第九話「回復術士は、食べ物の恨みを晴らす!」
今回も特に話が進みませんでした。小物相手に復讐(?)するだけ。
あらすじ
主人公ケヤルガが顔を変えて街に偵察に行くと、前回の賞金稼ぎに襲われます。
主人公は酒場を破壊したことに対する復讐を誓い、賞金稼ぎたちへの攻撃を計画。隠れ家に夜襲をかけ、媚薬を使い魔物を興奮させ襲わせるなど、悪趣味な方法で痛めつけます。
残りはほとんど日常シーンでした。
主人公はフレイアに新しい杖を買い、ヒールで調整。主人公の能力に目をつけた魔族の商人と価格交渉します。
王国軍を率いたノルン姫が街に現れたところで第九話は終わります。
気になった点
物語が進まない
今回も前回と同じく箸休め回でした。イヴ絡みの設定の説明や旅の支度など、日常パートが中心です。
全12話のアニメでこれはスローペースですね。キリがいいところで終わらせるために尺を調整しているのでしょうか。
「復讐」という言葉の乱用
主人公は美味しい食事を提供してくれた酒場を壊されたことにご立腹。賞金稼ぎの仲間たちにも復讐しないといけないと言います。
筆者はこのシーンを見て、復讐という言葉を便利に使いすぎだと思いました。
賞金稼ぎはイヴを襲ったわけであって、主人公はそれに巻き込まれただけなのに復讐対象にしていいのでしょうか。
しかし主人公はまた暴れられると思ったのかウッキウキ。凄く嬉しそうです。
ただの狂人ですね。結局、復讐というのは罪悪感を薄めるための言い訳でしかなく、圧倒的なチートパワーで他者を痛めつけるのを楽しんでいるのだと思います。
称賛マシーンと化したヒロイン
前からそうですが、今回は特に不快感を覚えました。
ベテランハーレム要員のフレイアとセツナが、新入りのイヴに説教します。行為中に主人公を拒絶して気を使わせるのは失礼なんですって……。
酷いな! どれだけ主人公に都合のいい人形なんでしょう。さらに二人は主人公のことを「いい人」だと言います。
今まで近くで彼の行動を見てきたのに、よくそんなことが言えますね……。洗脳されてるようにしか見えないですよ。
でも設定上では洗脳されておらず、本心から惚れているらしい。
相変わらずフレイアとセツナはデレデレでベタベタです。年中発情期で気持ち悪すぎですよ~。こういうシーンも主人公に感情移入できたら楽しめるんですかね?
良かった点
続きが気になる引き
ラストシーンで主人公のいる街にジオラル王国軍がやってきます。その中にはノルン姫とメインの復讐対象者である【剣】の勇者ブレイドもいました。
次回が気になる引きは良かったと思います。
第九話まとめ
特に話の進展がないかと思いきや、ラストシーンでついに復讐対象者が登場。
これは街の人が犠牲になる展開になるのかな? 胸糞展開にして、主人公の復讐に正当性を持たせるパターンっぽいですね。
きっと、「罪のない街の人達を殺すなんて許せない! 復讐しかないな!」っていう流れになるのでしょう。
今回主人公と交流した魔族の商人は、被害者役として用意されたキャラクターなのかもしれません。知らない人が殺されても復讐の動機としては微妙だから、ちょっと交流のある人を用意しておこう……みたいな。
第十話「回復術士は、可憐な一輪の花になる!」
今回は素直に楽しめました。見やすいし、ちゃんと内容もあり、ギャグも笑えます。
あらすじ
主人公ケヤルガが滞在するブラニッカの街にジオラル王国軍が到着。その中にはノルン姫と【剣】の勇者ブレイドのほか、新キャラである三英雄の一人【鷹眼】もいました。
そのあと、主人公は魔族の商人カルマンとポーションの買取について交渉します。カルマンは将来の夢を語り、盛大に死亡フラグを立てました。
ブレイドが街の娘を襲っていることを聞いた主人公は、ヒールで女性の姿になり、レズビアンのブレイドをおびき出す計画を立てます。
美少女の姿で街を歩いているとゴロツキに絡まれるも一瞬で撃退。
そのあと酒場でブレイドと対面した主人公でしたが、薬を飲まされ拉致されてしまいます。
ベッドに拘束された主人公はブレイドに襲われそうになりますが、自分の性別が男であることを明かし形勢を逆転。復讐の開始を宣言するのでした。
気になった点
同レベル
媚薬を使って街の娘を襲うブレイドが悪人として描写されていましたが、主人公もかつて剣聖クレハに同じようなことをやってましたよね。
主人公がやれば許される。しかも、被害者が主人公のことを大好きになってハーレムに加わるというね。主人公に都合よく作られた世界の不条理さが際立ちます。
無防備な街
ブラニッカの街は20年前にジオラル王国に見捨てられ、現在は魔族領域になっているそうです。
にもかかわらず街を守る兵士が一人もおらず、王国軍の侵入を許している意味がわかりません。国境線付近の街なのにノーガードで大丈夫なのでしょうか。
こんな状態で20年間平和が維持されていたのも不思議です。自警団さえなさそうなので、軍隊がやってこなくても盗賊団レベルにやられちゃうでしょ。
露骨な死亡フラグ
魔族の商人カルマンが今回も登場。旅費を稼ぎたい主人公は彼と商談して、ポーションを買い取ってもらうことになりました。
このあとカルマンは盛大に死亡フラグを立てます。
「俺はな、金を貯めて、ここよりもっと大きな街で店を開きたいんだ。それが俺の夢ってところかな」
街が戦場になるから逃げる準備をしておいたほうがいいと主人公に忠告されても余裕をかましてますし、彼はもう助からないでしょうね。
やっぱこの商人はノルン姫へ復讐するための生贄キャラなのかな?
ケヤルガには「復讐の美学」とやらがあるので、何もされていない段階で自分から手出しはできません。
だから、とりあえず適当な人物を犠牲にし、それを口実に復讐という名の攻撃を仕掛けるスタイルを採ります。
これまでの展開を振り返ると、近衛騎士隊長レナードの時はアンナさん、コロシアムの時は村人たち、賞金稼ぎの時は酒場の人たちが犠牲なりました。
おそらく商人カルマンもノルンに攻撃を仕掛けるためのダシに使われるのでしょう。お気の毒に……。
時間遡行と復讐のジレンマ
今回からブレイドへの復讐が始まるわけですが、二周目の世界において主人公は彼女から何もされていません。そもそもこれまでは接点がなく、今回が初対面です。
それでも復讐という構図に持っていきたい主人公は、わざわざ女装して自分から被害を受けに行きます。
この主人公の行動は、作品の根幹に関わる重大な問題を浮き彫りにしています。
主人公が復讐対象者から被害を受ける前まで時間が戻っており、復讐対象者には一周目の記憶がない以上、主人公がもう一度被害を受けないと復讐が成立しないという問題です。
時間が戻った時点で彼らの罪は消えていると言えます。被害は主人公の記憶の中にしか存在しません。
フレア王女や近衛騎士隊長レナードへの復讐が成立したのは、二周目でも自分から捕まって虐待を受けたからです。
復讐とはやり返すこと。やられていないのにやり返すことはできません。
いっぽう、そのような理屈は無視し、一周目で酷いことをした悪人なのだから問答無用で先制攻撃するというパターンも考えられますが、それはそれで別の問題が生じます。
将来的に罪を犯す可能性が高い人物を、まだ何もしていない段階で処罰していいのかという哲学的・倫理的な問題です。『マイノリティ・リポート』的な。
時間を巻き戻したからといって、まったく同じ出来事が繰り返されるとは限りません。一周目の記憶を持っている主人公の行動次第では、復讐対象者の将来の行動が変化し、危害を加えてこない可能性もあります。
何もされていない段階で先制攻撃した場合、見方によっては、主人公が一方的な加害者となり、悪者になってしまいますからね……。
実際、主人公はそのことを警戒しており、二周目のフレアが一周目と同じように虐待を始めたことに喜んでいました。
ただ、主人公の行動の変化によりブレイドからの被害は回避できてしまいました。その結果が今回の謎ムーブですね。
時間遡行と復讐の組み合わせというのは、調理が難しいと思います。
自分から被害を受けに行くか、主人公を悪者にする覚悟で先制攻撃させるかの二択以外思いつきません。他に調理法があるのかな?
復讐ものを書くなら時間の巻き戻し要素は入れず、追放されて復讐とか、殺されたあと復活して復讐とかのほうが書きやすそうですね。
良かった点
仕草や表情の描写
映像のクオリティは相変わらず高いです。戦闘シーンはもちろん、日常描写も見ごたえがありました。
真剣な話をしている主人公と商人のことは気にもとめず、夢中で食事するセツナとイヴが可愛らしかった。ちょっとした仕草や表情の描写がいいですねぇ。なごむ~。
キャッキャウフフ
女性に化けてブレイドをおびき出そうと考えた主人公は、化粧をしてほしいとフレイアに頼みます。このシーンはギャグ調で面白かった。
普段から突っ込み役のイヴはもちろん、全肯定マシーンの二人まで軽く引いているのは笑えました。
そのあと、主人公は自分の顔にヒールを使い女の子(CV:日笠陽子)になりますが、さっきまで化粧発言にドン引きしていたイヴも認める可愛さです。
そこにフレイアとセツナが抱きつく絵面は、日常系萌えアニメみたいで良かったですね。
化粧して服を変えたらメインヒロインも務まりそうな美少女になりました。もうこのまま男の姿に戻らんでくれ……。
なりきり主人公
美少女の姿に化けた主人公ですが、外見だけでなく心の中まで女性になりきります。それまで男声だった心の声が女声に切り替わる演出は秀逸だと思いました。
ゴロツキを倒したあと「男ってちょろいな」と言ったり、ブレイドに暴行された時「か弱き乙女にこんな真似をするか……」と言うなど、ノリノリで美少女を演じているのが笑えます。
美貌に自惚れているのも面白かった。
ブレイドのキャラが濃い
いよいよメインの復讐対象者である【剣】の勇者ブレイドとの対決が始まります。
第三話の回想シーンでも十二分に異常性を見せていたブレイドでしたが、やはりキャラが濃かったですね。
通り魔に襲われた際、獲物の少女をうっかり投げつけてしまう間抜けさ。
甘い言葉で誘惑していたのに、顔を攻撃された途端ブチギレてメスブタ呼ばわりするナルシスト感。
主人公を苦戦させるほどの戦闘力など、インパクトの強い人物でした。
力任せの戦い方をするところに性格が出ていて面白かったです。攻撃を真正面から受けて自己再生したり、鈍器を振り回す感じで剣を使ったり。
同じく剣を使うキャラでも、剣聖クレハのような繊細な戦い方ではありませんでした。
あと、誘拐した美少女の正体が男とわかるや絶望し、ゲロゲロ嘔吐するオーバーなリアクションには笑いました。こいついつも吐いてんな。
第十話まとめ
今回はしっかり話が進みましたね。笑いどころも多く、個人的にはかなり楽しい回でした。
ただ、復讐ものとして見ると微妙かもしれません。ブレイドに先に手を出させることには成功しましたが、二周目の主人公は大した被害を受けていないからです。
ブレイド視点では、いきなり正体不明の女装男に襲われただけ。復讐だと言われても困るでしょう。一周目の記憶がないので、反省や後悔をさせることもできません。
ところで、このアニメはあと二話で終わるようです。ノルン姫と戦う尺が残っているのか心配です。三英雄の男も出ましたし、駆け足でやらないと収まらない気がします。