【全話視聴】アニメ『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』感想

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2021年春アニメ『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』を最終回まで見たので感想を書きます。

タイトルが長いですが、なろう発ではなくMF文庫Jの商業ラノベみたいです。原作者は『この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる(慎重勇者)』の土日月先生。

なお同作者は、似たタイトルの『もしも高度に発達したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』(NOVEL 0)というラノベを先に出しています。(これはカクヨムに投稿された小説を書籍化したものらしい。)

その作品をベースに、社会人だった主人公を高校生に変更し、別レーベルで出し直したのが本作のようです。

この経緯についてはググっても公式による説明が見つからなかったので、断言はできないんですけどね…。おそらくそうでしょうという推測です。

あらすじ

リアルで挫折し無気力になってゲームばかりしている高校生、結城宏が主人公。ある日、新作ゲームを買いに行った主人公は、巨乳美女の店員レオナさんに騙され、10年前に発売されたいわくつきのフルダイブRPGを買ってしまいます。

仕方なくプレイするのですが、そのゲームは五感をはじめ何から何までリアルに再現された超高難度のクソゲーでした。痛みや疲労は現実と同じように感じるし、主人公補正や救済措置が存在しない、非常に面倒くさいゲームです。

開始直後に誤ってNPCを殺害してしまった主人公は、幼馴染キャラや衛兵隊に追われる身となります。

妖精の姿でゲーム世界に現れたレオナさんのサポートを受けつつ、凶暴化した幼馴染から逃げ回ったり、町に襲来する敵と戦ったりしながらゲームのクリアを目指すという内容です。

全体的な感想

序盤はちょっと期待していたんですけど、最終回まで見た今評価すると、思っていたほど完成度の高い作品ではありませんでした。

リアルを追求したゲームを名乗る割に、「それはないでしょ…」と言いたくなるようなトンデモ展開が目立ちますし、シリアスなのかギャグなのかよく分からない独特のノリに振り回され、物語に入り込めませんでした。

あと、1クールのアニメにしてはやたらとテンポが遅かった。

とはいえ、最終回まで飽きずに見終われる程度には面白かったです。同季アニメの『おさまけ』は、6話くらいで見るのが苦痛になって、まだ最後まで見れていません。

あと、なろう系などのテンプレ通りに進むアニメと違い、先の展開を予想しづらい点は良かったです。「しょーもない内容だなぁ」と思いつつも、次が見たくなるという妙な魅力はありました。

 

以下、作品の内容について、より具体的な感想を書きます。

今回は極力ネタバレをしないよう気をつけていますが、感想を書くためにどうしても必要な部分については、ストーリーの内容に言及しています。未視聴の方はご注意ください。

気になった点

まずは、見ていて引っかかった部分について。

負のご都合主義がストレス

なろう的なご都合主義や極端な主人公アゲに対するアンチテーゼなのだと思いますが、本作では主人公がひたすら嫌な思いをします。

町人たちから犯罪者呼ばわりされ石を投げつけられたり、弱い弱いと周囲の兵士から見下され仲良くしていたキャラからも相手にされなくなったりと、辛い展開が多い。

チートなんてありません。なろう系みたいに皆から誉められる展開もないです。弱い主人公はボコボコにされ、見下され、ハブられるだけ。

筆者は登場人物に感情移入できず、引いた視点から眺めていたので、さほど精神的ダメージを受けなかったのですが、見ていて気分が悪くなる人もいるだろうと思います。ストレスフリーにこだわる層(なろう系愛好者など)にとっては、辛すぎて耐えられない展開かもしれません。

さらに、ゲーム内だけに留まらず、主人公は現実パートでも散々屈辱的な目に遭います。主人公はかつて陸上部の選手だったのですが、大会中に漏らしてしまい、観客から笑い者にされたことが回想で明かされます。

筆者はそのシーンを見て「なんか民度の低い世界だな」と感じました。他人が粗相する姿を指差して笑うなんてどんな低レベルの連中なんだよ。現実のほうもクソゲーすぎる。

周囲にロクな人間がいない主人公が気の毒で仕方ないです。本来主人公をかばうべき顧問まで笑っていたのは胸クソでした。

主人公はそのトラウマによって消極的な性格になりゲームに逃避。妹から罵られたり、不良にカツアゲされたりしながら辛い日々を送ることになります。

一部のなろう作品みたいな極端なストレスフリーが興を削ぐのは理解できますが、ストレスの溜まる場面ばかり見せるのもエンタメとしてどうなのか…。

ひたすら主人公が苦しむだけの内容を見せられたら視聴を止めたくなってもおかしくない。

一応、やられっぱなしで終わるわけではないのですが、展開が遅すぎるので、途中で嫌になって離脱する視聴者も多そうです。

ギャグが滑り気味

「シュールギャグというか、バカバカしいことをシリアス風に演出して笑いを取るスタイル。あえて滑った感じにして変な空気を楽しむギャグなのかな?」と途中までは思っていました。

しかし、最終回まで見た現在振り返ってみると、ただ単純に滑っていただけのようにも思います。

主人公のわざとらしい突っ込みリアクションは若干痛々しいですし、キレ芸を寒いと感じる人もいそう……。

展開が遅すぎる

ストーリーがなかなか先に進みません。

ざっくり書くと前半は凶暴化した幼馴染から逃げる話で、後半は町を襲う魔物と戦う話です。結局、最初の町から出ることなくアニメは終わってしまいました。

テンポが悪く、短い内容を無理矢理引き延ばしたような印象を受けます。原作ストックが足りなかったからなのでしょうか? 一般的な1クールアニメと比較すると話の進みが異様に遅い。

例えば7話。街に魔物が攻めてきたという緊迫感のある状況なのに、レオナさんとのしょーもない会話(というより寸劇? 漫才?)シーンを延々と見せられるんですよね。目の前に敵がいるのに、ずっとおしゃべりをしていて、なかなか戦闘にならないという謎シナリオです。

無駄なシーンをカットし本筋だけを描くのなら、半分以下の話数でまとまりそうな内容でした。

案の定、最終回は「俺たちの戦いはこれからだ!」エンド。物語的に中途半端な部分で、何も解決しないまま、強引に良い話っぽくして終わりました。

このアニメは全12話でしたが、原作小説2巻の終わりまでしか進んでいないらしい。こんなにゆっくりやるアニメってめったにないと思います。

早すぎるアニメ化

原作ラノベ1巻が出たのは、2020年8月25日。アニメ1話の初放送は、2021年4月7日です。

原作発売から1年も経たずにアニメ放送って早すぎませんか?

アニメは短期間で作れるものではありません。ということは、1巻が出る前からアニメの制作が始まっていたということでしょうかね?

また、放送開始時点で2巻までしか出ていなかったというのも驚きです。2冊合わせて計464ページと分量も少な目。やたらとテンポが遅かったのはそのせいですね。

それにしても、少ない巻数しか出ていない作品を、わざわざ尺稼ぎみたいなことをしてまでアニメ化する意味があったのか疑問です。

原作の宣伝目的で作られたのは分かりますが、水で薄めたようなアニメ版を見て原作を読みたいと思う人は少なそう。

せめてもう少し原作ストックが充実してから、区切りの良いところまでアニメ化するべきだったのでは? そうすれば今より見やすい内容になり、宣伝効果も高まったと思うのですが…。

類を見ない早さでアニメ化した作品にも関わらず、独特のノリで万人受けしそうにない内容。さらにテンポは激遅。

K社がここまで急いでアニメ化を進めた理由が全く分かりません。「絶対流行る」という確信がある、イチオシ作品だったんでしょうかね?

参考:他のラノベアニメと比較

本作は1クールで原作2巻までしか進みませんでしたが、他のラノベアニメは、1クールで何巻まで進んでいるのでしょうか?

気になったので調べてみたところ、筆者がこれまでに見たラノベアニメには、原作3巻まで使っている作品が多かったです。

『弱キャラ友崎くん』、『神たちに拾われた男』、『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』などがそう。

作品のジャンルや内容、1巻あたりのページ数にもよりますが、1クールでやる場合は3巻以上消化することが多いようです。

比較的展開が遅めだと感じた『回復術士のやり直し』も、3巻の最後までやってますからねぇ…。全話に無理矢理エロシーンをブチ込んだとしても、そこまで進めるわけです。

ただし『回復術士』の原作は、ステータス・設定の説明や、食事など日常シーンにかなりの文字数を使っており、メインストーリーの分量が少なめです。アニメ化の際にそれらを大幅にカットしたので、巻数の割にゆっくりなテンポになったのだと思います。

ちなみに「展開が速すぎてダイジェストのようだ」と言われた『百錬の覇王と聖約の戦乙女』は、端折りまくった結果、全12話で原作8巻まで消化したようです。(ラストの凱旋シーンは9巻の表紙と同じ絵なので、9巻まで進んだと解釈することも可能。)

これは流石にやりすぎで、シリーズ構成の高橋ナツコ氏に対する批判の声もありましたね。

作画がパッとしない

『フルダイブ』の話に戻ります。

ストーリー的には盛り上がるはずの重要な戦闘シーンでも絵があまり動かず、顔のアップばかり映されていたのが残念でした。また、キャラ絵が崩れかかっている回もありました。

なんというか、全体的に低予算感が…。前述のように急なアニメ化ですし、時間もかけられなかったのかな?

アニメーション制作は「ENGI」という会社です。K社などの出資により2018年に設立された新しめのスタジオで、『旗揚!けものみち』、『宇崎ちゃんは遊びたい!』に続く3作目のアニメが本作のようです。

『宇崎ちゃん』のアニメは全話視聴しましたが、途中から絵が安っぽくなったと記憶しています。あと、コストカットのためか背景が3DCGで、ところどころ違和感がありました。

失礼な言い方ですけど、ここって、K社産ラノベ&マンガの宣伝用アニメを、安く作るためのスタジオなんですかね?

ちなみに、MF文庫Jから出ている人気ラノベ『探偵はもう、死んでいる。』のアニメを作っているのもここです(2021年夏放送予定)。PVを見る感じ良さげなのですが、最後まで作画クオリティが保たれるのか心配ですよ。『宇崎ちゃん』や本作『フルダイブ』も途中までは悪くなかった。

サプライズ狙いの超展開は白ける

意外性のある展開で視聴者を驚かそうという考え自体は間違っていないと思うのですが、サプライズを狙いすぎて茶番感が酷くなっている。

どんでん返しに次ぐどんでん返しはいいけど、ストーリー運びが強引なせいで、話が薄っぺらいように感じてしまいます。

「リアルを極めたゲームをどうやってクリアするのか」というのがテーマのはずなのに、「ご都合主義的な裏技で問題解決ゥ~」というのを何度もやられると白けますよ。全然リアルじゃないじゃん!

まあ、「リアルを追求しつつ、ご都合展開なしで、超絶難度のゲームをクリアする」ストーリーを作るのは難しいと思いますけどね。

ご都合推理

最終回直前にも予想外の展開をブチ込んできましたが、伏線らしきものがほぼ存在しなかったので、非常に唐突な感じがしました。陰謀だの黒幕だの言われても、こんなん視聴者は誰も推理できないでしょ!

主人公がいきなり超推理で秘密を暴くのも違和感がすごい。彼、そんなキャラじゃなかったと思うのですが…。どちらかと言えば体育会系だし、頭脳派のような描写はなかったです。キャラが自らの意志で動いているのではなく、作劇上の都合で動かされている感じがしてゲンナリですよ…。

レオナさんの「この推理オタク!意味分かんない!」という突っ込みにメチャクチャ共感しました。ホント意味分からん展開でしたよ。

ラストバトルが茶番

そのあとのバトルも酷い。VRクソゲでは現実の身体能力が反映されるため、現代日本人は格闘家でもない限り、ゲーム世界の敵に勝てないという設定があります。

それを今まで散々見せておきながら、最終回で完全否定するという暴挙に出ました。主人公は本来なら絶対勝てない敵を、精神論やオカルトパワーを駆使して圧倒します。

なんなんでしょうね……。リアルすぎるゲームを謳っているのに、いきなり変な力を出さないでくださいよ!

強敵を倒してもいいけど、リアル方向で工夫して倒す感じにしてほしかったです。作品のコンセプトを自分から捨てていくのは納得がいきません。

リアルリアル言っておきながら、リアリティの欠如した都合のいい展開が多すぎる!リアルってなんだよ!そのコンセプトいらなかったじゃん!ただのバランス悪いクソゲーで良かったじゃん!!

バトルの結末も、意外性しか考えていない感じで微妙。ギャグなのかシリアスなのか分からない中途半端なものでした。うーんこの。どんな顔して見ればよかったのでしょう。

レオナさんの秘密

レオナさんが主人公にクソゲーをプレイさせたがる理由は、終盤まで伏せられていました。何か深いワケがありそうで気になっていたのですが、実際にはメチャクチャくだらない理由でした。

ネタバレになるので詳細は書きませんが、もうホントにしょーもない。しょーもなさすぎる。

期待させるだけさせておいて悪い方向に裏切るという、この作品の方向性そのものを象徴するような設定でした。

ところで最終回のおっぱい当てシーンは原作にあったんでしょうかね? なんか『俺だけ入れる隠しダンジョン』を彷彿とさせました。あのアニメはエロを前面に押し出していた割に、全お色気シーンの半分くらいがおっぱい当てだったんですよね。何回同じことを繰り返すんだよと思いました。

ちなみに『フルダイブ』も『俺ダン』と同じ脚本家さんがシリーズ構成・脚本(全話)でした。

良かった点

一通り気になった部分について書いたので、次は良かった部分。

絵の雰囲気が魅力的

「気になった点」では「作画がパッとしない」と書きましたが、それはあくまで動きの少なさや、キャラ絵の不安定さに対する不満です。

その一方で、様々な要素が組み合わされて出来上がった映像の雰囲気は良好でした。具体的な要素で言うと、キャラデザ、色彩、背景が良かった。

キャラはデフォルメされたアニメ絵ではあるのですが、極端に記号化されているわけではなく、ほのかにリアルさも残っており、作品の内容にマッチしていると思いました。けっこう好き。

色彩に関しては、上品で落ち着いた感じでした。けばけばしさがなく目に優しい。現実パートでは映像の彩度が落とされ、生きる気力を失った主人公の心情が表現されていたのも良かったです。(この演出は同季アニメ『スーパーカブ』でも行われてましたね。)

背景は『宇崎ちゃん』の時と同じく、3DCGで作られているのだと思いますが、それが逆にゲームっぽさを醸し出していて、世界観の説得力を高めていました。セリフで説明しなくてもリアルなゲームという雰囲気がひしひしと伝わってくるのがいいです。

キャラが立っている

主人公はまあ普通な感じですが、女性キャラは濃い人物ばかりでした。

強引な性格でちょっとクズだけどエロ可愛いレオナさん。大人しそうな外見をしているのに、怒らせると鬼の形相で襲ってくるゲーム内幼馴染アリシア。ドSで他人のおもらしを見るのが大好きな異端審問官ミザリサなど、個性が強いキャラが勢揃い。

ストーリーに茶番感があっても途中で視聴を止めなかったのは、魅力的なキャラたちのおかげだと思います。

ネット上のレビューを見ると、レオナさんに悪感情を抱いた人が結構いたみたいですが、個人的には好きでした。クズなところが逆に可愛いじゃん。

主人公の同級生ではなく、一回り年上のお姉さんという設定もポイントが高い。なんだかんだ言いながら手玉に取られている主人公が微笑ましかったです。年の差設定がうまく活かされていると思いました。

また、キービジュアルやED映像では非常に露出度の高い格好をしていたミザリサですが、初登場時は普通の服で肌を隠していました。そのギャップ演出が良かった。

あと、異端審問官としてエグいことをしている設定にも関わらず、意外に気さくな感じで親しみの持てるキャラでした。願わくばもっと活躍するシーンを見たかった。他のキャラに比べ出番が少なかったのがちょっと残念です。

色々批判的なことを書いてきましたが、キャラのインパクトと魅力に関しては文句なしに素晴らしいと言いたい。

声優さんの演技も良かったですね。キャラクターの個性を引き出し、作品を盛り上げてくれました。

エンディング曲が良い

やたらとテンションが高くて耳に残る曲。歌っているのはヒロイン(?)4人の声優さんです。

アリシア役、ファイルーズあいさんのシャウトがすごい。本編の狂気演技も迫真でした。(ちなみにジョジョ6部アニメでは主人公徐倫の声を担当するらしいです。)

本編未視聴だとハーレムものやラブコメだと誤解されそうな曲と映像。実際の内容は全然違うんですけどね。

コンセプト自体は良かった

ストレスフリー&ご都合主義満載のなろう系作品がもてはやされる現在、あえてその正反対の事をしようという発想は悪くないと思います。

チートを持たない主人公がどうやって高難度のクソゲーをクリアするのか気になり、序盤は結構ワクワクしました。

また、あるエピソードを攻略する鍵が、ゲーム内のNPCを意思を持った一人の人間として扱うことだったのですが、これには色々考えさせられました。

たとえ相手がゲームキャラでも命を軽んじてはいけないという、教訓話のようでもあります。ゲーム世界じゃないのにゲーム感覚で人を殺しまくるサイコパス主人公へのアンチテーゼとして解釈することも可能で興味深い。

このように評価できる部分があるだけに、コンセプトを活かしきれず、ご都合主義で問題を解決する安っぽい展開になってしまったのは残念です。

なろう的なものに対するアンチテーゼのはずが、結局同じ穴のムジナになってしまったのはもったいない。

おわりに

展開の雑さは気になりましたが、嫌いになれない作品でした。クセが強いけど、楽しめる部分は確かに存在します。

このアニメに興味を持った方は、3話くらいまで見てギャグのノリが自分に合うか確認するのがベターだと思います。最初の数話を楽しめない場合は、おそらく最後まで見ても楽しめないでしょう。

序盤はまだ見やすいほうで、だんだんアクが強くなっていくので注意。

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※ヒロイン役の声優が出演しているボイス作品

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