2020年冬アニメ『防振り』こと、『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』を第3話まで見たので感想を書きます。
なお原作は未読です。
作品について
この作品は無駄に長く説明的なタイトルからも分かるように、近頃人気の「なろう系」というやつです。
なろうっぽい商業ラノベ(『百錬の覇王』や『お母好き』)も出ていますが、これの原作は「小説家になろう」に投稿されている正真正銘のなろう小説。
なろう系のアニメ化ブームが来ていますが、本作のアニメ化もその流れの一環なのでしょう。
女性主人公
なろう系といえば異世界などに行ってチートで好き放題する作品ばかり。どれも似たりよったりなのですが、あえて『防振り』の特徴を挙げるなら主人公が女性であるという点。
「スマホ太郎」こと『異世界はスマートフォンとともに。』を筆頭に、なろう系アニメの主人公はみんな男性でしたが、2019年後半あたりから女性主人公のアニメも作られるようになりました。(例:『本好きの下剋上』、『私、能力は平均値でって言ったよね!』)
女性主人公のなろうアニメにはまだ目新しさがありますね。
VR
本作は異世界転生ものではなく、バーチャルリアリティもの。主人公の楓はゴーグルなどの機械を身に着けゲームの世界に入り込みます。映画で言うと『レディ・プレイヤー1』みたいな感じ。
ただ、ゲームの世界観は、よくある剣と魔法のRPG系。他なろう作品の異世界とあんまり違わない感じ。導入部分を変える(トラックを出す)だけで簡単に異世界転生ものにできそう。
個人的には転生ものよりゲームもののほうが闇を感じないので好きですね。
転生ものだとどうしても現実の過酷さが意識されてしまう。現実が辛いから死んで生まれ変わりたいという闇が見えてしまうのでキッツいです。
あらすじ
長いタイトル『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』で説明されている通りです。
主人公の楓は友人の理沙に誘われ「NewWorld Online」というVRMMO(バーチャルな多人数参加型オンラインゲーム)をプレイすることに。
痛いのが嫌ということでステータスポイントを全て防御力に振ってしまい、攻略に苦戦するのですが、幸運が重なって最強の防御力とスキルを手に入れ、ゲーム内で一目置かれる存在になります。
一言で言えば、ちょっと納得できないようなご都合主義で最強になる展開。
3話まで見た段階では特に大きな目的のようなものは明かされず、友人と楽しくゲームをしているだけの日常系的な内容が続いています。
このまま最後までダラダラとゲーム内で遊んで終わりそう……。
気になった所
ここから感想に入ります。まず気になった所から。
酷いクソゲー
ネット上、配信サイトの感想欄などで散々指摘されているので今更書くまでもないのですが、本作の舞台になるゲーム「NewWorld Online」というのは相当なクソゲーですね。
ゲームバランスがおかしいってもんじゃない。どんだけ無能な運営なんだ。
何もせずただ攻撃を受けているだけで強くなるし、簡単に耐性が獲得できて毒が無効化される。
それだけならまだしも、ダメージが通らない相手も食べれば倒せるというトンデモ設定はいかんでしょ。
1話の毒竜戦。メイプル(ゲーム内の楓)は攻撃力が低く毒竜にダメージを与えられません。どうしようもないので噛み付いてみたら何故か傷をつけることができ、そのまま食べて倒してしまいます(ついでにレアな装備をゲット)。
こんなことができるゲームってどうなんでしょう。ステータスも何も意味がない。
しかも主人公だけ強くなるというのは謎ですよね。他のプレイヤーも同じことをすれば簡単に強くなれるはずなので、主人公だけ突出して強いというのは不自然。
敵を食べて倒せるのも主人公だけなのかな?主人公だけ運営の何者かによって優遇されているという伏線の可能性も?
痛みがあるの?
タイトルの通り、痛いのが嫌だから防御力を強化したようです。
ここで疑問が。
バーチャルリアリティっていうのは分かるけど、痛覚まで再現されてるんですかねぇ?
もし痛みあったとしても、ゲームだからあまりひどい痛みは感じないように作られてるんじゃないのでしょうか?
頭と手に機械を装着してたけど、全身に痛みが出るようになってるのかね?神経に接続されているのか?もしくはダメージを受けた時に電気でも流す?
舞台は現実の日本じゃないのだろうし、突っ込んではいけない所なのかもしれないですけど……。
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独り言が激しい
主人公の楓(ゲーム内ではメイプル)は、妙に独り言が多い。
今の気持ちとか、これからしようと思っていることを全て口に出して説明。誰も聞いてないのに大きな声でアナウンスしてくれる(メタ的に解釈すれば視聴者に語りかけてるのだろうけど)。
何から何までセリフとして言ってしまうから不自然極まりないし、常に独り言を言っているのでちょっと頭のおかしい子に見えてしまう。
友人がログインしてくるまでは単独行動で、会話の相手がいないから仕方ないのかもしれないけど……。
あと、原作が小説だからというのもあるのかなぁ。
ただ個人的には心の声にしてくれたほうが良かった。不自然さが減るし、口パクを描く手間も省けるように思います。
盾である意味がない
メイプルはデカい盾を持っていますが、これを盾と呼んでいいのか疑問です。
触れるだけで敵を倒せる(消せる)盾。それってもうただのチートアイテムじゃん。盾の形をしてはいるけど本質的には別物だよねそれ。
毒ガスまで出すしなんて禍々しい……。
防御力だけ高い主人公が色々工夫して戦う話だと思ってたけど違ったみたいです。よくあるチートものだったのね。
主人公は誰?
2話で友人の理沙がサリーとして合流。それ以降、メイプルの活躍シーンが減り、サリーが前面に出て活躍するようになります。
まだ3話なのでこれからどうなるか分かりませんが、まるで主人公が交代したように見えました。
漂う狂気
楓は女性ですが、キャラのメンタリティは従来のなろう系男性主人公に近い。特にスマホ太郎こと望月冬夜との共通性を感じました。
そこはかとなくサイコパス臭を漂わせています。決して邪悪な人物ではないのですが、共感性が低く目的のためには手段を選ばない感じ。ニコニコ笑いながらえげつないことができてしまう。
ゲームの中とはいえ、毒ガスを撒き、逃げ惑うキャラを電気で麻痺させて倒すというのはエグい。2話のこのシーンは結構おぞましい絵面でした。それを嬉々としてやっているのは怖いですよ。
天然キャラと言うこともできるけど、何をしでかすか分からない怖さがありますね。
あと、友人が怖がっているお化けを見てもなんとも思わない所も気になりました。モンスターにダメージを与えられないなら食べてやろうと考える所などには狂気を感じます。
可愛らしい見た目に反して結構変なやつです。
なろう系特有の弱点
3話まで見ましたが、まだ主人公の大きな目標が示されていません。このまま目的もなくダラダラとゲーム世界を冒険して終わりそうな予感がします。
今まで見たなろう系アニメは大体そういうパターンでした。
強大な力を手に入れるけど、特に何かしたいわけではなく、適当にあちこちを旅して、いきあたりばったりのイベントを消化していくだけ。
うーん、そういうのが好きな人がいるのは否定しませんが、これではドラマが生まれないですね。解決すべき問題が最初から存在しないので、続きを見たいと思えないのもマズい。
緊張感がなく間延びした展開で見ていて眠くなります。体感時間が倍以上になったりもする。
1話は普通に見られましたが、2話、3話は結構きつかったです。再生速度を上げないと途中で脱落しそう。
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良かった所
ケチをつけてきましたが、ここからは良かった部分を書きます。
主人公たちのモブ感
楓と理沙は地味な髪色・髪型でモブキャラにしか見えません。でもそれがいい。
地味さが逆に新鮮でした。
モブかわっていう言葉があるくらいで、萌えアニメの場合、意外とモブキャラが可愛かったりするんですよね~。
モブっぽい外見のキャラがメインで活躍するのは嬉しい。
イキリがない
主人公にサイコパス感こそありますが、イキったり不快なムーブをしないので気持ちよく見れます。
絵が綺麗
作画にやけに気合が入っているように感じました。
これまでのなろう系アニメは低予算で、とりあえず原作の宣伝になればいいという感じの作品が多かったです。作画も予算相応のテキトーさでクオリティ低め。
そんななろうアニメの中で、本作は相当丁寧に作られている気がします。何故そこまで気合を入れるのか不思議に思うくらい出来が良い。
ストーリーはよくあるなろう系だけど絵は見応えがあるという。
特に3話の戦闘シーン(サリーが大きい鹿と戦う所)は素晴らしかったです。こんなかっこいいアクションがなろうの萌えアニメで見られるとは。
このシーンからは、アニメ版『賢者の孫』11、12話のアクションと同じような印象を受けました。構図というか雰囲気が似ている。
両作品ともアニメーション制作がSILVER LINK.なので同じスタッフが描いているのかも?
ちなみに『賢者の孫』は初回と最終回あたりだけ作画が良かったのですが、残りは微妙でした。コーヒーカップの珍妙な並び方がネタにされてましたね。
あと、手描き部分が良いだけでなく3DCGも自然に溶け込んでいていい感じでした。『ありふれた職業で世界最強』の不自然なCGモンスターとはぜんぜん違う。あれは酷かった。
おわりに
まだ3話ですが全然続きが気にならないアニメでした。心躍る冒険にはなりそうにない。
絵とキャラは良いので視聴継続するか悩むところです。