『異世界スマホ』アニメ2期制作決定と再評価について

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なろう系アニメ『異世界スマホ』こと、『異世界はスマートフォンとともに。』のアニメ2期制作が決定したようです。

外部リンク:アニメ『異世界はスマートフォンとともに。』第2期制作決定 お祝いイラスト&声優コメント公開 | ORICON NEWS

2017年夏に放送されたアニメなので、放送から5年近くが経過しています。このタイミングで突然2期制作が発表されたのは少々意外でした。

ただ、2022年現在のなろう系アニメを取り巻く状況を考えると、2期が作られる事自体に大きな驚きはないですね。

なぜなら、当時は最低のクオリティだと思われていた『異世界スマホ』と同等、あるいはそれ以下のクオリティのなろう系アニメが量産されていますし、国内での評判が微妙で円盤がほとんど売れていない作品であっても、バンバン2期が作られるようになっているからです。

どうも、低予算で作って海外向けに配信すれば十分利益が出るらしい。なろう系アニメは、中国をはじめアジア圏で大人気だとか。

中国の動画配信サイト(bilibili)では、シリーズ累計で1億回以上再生されたなろう系アニメが何作もあるようです。単純に人口が多いというのもありますが、日本産アニメの他ジャンル作品と比べても再生数が多いみたい。

なろう作家(【回復】の人)も、海外配信の重要性を繰り返しツイートしてました。

続編が作られる作品の傾向

続編が制作されるなろう系アニメは、大きく2つに分類できると思います。

非常に人気の高い作品

1つ目は、なろう系の熱心なファン以外からも評価されている、超人気作品ですね。

これは分かりやすい。従来から言われていた続編制作ラインの通り、円盤が5000枚以上売れていることが多いですし、グッズも豊富に出ています。

具体的に例を挙げると、『Re:ゼロから始める異世界生活』『この素晴らしい世界に祝福を!』『転生したらスライムだった件』など。

安く作った作品

2つ目は、比較的マイナーながらも低予算で作られた(と思われる)作品です。大して話題にならず、円盤売上1000枚未満で、グッズもほとんど出ていないのに、続編が作られるなろう系アニメは少なくありません。

おそらく配信が好調だったからなのでしょうけど、先程挙げたメジャーな作品と比較すると再生数は少なめ。それでも続編が作られるのは、制作に掛かるコストが低いからだと思います。

意外なことに、続編制作が決まったなろう系アニメには映像クオリティが低い作品も多い。作画が不安定だったり、動きが極端に少なかったりします。一部を除いて、見るからに金が掛かっていないアニメばかりという印象です。

例えば、今年(2022年)のエイプリルフールに2期制作が発表され、ネタなのか事実なのか分かりづらかった『進化の実~知らないうちに勝ち組人生~』なんて、OP・EDですら作画が崩れていると言われていました。

筆者は序盤の数話しか見ていませんが、とにかく低予算感がすごかったですし、まるで数十年前のアニメのような古臭い雰囲気でしたよ。過去に作ったアニメを寝かせておいて今放送したのだと言われたら信じてしまうレベル。

その程度のクオリティのアニメでも2期が作られるんですよね。まあ、ネタアニメとしては楽しめるという意見も目にしましたが……。

『進化の実』のアニメはまさに、コストが低いから商売になる(利益が出る)パターンだと思います。原価が安いから、大きな売上を出さなくても黒字になるやつですね。

エンドロールを見ても、メインスタッフを除き、多くが海外の方でした。つまり、映像の大部分がコストの低い国外スタジオによって作られたということなのでしょう。

また、『異世界スマホ』と同じく原作小説がホビージャパンから出ていて、アニメスタッフもほぼ同じである『神達に拾われた男』も、2期制作が決定しています。この作品も円盤売上が1000枚未満でした。

『神達に拾われた男』は全話視聴しましたが、作画崩壊こそしないものの動きが非常に少ないアニメでした。映像ではなく、セリフやナレーションで状況を伝えていくタイプの作品でしたね。

正直言って、十分な予算があったとは思えない作りです。動画を極力減らし、静止画に音声が流れるだけのシーンを多用すれば、制作費を大きく抑えられるのでしょう。

この2作品を見て分かるように、制作費を極限まで抑えることができれば、配信でそこそこ再生されるだけでも十分に利益を出すことが可能みたいです。

『異世界スマホ』は、5年前のアニメとはいえ円盤売上が1000枚を超えていますし、良くも悪くも知名度は高いので、続編もある程度の再生数が期待できそうです。

さらに制作コストも低そう。1期の映像はお世辞にもクオリティが高いとは言えない出来でした。おそらくこれも海外発注中心の低予算アニメなのだと思います。

すなわち『異世界スマホ』は、「そこそこの再生数が期待できる」&「低予算」という2つの条件をクリアしています。したがって、続編が制作されることに不思議はありません。商業上合理的な判断だと思います。

個人的に見たいかどうかは別問題ですけどね。

なろう系の象徴となった『異世界スマホ』

『異世界スマホ』は、なろう系の中では比較的アニメ化が早かった作品です。

そして、ネガティブな意味での「なろう系」の存在を世に知らしめた作品と言っても過言ではないでしょう。

なんだかんだ言って、『異世界スマホ』以前にアニメ化されたなろう系作品は、コテコテのなろうテンプレからは外れた作品ばかりでした。

『異世界スマホ』1期(2017年夏)以前にアニメ化されたなろう系(なろう産)アニメは以下の通り。

    • 2013年『ログ・ホライズン』
    • 2014年『魔法科高校の劣等生』
    • 2015年『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『オーバーロード』
    • 2016年『この素晴らしい世界に祝福を!』『Re:ゼロから始める異世界生活』
    • 2017年『ナイツ&マジック』『異世界食堂』

これを見ても分かるように、小説家になろう出身であっても、なろう特有のノリを前面に出してはおらず、従来のラノベアニメの感覚で見れる作品が多かったように思います。

そこに突如として現れた『異世界スマホ』は、小説家になろうをよく知らないアニメファンたちを驚愕させました。

強力過ぎるチートと、主人公を盲信し賛美するヒロインたちによるハーレム。ご都合主義的で、行き当たりばったりなストーリー。サイコパスの疑いをかけられるほど良心に欠け冷淡な主人公。それに加えて、崩壊寸前の乱れた作画。

それらは衝撃的で、なろう系とはこういうものだという強烈なイメージを視聴者に植え付けました。

この作品は、なろう系の存在をライト層に知らしめると同時に、「なろう系アニメ=チープかつ支離滅裂でつまらない」という偏見を持たれるきっかけを作った、最初の作品だと思います。

先程挙げた『異世界スマホ』以前の作品を「なろう系だから」という理由で揶揄する人は少ないですからね。

また、なろう系作品やその主人公が、「〇〇太郎」と呼ばれるようになったのも本作がきっかけです。匿名掲示板で、本作の主人公・望月冬夜くんのことを「スマホ太郎」と呼んだ人がおり、その語感のよさ、使いやすさから流行しました。

なお、特定の作品を「〇〇太郎」呼びすることを快く思わない者もおり、トラブルの原因になるので、現在では、無闇に使うべきでない表現だと考える人もいるようです。

『異世界スマホ』再評価の流れ

なろう系アニメが氾濫した結果、原点と言える『異世界スマホ』は意外に悪くなかったと考える人が増えているようです。

当時、これより酷いアニメはなかなか現れないだろうと思われていた『異世界スマホ』でしたが、その予想はすぐ裏切られることになりました。

『異世界スマホ』放送以降もなろう系作品は次々とアニメ化され、特に2019年以降「なろう系アニメ化ブーム」と呼べるような状況になります。

いまや、1クールに複数本のなろう系アニメが放送されるのが普通です。

ただし、原作人気が非常に高い一部の作品を除いて、少ない予算で「原作の宣伝になればよい」という考えでアニメ化されているように見えます。出版社にとっては、アニメという形になってさえいればクオリティはどうでもよいのでしょう。

まさに粗製乱造という感じで、作画レベルが極めて低いなろう系アニメが大量生産された結果、『異世界スマホ』も飛び抜けて作画が悪いアニメとは言えなくなりました。

また、作画だけではなく、ストーリーの再評価も進んでいるようです。

なろう系作品のストーリーは特殊で、精神的ポルノと呼ばれるような、読者・視聴者(≒主人公)を気持ち良くすることのみに特化した、ご都合主義的展開になりがち。

加えて原作小説は、連載当時に流行っていたテンプレに則って書かれることが多いです。

したがって、近い時期に書かれた作品が次々とアニメ化されると、展開が似たりよったりのなろう系アニメが大量に出回ることになります。

その結果、ご都合主義かつ支離滅裂な展開は、『異世界スマホ』に限った特徴ではなく、なろう系作品に広く見られる特徴(テンプレ)だと理解されるようになりました。

同時に『異世界スマホ』は、なろう系特有の描写が比較的マイルドだったことも理解されました。本作以降「イキり」や「ざまぁ」をより過激に描写し、耐性がない人は強い嫌悪感を抱くような作品も増えましたからね。

このように比較対象が増えた結果、相対的に『異世界スマホ』の評価が上がっているのです。

『異世界スマホ』の相対的に良い点

なろう系に共通する要素がはっきりと認識されたので、『異世界スマホ』ならではの個性や良さも分かりやすくなりました。

主人公の冬夜くんは、視聴者からサイコパス呼ばわりされるような人物ですが、あまりイキることはありません。イキるシーンが全くないとは言いませんが、後にアニメ化されたなろう系作品に比べれば大分マイルドです。

噛ませ貴族や、イジメっ子同級生を陰湿にいたぶる描写もなかったですね。まあ、毒を盛った悪徳貴族をスリップさせたりはしてましたけど……。

冬夜くんは無感情でサイコな感じが強く、「ニチャア」とイキる感じではないですね。怖いけど不快感は少なめ。

また、後にアニメ化されたいくつかの作品のように、転生前にオッサンだった主人公が、常識知らずで幼稚な振る舞いをする痛々しいシーンはありません。冬夜くんはもともと未成年の学生(16歳)ですしね。

さらに、社会や陽キャに対する憎しみや復讐心、自分の真価を認めない組織に対する怒りみたいなものも感じられません。追放系や復讐系なろうには、怨念でドロドロしている作品も多いですが、『異世界スマホ』はサラッとしてます。

良くも悪くも無味乾燥って感じ。プレーンですよね。あまり変な味付けやえぐ味がない、シンプルなテンプレなろうという印象。

ただ、不快感や刺激が少ない分、ネタ性もあまりないですね。脚本の高橋ナツコ氏のオリジナルセリフ「まるで将棋だな」くらいでしょうか。

ストーリーに起伏がなく全体的に薄味な展開なので、他のなろう系アニメを体験した今見返しても、やはり眠い作品ではあると思います(※個人の感想です)。

過剰さがないからなぁ……。酷さが突き抜けているタイプではなく、ひたすら平坦で限りなく「無」に近い感じ。

ただ、リラックスするために見る層の気持ちが、今なら分からんでもないです。寝る前にぼーっと眺めたらいい夢が見られそう。

1期の引っかかるシーン

そうそう、『異世界スマホ』1期には、個人的に引っかかっているというか違和感が消えないシーンがあるんですよね。

「まるで将棋だな」のセリフがある第3話の、古代遺跡で謎のモンスターと戦闘しているところです(再生時間で言うと17:34あたり)。

倒したと思ったモンスターが突然再生。鋭い針のような腕でエルゼ(双子の姉)の胸部を突き刺します。

体から大量の血が吹き出し、エルゼは苦悶の表情を浮かべるのですが、次のカットでは涼しい顔で全力疾走し、ジャンプなどをしつつ敵の攻撃を避けてるんですよね。

ここ、なんか変じゃないですか?

大量出血して苦しんでいる所を見せた直後なのに、元気に動き回れるのは状況的におかしいですし、絵のつながりにも違和感を覚えます。

これ、本来は順番が逆で、「全力疾走で何回か攻撃を避けたけど最後の一発は避けきれず食らってしまった」というのをやりたかったのでは? スタッフもミスに気づいたけど直す余裕がなかったので、走るシーンの服に血を描き足すなどして、ごまかしたのか?

まあ、中途半端な修正をしたと考えるのも、それはそれで変なんですけどね。編集で順番を変えればいいわけで、一から描き直すわけでもないですし。

ただミスじゃなかったとしたら、それはそれで不思議な演出センスということになります。致命傷になりかねない強烈な攻撃を食らった後に、キレッキレの動きで回避行動を取るのはやっぱり変ですよ。

一度食らってるんだし、今更走り回って避けるシーンを見せられるのは違和感がすごい。なぜこのような流れになったのか真相が知りたいです。

おわりに

このタイミングで2期が決定したのは、ホビージャパンの売りたいなろう系作品のアニメ化が一通りが完了したからなんでしょうかね?

ホビージャパン作品なら『百錬の覇王と聖約の戦乙女』の2期も見てみたいです。原作もまだまだ続いてるらしいですし、あらすじを読む限りでは、アニメ化以降の展開も結構面白そうなんですよね。

『異世界スマホ』2期のスタッフはまだ発表されていませんが、1期のスタッフが独立して設立した「MAHO FILM」が作ることになるのかな?

できれば脚本は高橋ナツコ氏に続投してもらいたいですね。「まるで将棋だな」を上回る名ゼリフを期待しています。

もし別のスタッフになったとしても、それはそれで新しいテイストの『異世界スマホ』が見られそうなので、悪くはないと思います。

 

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