今まで見たことがなかった「機動戦士ガンダム」を見てみました。ファーストガンダムと呼ばれる一番最初のガンダム作品です。
おじさん世代の人たちがネットで熱く語っているのを見たことがきっかけ。初代ガンダムはロボットアニメとして優れているだけではなく、演出や人物描写に優れた名作だという感想や、監督の富野氏の凄さなど色々聞いて興味を持ちました。
dアニメに入っていたのでTVアニメ全43話を年末年始にまとめて視聴。もっと早く見ていれよかったというのが素直な感想です。
完成度の高いアニメですねやっぱり。語り継がれるだけのことはありますし、後の多くの作品に影響を与えていることも分かりました。
恐縮ですが…
ただ正直なことを言うと感想書くのが怖いんですよねぇ。恐れ多いというか気がひけると言うか……。
今年(2019年)はファーストガンダムが放送されてから40周年。つまり40年分の厚いファン層が存在しているわけです。詳しい人がたくさんいるけど自分は全くの素人。
「鉄血のオルフェンズ」しか見たことのなかったガンダムにわかです。
内容について勘違いがありそうですし、アニメ以外にも小説やゲームなど色々展開されているので、そちらに触れないと分からない情報があるかも知れません。最終回まで見たものの、物語の背景まではよく分かってません。
この記事は普段萌えアニメしか見ない、ガンダムどころかロボットアニメもろくに見たことがない「にわか」が書いた感想として、生暖かい目で読んでいただけるとありがたいです。
映像
まず初代ガンダムの映像について思ったことを書きます。
40年前のアニメなので、確かに古い映像だなという印象は受けました。現在のアニメに比べると画面が荒い感じ。セルアニメ特有の画面のブレもあります。
でもおもろしろい。現代のアニメに比べると線が少なく大分単純な絵なのに、戦闘シーンが妙にかっこいいんですよね。派手さはそれほど無いものの、構図にしても動きにしても見ていて楽しいです。
ザクが攻撃するときに腰が入っていたりとか、独特の姿勢がいいですね。モビルスーツはスーツというだけあって人間みたいな動きをする所が面白いです。
キャラデザとか
キャラクターデザインは古さを感じさせない魅力がありますね。主人公アムロはイケメンってわけではないけど好感の持てる見た目。ちょっとカッコいいです。
女性陣もいい感じ。ミライさんはすごい母性を感じさせるし、フラウは生足が妙にえろいです。1話の爆発で吹っ飛ぶところはシリアスシーンなのにそっちに目が行ってしまいました。
あと、当時は規制が緩かったようで普通に乳首出してOKだったんですねぇ。子供も見るアニメなのにちょっと驚き。今時深夜アニメでも謎の光で覆われてますから。
それと何故かシャアのシャワーシーンがありますね。当時は腐女子みたいな方々に媚びる必要はなかっただろうに不思議です。
いや、もしかすると当時からいたんでしょうかね?ガルマとシャアの絡みってそっちの人たちに喜ばれそうな雰囲気があります。
あと、「鉄血」のマクギリスとガルマの元ネタってこの2人だったのですねぇ。「鉄血」には初代オマージュが多かったんだなぁと。見るべき順番が逆でしたね。
ガンダムという兵器について
次にガンダムという兵器(モビルスーツ)について思ったこと。ガンダムって序盤の時点ではチートレベルに強力な機体だったんですね。本編を見るまではせいぜい敵よりちょっと強い程度のメカだと思ってました。
でも実際にはザクを圧倒する性能。装甲が硬く飛び道具で攻撃されてもほぼ無傷、スピードが速く、ビームの威力も超強力。さらに教育型コンピュータによって戦う毎に強くなるらしいです。それがとても意外でした。
さすが連邦軍の最新兵器。素人が乗って無双できるのも納得の強さですね。あと、アムロがメカオタクと言う設定は、民間人なのに操縦できる理由付けになっていて、なるほどなと思いました。
序盤は圧倒的に強かったガンダムですが、敵のジオン軍も次々と新型の強力なモビルスーツを導入、話が進むにつれ性能差は縮んでいきます。
でもそれ以上にパイロットアムロが成長するので操縦能力で圧倒。終盤のアムロはシャアなんて目じゃないレベルに強かったですねぇ。
あと、ガンキャノンやガンタンクなるものが存在するのも知りませんでした。味方側はガンダムだけかと。なんかガンダムに比べて玩具っぽい色と形のメカですが、意外に活躍するんですね。
人間ドラマ
ファーストガンダム一番の見どころは、噂で聞いていた通り人間ドラマでした。子供向け販促ロボットアニメの形式を取りながら、中身はとても濃い人間ドラマになっています。大人でも十分楽しめる内容だと思います。
外見に騙されちゃいけませんねぇ。OP曲は子供向けの明るいロボットアニメみたいですが、本編の雰囲気は全く違いますし。
シャアとセイラの関係はとても印象的です。離れ離れになった兄と妹が敵対する陣営に属して戦争に参加しています。二人とも相手のことを、優しい人で戦争を嫌っていて軍人なるような人ではないと思っているのがなんとも切ないです。
戦いの怖さ
この作品ではハードな部分も隠さず描いています。ザクが民間人を虐殺するなど生々しい描写もありました。戦場で殺し合うことの恐ろしさや戦争によってもたらされる悲劇を何度も見せつけてきます。
ゲーム感覚の戦いではなく、命のやり取りをする生々しい戦いを描こうとしているように思います。子供が見るので極端に残虐な描写は無いですが、戦争って怖いなぁ嫌だなぁと思わせる描写は多いです。
敵味方ともに魅力的な人物が登場しますが多くは無残に散っていきます。なかなかシリアス。戦場では皆あっけなく死んでしまう。変に美化していないです。
勧善懲悪とは違う
何が正義か分からないという雰囲気が全編を通して漂っています。勧善懲悪ものとは一線を画しており、単純な善と悪には割り切れない現実世界の複雑さをそのまま取り入れているようです。
アムロたちにとって味方のはずの連邦軍も今ひとつ信用できない感じなんですよね。
ホワイトベースのクルーは連邦から半ば見捨てられており、新兵器を勝手に動かした罪で拘束されたこともありました。数々の修羅場をくぐり抜け、戦果が認められた後もおとりや実験台として利用される立場で扱いは良くないです。連邦の上層部はとても冷たい。
アムロたちにとって敵のジオンが極悪非道かといえばそんなことはない。確かに実権を握っているギレン・ザビに関して言えば血も涙もない残酷なやつですが、他のお偉いさんや一般兵士になるとなかなか人間味があって憎めない人が多いです。
先に戦争を仕掛けたのはジオンですが、宇宙植民者を抑圧し独立を認めなかった連邦側にも責任がありますし、単純にどちらか一方が悪とは言い切れないです。
連邦兵士が住民に乱暴狼藉を働いているかと思えば、敵のジオン兵が避難民に食料や物資を与える様子が描かれていたりします。立場に関係なく優しい人は優しいし、冷たい人は冷たい。その人次第ってことなのでしょうかね。
分かり合えるかも
ランバ・ラルやハモンはアムロが敵だと分かっても敬意を持って接していましたし、アムロの宿敵シャアも中立コロニーで出会った際には紳士的で、立ち往生した車を助けてくれました。
これらの場面に限らず、戦場では敵同士でも一人一人の人間としては仲良くできる、連邦兵やジオン兵という以前にみんな同じ人間なんだと思わせるエピソードが多いです。人間の影の部分だけではなく光の部分も描かれているように見えました。
争いを繰り返し悲劇を生み続ける人類だけど、もしかしたら分かり合える時が来るかもしれない。かすかに希望があるんじゃないかというメッセージを感じました。終盤に出てくるニュータイプという概念にもつながっていると思います。
登場人物の成長
キャラクターの成長物語としても面白かったです。
主人公のアムロはメカオタク。パイロットより技術者向きの人間に見えますが、成り行きでガンダムに乗ることになってしまいました。
生き残るためには乗って戦うしか無いという状況に追い込まれ、苦悩しながらも仲間のために戦う彼はまさに主人公です。
戦いたくないと言って乗るのを拒否する事もあったけど無理ないと思います。民間人の少年がいきなり前線で戦うんですから、本当に過酷な状況です。
乗るのを嫌がったり、実力を認めてもらえず脱走したりするアムロにリアリティを感じました。あんな状況で反抗せず素直に戦っていたらかえって不自然です。精神がおかしくなりかけるのも無理はない。
そんなアムロも尊敬できる人達に出会うことで成長していきます。しかし、その尊敬できる人達は片っ端から戦死してしまいます。ランバ・ラルもハモンも、マチルダも。
母親に再会すれば人を殺められるようになったことを嘆かれるし、父親は生きていたけど酸素欠乏症で頭がおかしい人になっていました。
何から何まで過酷な状況なんですよね。主人公に厳しい作品。
でもへこたれること無く、大切な人との別れを乗り越えるごとに強くなっていきます。精神面だけじゃなくガンダムパイロットとしても。そしてついにニュータイプの才能が開花します。
カイは憎めないやつ
元々不真面目な性格で戦争に参加することにも消極的だったカイ。ホワイトベースを降りようともしていました。
彼の気持ちも分かるんですよね。望んでもないのに軍人にさせられ、いつ死ぬかも分からない戦いを強制されるなんて嫌ですよそりゃあ。その状況を受け入れてしまっている仲間に違和感覚えるのも分かりますよ。
機会があれば降りようと思うのは、いたってマトモな考えだと思います。悪く言えば協調性の無いやつですが、雰囲気に流されない一歩引いた冷静な視点を持っているとも言えます。
また、カイはチャラいようでいて子供や苦労してる人には同情的なんですよね。ミハルに出会うくだりを見て思いました。実は結構優しい。ホワイトベースに乗るまではどういう生活してたのか気になりました。家族や兄弟はいたのでしょうか。
ミハルという心を許せる人に出会い、ちょっと浮かれていたカイでしたが、彼女は戦闘中に不慮の事故で亡くなってしまいます。
カイは嘆き悲しみ、犠牲になったミハルや戦争のせいで苦しい生活を強いられている彼女の兄弟のような人がこれ以上増えないよう、早く戦争を終わらせなければならないと強く決意します。
こうしてチャラくて憎まれ口ばかり叩いていたカイにも、積極的に戦わなければならない理由ができてしまったんですよね。彼の場合は成長したと言うより覚悟を決めたと言ったほうがいいのかな。
終盤の展開
リアルな人間ドラマが続くと思いきや、終盤はファンタジー色が強くなります。アムロたちは戦闘を繰り返すうち特殊な力に目覚め、ニュータイプと呼ばれる存在になるのですよね。
ニュータイプという言葉を聞いたことはありましたが、ここまで凄い能力だとは。オカルト的というかサイケというかなんかもう別の作品になったような映像も入って驚愕です。
また、戦争中心の話ではなくなり、登場人物同士の関係や人類の未来など、内面的だったり抽象的だったりする話がメインになります。
作風に変化があったおかげか、ダレることがなく終盤はとにかく次が気になる展開で最終話まであっという間に見られました。
メカ同士の戦いでは終わらず、ガンダムから降りて直接切り合いするとはなかなか。予想外の展開の連続でとても楽しかったです。
犠牲者がたくさん出る悲しい物語でしたが、最後はこれ以上無いってくらいのハッピーエンドでとても救われた感じがしました。
たまたま同じ船に乗り合わせ、生き残るため仕方なく協力してきたクルー達だけど、長い戦いを経ていつの間にかかけがえのない家族のような存在になっていました。両親と決別したアムロにも帰る場所があったんですねぇ。
「機動戦士ガンダム」は、語ろうと思えばいくらでも語ることがある作品ですね。本当に色々な要素が入っていて濃い物語でした。
キンパツエース
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