2021年冬のなろうアニメ『俺だけ入れる隠しダンジョン』全話視聴後の振り返り感想です。
作品概要
アニメ本編を見ていない方のための軽い説明です。
物語の舞台はスキルやレベルが存在するゲームのような異世界ですが、転生ものではなく異世界人が主人公。
主人公は、どんな質問にも答えてくれる「大賢者」のスキルを使い、隠しダンジョンを発見。中に入ると、鎖に繋がれている女性がいました。彼女はオリヴィアという名の一流冒険者だったのですが、罠にかかり200年間封印されていたようです。
オリヴィアは主人公に強力なスキル3つを与えます。「創作」「付与」「編集」という、スキルを作ったり、人や物に与えたり、作り変えたりすることができるスキルです。
それらのスキルを使う際にはLPというものが消費され、0になると死んでしまうので、幸福感をLPに変換し補充する必要があります。LPは「性欲」「食欲」「物欲」のどれかが満たされることで回復するという設定。
そんな感じでチート能力を手に入れた主人公が、学校に通ったり、冒険者をやったり、隠しダンジョンを攻略したりしつつ、幼馴染などの女性たちからモテモテになり、LP回復の名目で気持ちいいこと(性的なサービス)をしてもらうというお話です。
スケベでおバカな内容で、シリアス要素はほぼありません。頭を空っぽにして見る作品です。
なお、「食欲」「物欲」でLPが回復するシーンはほとんど存在しません。基本的に「性欲」で回復します。
変なところ
内容が珍妙すぎたせいでネット上で話題になり、散々突っ込みを入れられている本作ですが、ここでもう一度おかしな点について書いてみます。
話が支離滅裂
話に筋が通っていません。なろう系作品ではよくあることですし、筋が通っていなくても面白い作品はあるのですが、この作品の場合、筋の通らなさが度を越しています。
整合性というものが存在せず、ボーッと見ていても突っ込みどころが目に付きますし、真面目な考察を拒むような山積みの矛盾点が存在します。
その時思いついたエピソードを適当につなげて話が作られている感じが強く、主人公が以前の行動と矛盾することをしていたり、数分後に矛盾する設定が出てきたり、問題を解決するため無駄に回りくどい行動を取ったりします。
登場人物の言動に一切の合理性が感じられず、見ていると頭が混乱してきます。この支離滅裂感は他ではなかなか味わえないものです。もはや物語というより、狂った世界を見て楽しむ作品という感じ。
また、LPやレベルに関する設定には一貫性がなく、その場のノリでコロコロ変わるので、見ている方は振り回されて疲れます。
クズなのに善人扱いを受ける主人公
主人公ノル君の第一印象は最悪。罪のない父親を上から目線でなじるシーンが1話冒頭に入るので、好感を持てるはずがありません。
しかしそれは序の口。話数が進むごとに主人公のえげつないクズ加減が明らかになっていき、評価は下げ止まることを知りません。善良そうな見た目に反し、中身は相当なゲス野郎だったという。
主人公は彼のことを本気で愛している幼馴染のエマを、LP回復や頭痛緩和の道具として利用。口先では幼馴染を大事にしているようなことを言うのですが、実際には他の女性たちと普通にイチャイチャ。エッチなサービスを受け、いやらしい表情を浮かべています。
幼馴染とはまだ恋人同士じゃないので、他の女に手を出しても構わないと考えている模様。散々キスをせびっておきながらそういう考えを持っているところが何とも嫌な感じです。
「ヒロインたちは自分を喜ばせて当然」みたいに考え、彼女たちの気持ちに一切配慮しないところにクズさを感じます。
性欲に忠実なスケベキャラとして扱われるなら良いのですが、作中ではなぜか純情で誠実な好青年という扱いなんですよね。
そして、大したことをしていないにも関わらず周囲から絶賛されます。周囲の認識をバグらせるスキルを隠し持っているのでは?と疑ってしまうレベルのおかしさです。
さらに、主人公本人も自身のことを善人だと思っている感じ。自身のやってきたことを棚に上げ、ブーメランにしかなっていない理屈で他人を批判する滑稽なシーンを何度も見せられ、呆れてしまいました。
あと、なろう主人公にはありがちですが、サイコパスの疑いがあります。笑いながら幼馴染の胸を縮めたり、涼しい顔でゴブリンを毒殺したりするところは怖かったですね。
ヒロインが都合のいい人形
主人公はエマの思いを踏みにじるようなことを散々しているのに、彼女は全然気にしていない様子。不誠実な行為に怒ってもいいはずなのに、主人公好き好き~のままで、好感度が下がる様子はありません。
また、他のヒロインたちも出会った瞬間主人公に惚れ、何もしていないのに好感度がMAXに。とても不条理な感じですね。何故惚れたのか納得させてくれるような描写は一切存在しません。
主人公を喜ばせるために神様(作者)によって設置された、魂の入っていない人形のような感じで怖いです。
別にリアルな女性を描けとは言いません。フィクションですし、ある程度なら男に都合のいいよう作られたキャラでも許容できる。でも本作のヒロインはやり過ぎだと思います。
まさに主人公称賛マシーン。主人公に奉仕するための肉オナホ。自分が今まで見たなろう作品の中でもトップクラスで内面が感じられないヒロインたちでした。
主人公と関わらないシーンではまあ可愛らしいけど、主人公と関わると急に思考がおかしくなり、接待人形と化します。
主人公に都合のいいように記憶を改変し、やってもいないことで主人公を褒めたりするので、狂気さえ感じます。やっぱり主人公のスキルか何かで操られているんですかね?
エロ描写が中途半端
エロが売りの作品のはずなのに大してエロいシーンがありません。
キス、耳舐めに始まり、せいぜい胸を押し付けられる程度。乳首は見えないですし、当然合体なんてしません。この程度では、18禁コンテンツに触れることのできない中高生さえ喜ばないんじゃないかと。
エロに関しては同季(2021年冬)放送のなろうアニメ『回復術士のやり直し』に負けています。あちらは各話に合体シーンが入っていました。(地上波放送版は黒塗り等の修正あり。有料放送と円盤は無修正。)
そこまで過激にしろとは言いませんが、エロが売りならもう少し頑張ってほしかったですね。なお、『俺ダン』のヒロインたちも好感度MAXなので、主人公が頼めば喜んで……。
ハーレム自慢大会
5話に登場。「モテない男たちがハーレムの女の子に点数を付け誹謗中傷する」という存在自体が謎の大会です。そっちの活動家じゃなくても女性蔑視だと言いたくなるような危うい描写があり、話題になりました。
まず大会の存在の意味不明さに頭が痛くなり、次に女の子への罵詈雑言を聞いて気分が悪くなるという誰得展開。
主人公とそのハーレム要員をアゲるために他の人物が不当に貶められている感じで、見ていて気分の良いものではありませんでした。
良かったところ
批判はおしまい。ここからは評価できる点です。
キャラデザが魅力的
ヒロインの外見は非常に可愛いですし、ひと目見ただけでキャラの区別がつく秀逸なデザインだと思います。キャラごとの色の使い分けも上手だなぁと感じました。
キャラデザだけで勝負したら、なろうアニメの中で上位に入れると思います。
声優が豪華
若手からベテランまで人気声優を揃えてきたなという印象。声優に詳しくない自分でも知っている有名な方ばかりでした。声優目的でこのアニメを見た人も多いかもしれません。
幼馴染エマ役は『ガヴリールドロップアウト』の主人公や『異種族レビュアーズ』のクリム役の人。聖女ルナ役は『まちカドまぞく』の千代田桃や『鬼滅の刃』の禰豆子役の人です。
個人的には、ローラ役とオリヴィア役が『ゆゆ式』に出ていた声優さんだったのがちょっと嬉しかったです(このお二方は『異世界スマホ』にも脇役として出演)。
EDが名曲
コアラモード.の「ネモフィラ」は、切ない青春もので流れそうな素敵な曲。おバカな本編とのギャップが大きかった。支離滅裂な本編の後に流れるこの曲に癒されました。
ちなみにネモフィラの花言葉には「あなたを許す」というものがあります。ある意味作品内容と合っていると思いました。エマちゃんは主人公にどんな酷いことをされても許してあげるもんね~。
作画がまあまあ良い
終盤にかけてガッツリ崩れた回もありましたが、それ以外はまあまあ見れる作画でした。
作画が不安定な回でもメインキャラだけは綺麗に描かれていたのが良かったです。
ネタアニメとしては楽しめる
世の中には、見ても一切感情が動かず、視聴完了後に何も残らない虚無アニメというのが存在しますが、本作は違います。
おかしな展開や設定の矛盾が次々に発生するので、それらに突っ込みを入れながら見ると結構楽しめました。女の子の見た目と声は可愛いですし。
おわりに
本編を忘れ、公式サイトなどに掲載されているキャプチャ画像だけを見るとすごく印象が良いです。ヒロインは可愛いし、主人公のノル君も善良な青年に見える。絵の雰囲気も楽しげです。
ビジュアル面では悪くない作品なんですよね。
ストーリーが支離滅裂なのも問題ですが、一番の問題は主人公の言動が不愉快なことだと思います。
ネット上で「令和の伊藤誠」呼ばわりされ、「最後に報いを受けた分誠のほうがマシ」と言われるのもよく分かります。
散々好き勝手やるくせに一切報いを受けないどころか褒められまくるノル君には怒りしか湧きません。そんなクズ主人公に簡単に惚れるヒロインたちの魅力もだだ下がりです。
どうやれば誠みたいな結末を迎えることになるか考えてみたのですが、エマちゃんがノル君を刺すような展開が想像できないんですよね。度を越したチョロインなので何をしても許してくれそう。他のヒロイン全員を孕ませても笑顔で許しそう。
多分本作はノル君の気持ちになって見れば楽しいのでしょうけど、彼に感情移入するのは難しい…。
アニメという媒体ではなく、プレイヤーが主人公に限りなく近いVRゲーム等で、本作のヒロインたちに色々してもらうのなら楽しいかもしれませんね。