強引な展開と不条理な結末 – 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』2期感想

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『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』2期(26~50話)、dアニメストアで視聴完了。

ネット上では「クソアニメ」だの、「ガンダムシリーズ中最低の作品」だのと散々に叩かれていますが、思ったより酷くなかったですね。酷くないどころか結構楽しめたし、色々なことを考えさせてくれる良い作品だと思いました。

でもやっぱり終盤の展開はいただけません。もう少しなんとかならなかったのかな? 2期終盤はクソアニメと言われても仕方ない出来だと感じました。

心理描写など細かい部分は良かったのですが、物語の流れが雑で、不条理極まりないオチになっていました。

協力が得られないのは想定外

マクギリスが後先考えない無能キャラになった44話から、全てが狂い始めたようです。

伝説の機体ガンダム・バエルを手に入れさえすればギャラルホルンは自分に従うと思い込み、他の策を一切考えないままクーデターを決行。当然ながら有力者の協力は得られず、少数の信奉者と鉄華団だけで強大なアリアンロッド艦隊と戦う羽目に。

「彼らの協力が得られないのは想定外だった」という迷言には苦笑しましたよ。こんなお馬鹿キャラじゃなかったでしょマクギリスって。

そしてそんな馬鹿の巻き添えになって壊滅する鉄華団……。滅びの美学を描きたかったようですが、滅びへの持って行き方が残念すぎる。そのせいで一切美しさが感じられず、ただただ滑稽な滅びになっていました。

アリアンロッド艦隊に戦いを挑んだマクギリス革命軍&鉄華団ですが、最初から多勢に無勢。マクギリスと鉄華団は見せ場もなく一方的に追い詰められていきます。

さらに、数で圧倒しているアリアンロッド側が、最強のチート兵器ダインスレイヴを使うという理不尽な展開に。モビルスーツや戦艦を簡単に倒せる最強の爪楊枝って……。強いほうをさらに強くしてどうするのよ。

百歩譲ってチート兵器の登場は良しとしても、勿体をつけるべきでしょう。あっさり使いすぎ。

そもそも、あの状況で違法兵器を使ってラスタルの立場は大丈夫なのでしょうか? 相手側に忍び込ませたスパイに先に使用させ、「報復のため使った」と言い訳してはいるけど無理があるのでは?

準備万端ですぐ打ち返せたのが不自然に思われるでしょうし、優勢な状況で違法なものを使うことに味方は納得するのかな?

ラスタルは鉄華団を叩き潰すことが犯罪の抑止力になるなどと言っているけど、そんなもの使ったら自分らが犯罪者になるじゃん。ギャラルホルンの権威失墜ですよ。違法な代物を大量に出してきても糾弾されないくらい腐敗しているのかな、ギャラルホルンは。不思議で仕方ないです。

どうせならバエルをもっと強い設定にするとか、マクギリスが馬鹿にならず秘策を使うとかで鉄華団サイドを活躍させてほしかった。アリアンロッド艦隊を追い詰めたところでダインスレイヴが出てきて押し返されるという展開のほうが盛り上がったと思います。ラスタルが違法兵器を使う大義名分もできるし。

止まるんじゃねぇぞ…

次に有名なオルガ団長死亡シーンについて。

このシーンは本当に唐突で取って付けたような印象でした。事務的に退場させられた感じで、感動も余韻もなかったです。そりゃネタにされるわけだ。

主役死亡エンドは決定済みだけど最終回まで話数が残っていない。尺を使わずに始末するにはどうしたら良いかな? そうだ、フミタンやラフタの時みたいにヒットマンにやらせとこ!

……っていう感じの安易な発想にしか思えません。制作陣にとっては便利なキャラでしょうね、ヒットマンは。

終盤がつまらなくなったのは、全部同じ理由だと思いますよ。要するに尺が足りなかったせい。そのせいで展開が強引になったのでしょう。

結末は決まっているけど尺があまり残っていない。なんとか50話で終わらせるために帳尻を合わせる必要がある。見せ場なんて作っていたら尺が足りなくなるから、マクギリスの脳みそを減らし悪あがきを出来なくする。そしてチート兵器とヒットマンを使い無理やり主人公達を始末し、サクッと終わらせる。

2期の前半で、地球の紛争やモビルアーマー戦など、本筋と関係が薄い話に尺を取りすぎましたね。1クール丸ごと使ってクーデター編をやっていればマトモな話になったかもしれません。

制作陣が全体像を描かず、行き当たりばったりで作った結果がコレなんじゃないでしょうか。

強引にハッピーエンド

最終回の後半パートで無理矢理ハッピーエンドっぽく終わらせたのも不条理でした。鉄華団主要メンバーはそれこそ意味もなく命を落としたのにね。

クーデリアは、鉄華団の皆のおかげで良い世界になったように言っているけど、冷静に考えると鉄華団ほぼ関係ないでしょ! 彼女が自分自身を納得させるため、こじつけてるようにしか聞こえん!!

実際、世界が良くなったのはラスタルが突然(都合の)良い人になったおかげ。火星を独立させ、ギャラルホルンを民主的にしただの、ヒューマンデブリ禁止条約に署名しただのと。

いや、何急にキャラ変わってるのよ。ラスタルにとってはそうする必然性がないでしょう。伝統や秩序を重んじるキャラだったじゃん。どんな心境の変化があって改革なんてしようと思ったんでしょう。

心変わりの伏線も全くなかった。ラスタルは秩序のためなら暴力上等、鉄華団のような人間は宇宙ネズミ呼ばわりで差別対象だったのにな。ハッピーエンドにするため、無理やりキャラが捻じ曲げられたようにしか見えませんよ。

それ以前に何をしたいのかよく分からん人物なんだよなラスタルって。秩序が好きみたいだけどそれ以上の深掘りがない。人物描写を重視している本作で彼だけは内面がほとんど描かれていない。そこをしっかり描いてくれていたら、結末も納得できたかもしれないですけど。

そもそもラスタルって行動に一貫性がない気が……。そのため、制作陣の都合に合わせて動く便利キャラにも見えます。ヒットマンと同じく話を畳むための舞台装置にすぎないのかも。

あと、無理やり良い話に持っていくくらいなら鉄華団全滅、クーデリア死亡エンドのほうが筋が通っていて、個人的には納得できたと思います。

どうせならラスタルは最後まで、強権的支配で人々を苦しめる悪人でいてほしかった。というか実際、本編内では非人道的なことを散々やってましたからね。コロニー編で労働者を虐殺したり、自作自演で紛争を起こしたりする汚い奴こそラスタル。

でないと彼と戦った意味ないでしょ。この終わり方だと、普通にマクギリスが頭を下げてお願いすれば改革してくれたみたいな流れじゃん。マクギリスが目指していた改革を何故か反対派の敵がやってくれましたって……ひたすら不条理だなぁ。

あとがき

終わり良ければ全て良しの逆をやってしまったのが『鉄血のオルフェンズ』だと思います。終わり方が酷かったせいで全体が駄作扱いされてしまう。

2期終盤と1期コロニー編以外は十分面白かったのにもったいない。

王道から大きく外れたキャラクター達やハードな世界観、映像も声優の演技も音楽も素晴らしい。それなのに終盤の強引な展開が全てを台無しにしてしまった。要素要素を見れば高品質だっただけに、本当に惜しい作品だと思います。

◆関連記事:2期のキャラに対する不満など – 『鉄血のオルフェンズ』2期感想パート2

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