加担することになるからスルーしよ…」と思っていたのですが、なんと1話で打ち切りになってしまいました。

(※富士見書房はKADOKAWAに吸収合併され、現在はK社ブランドの一つとして名前だけが残っている状態。)

謝罪文を読んだのですが、「炎上するなんて思いもしなかった」とでも言いたげな内容だったので驚きましたよ。狙ってわざとやったんじゃなかったの!?

てっきり、人気キャラのイメージを壊すような際どい描写で物議を醸し、金をかけずに宣伝してやろうという魂胆だと思っていました。

アニメ『スーパーカブ』の炎上騒動(※)を見ても分かりますが、ネット上には、不確かな情報に踊らされやすい人たちがいます。

彼らはまとめ記事のタイトルだけ見てブチ切れ、拡散してくれるので、炎上を仕掛ける側の出版社は「宣伝が楽で助かるぜ~」と調子に乗ってるのだろうなと思ってましたよ。

しかし、今回は炎上させるつもりがなかったようです。ちょっと信じられない。炎上させる意図がなかったのなら、何故こんなあからさまで悪意たっぷりのパロディをやったんでしょうね? 意味が分かりません。

当然、根回しはしていなかったらしく、騒ぎになってから元ネタの作者に謝罪した模様。出版社、編集部は、筆者が想像していたほど利口じゃなかったんですね。もっとずる賢いと思ってました。

「炎上商法だったものの、燃えすぎたから引っ込めた」という説もありますが、その程度でやめるのなら最初から炎上なんて狙うべきじゃないですね。

やるならやるで、批判なんて気にせず最後まで走り切ってほしかった。モラル的にはアウトでも、法的にはグレーゾーンだったはず。さらに著作権侵害は親告罪なので、最悪でも訴えられ裁判で負けるまでは連載を続けられます。

反対に、権利等に配慮するつもりがあるのなら、他社のキャラは利用せず、K社作品のキャラだけに留めておくべきでしたね。加えて、作者の許可が取れたキャラだけ出すことにすれば、誰も文句は言えなかったはず。

 

※『スーパーカブ』の偽炎上騒動:作中の法令違反描写に視聴者が怒って炎上が発生したというミスリード記事が出された結果、「フィクションにケチをつけるな、表現規制は許さん」という方向で本当の炎上が発生した事件。元々、法令違反描写に関して炎上と呼べるほどの騒ぎは発生していなかった。

本編について

読んでみましたが、個人的にはネットで騒がれているほど酷い内容だとは感じませんでした。

ヘイト描写が多いと言われていたものの、1話時点では『賢者の孫』の主人公シンくんのパロキャラ「ルイ」を貶める描写があったくらいで、他のキャラは顔見せをした程度。今後どういう扱いになるのか不明なまま終わりました。

確かに魔女は転生者たちを「陰キャ」呼ばわりしていましたが、1話の時点で完全なる悪人として描かれていたのはルイくらい。『このすば』アクアのパロキャラ「フレア」は、無知だけど悪意は持っていないという風な描かれ方でした。

とはいえ、全く問題がないとは言い切れないですね。一応敵扱いですし、元ネタのファンの人が怒るのは分からんでもない。

あと、中途半端に「またオレ何かやっちゃいました?」のセリフを引用したり(※使い所が微妙に違う)、『賢者の孫』とは別作品の「黙れ(ドン)」をやらせたりと、元ネタの理解度が低い感じもしました。

「愛が感じられないパロディは不愉快」という意見はごもっともですね。

ただ、ルイの剣には漢字が書いてあったので、『孫』の内容を全く知らないわけではなさそう。最低でもまとめサイトレベルの知識はあるのかな? まぁ、だからといって擁護は出来ませんが……。

なお、『孫』のパロキャラは、元ネタとは全く違う性格になっていました。「またオレ何かやっちゃいました?」というセリフに象徴されるような無自覚系ではなく、ただのゲス野郎として描かれています。

どちらかと言えば、なろう系主人公に突っかかって返り討ちにされる、噛ませ犬のようなキャラになってますね。最近話題の作品で言うと、ヤングジャンプ連載のなろう系漫画『王立魔法学園の最下生〜貧困街上がりの最強魔法師、貴族だらけの学園で無双する〜』のデルク様みたいな雰囲気です。

原型を留めていないのだから、いっそ『孫』要素を入れず、元ネタが分からないようなオリジナル転生者にすればよかったのにと思います。

複数のキャラを混ぜ、『孫』を想起させない別キャラにしておけば「黙れ(ドン)」の、違和感も減ったでしょう。

少しの配慮さえあれば、打ち切りは免れたと思います。それだけに非常にもったいない。

おわりに

『チートスレイヤー』という作品には色々と問題があるものの、話の続きは気になりました。『孫』の偽物をお茶に誘った所で終わりでしたからね。

転生者はどうして異世界住民を虐殺しているのか、平凡な主人公がどうやってチート持ちの転生者を倒すのか、魔女は何者で何故主人公に接近したのか、など謎が多く、真相を知りたかっただけに打ち切りは残念ですよ……。

「陰キャ」という言葉は異世界に存在せず、魔女と転生者しか知らないという設定は興味深いですし、魔女が「転生者は前世でゲーム廃人だった」と語っても、中世レベルの異世界に住む主人公には一切理解できないなど、細かい描写の説得力は結構高かった。

あと、絵はすごく良かったですね。魔女の悪い顔好き。

アンチなろう系作品はすでに沢山存在しているので、いまさらやっても新鮮味がないという意見もありますが、まだ1話です。駄作だと判断するには早すぎる。これから面白くなる可能性もあっただけに、こんな形で終わってしまったのが悔やまれます。

ありきたりなテーマを、実績のある作者がどのように調理するのか見たかった。作者は先の展開を考えていたでしょうに無駄になってしまいましたね。

責められるべきは、一度OKを出しておきながら、ネットの反応にビビってすぐ引っ込めた出版社だと思います。作者や作画の人ばかり批判されているのは気の毒です。

個人的な希望ですが、元ネタのファンを怒らせるようなパロディはやめ、キャラをリニューアルしてやり直してほしいです。でも、ここまでの騒ぎになった以上、再開は難しいのだろうなぁ……。

 

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