2021年夏アニメ『チート薬師のスローライフ~異世界に作ろうドラッグストア~』を4話まで見た感想です。
原作は「小説家になろう」で連載されていたWeb小説で、書籍版、コミカライズ版が出ています。
筆者はこの作品のタイトルを初めて見た時、チート薬師(やくし)だと勘違いし、「仏教系なろうとは珍しい!独自性があるな!!」と考えてしまいましたよ。
実際には「くすし」読みで薬師如来は関係ありません。
「チート創薬スキルで望んだ薬を簡単に作れるぜー」という、なろうでは割とありがちな設定でした。アニメ化作品で言うと『聖女の魔力は万能です』や『回復術士のやり直し』の主人公も薬作りが得意でしたね。
アニメーション制作はEMTスクエアード。なろう系作品では『くまクマ熊ベアー』を作った会社ですね。
あと、『百錬の覇王と聖約の戦乙女』の作画崩壊が有名。とても面白い崩れ方をしたので話題になりましたね。高橋ナツコ氏の超ダイジェスト脚本も尋常ならざるもので、個人的にネタとしてはメチャクチャ楽しめたアニメでした。
あらすじ・作品概要
『チート薬師』のあらすじを書きます。
現代日本で社畜をしていた主人公「桐尾礼治」は、気づいたら異世界の森にいました。
「鑑定・創薬」のスキルを持っていたので回復薬などを次々製造して一儲け。スローライフを送るためドラッグストアをオープンさせます。
なお、この導入部分は本編で描かれていません(4話時点)。公式サイトなどのあらすじに書いてあるだけ。
アニメ1話は、すでにドラッグストアが開店している状態から始まるので、本編を流し見するだけでは主人公が現代日本からやってきたことに気づかないかもしれません。(一応ナレーションで元社畜、現異世界人と説明されてはいます。)
店を開いた後の展開ですが、主人公は助けた人狼の女の子「ノエラ」や、家に住み着いていた美少女幽霊「ミナ」と共同生活。悩みを抱えた人々が店にやってくるので、彼らのためにチートで薬を作ってあげるという話になります。
主人公の目的はスローライフという点からも分かりますが、劇的なストーリーは存在せず、大きなイベントも発生しません。淡々と日々の生活を描く日常系と言えるでしょう。
また、1話の中に短編が数本入っている形式です。
全体的な感想
突っ込みどころは多々ありますが、女の子たちが可愛らしいので、ぼーっと見る分には十分楽しめるアニメだと思いました。
特に人狼の娘ノエラが愛くるしい。小さな子どものような無邪気さが微笑ましいです。ノエラの口癖である「美味の味」という若干文法的におかしい表現も、彼女の幼さや無垢さを象徴していて良いですね。
性的なアピールをしてこないところも評価できます。主人公の恋愛対象やハーレム要員ではないので安心して見られますね。可愛いけどエロくはないのがイイ。
主人公の性処理道具としての獣人キャラは他なろう作品で何度も見たのでもう十分だ…。
ちなみに『回復術士のやり直し』の主人公は娘ポジションの狐キャラを食ったらしいです。たとえ血がつながっていなかったとしても娘ハメ展開は嫌悪感を催すのでNG。もし今後主人公がノエラに発情するようなシーンがあったら視聴をやめます。
あと、アニメーション制作が『百錬の覇王』の所なので作画を心配していましたが、いまのところは問題ありません。ふんわり温かい色使いと、柔らかい感じの絵柄で雰囲気は良好。
キャラの表情が豊かで楽しげです。ノエラの尻尾の動きも好き。ちゃんと動いてますよ。
日常系として見る分には悪くない作品だと思いました。個人的に主人公が男性である点は少々マイナスですけどね。
ただネット上の評判は、筆者が観測した範囲ではそんなに良くない感じ。異世界に迷い込んだ経緯やノエラとの出会いがカットされたことに文句を言っている人が多いという印象です。
良改変かも?
個人的に導入部分をカットしたのは悪い判断ではないと思います。
なろう系が好きな視聴者はテンプレを知っているので、わざわざ描写しなくても理解できるからです。
異世界に飛ばされるパートなんてどの作品でも似たようなものですし、いまさら見たくもないでしょ?(※個人の意見です)
また、現代知識を利用して薬を作るという内容ではないので、主人公が現代日本人だったという情報の重要性は低い。ナレーションからその設定が読み取れなくても作品の理解に支障はありません。
さらに、なろう系に詳しくなくテンプレを知らない人は、日常系作品の一種として視聴できるので問題ないと思います。下手になろうらしさを前面に出さないほうが見てもらいやすいのでは?
漫画版1巻を読んだので導入部は知っているのですが、主人公は異世界に来たことを超速理解し、もう嫌いだった仕事をしなくていいんだーとか言って大喜びしてるんですよね。その後には、おなじみの「ステータスオープン」があります。
この流れをなろう好き以外の人が見たら、ちょっと引いてしまうのではないでしょうか?
なろう系初心者は、「なんで現世に未練がないの?家族や友人はいないの?」とか、「ステータスがオープンできるなんてゲーム世界なの?」という疑問を必ず持つと思います。
世界観に関する疑問で頭が一杯になり、作品を楽しめなくなるかもしれませんよ。
そういうわけで、異世界に来た経緯をカットし、なろうっぽさを薄め、日常系に偽装したのは正しい判断だと思います。
一般アニメファンから「うわっ、これがなろうか…キモッ!」と思われ1話切りされるのを回避できる良改変ではないでしょうか?
まあ、タイトルに「チート」が付いてるだけで一部視聴者は敬遠するかもしれないですけどね…。
媚薬3P問題(4話)
突っ込みどころその1。
このアニメは、なろう原作の割になろうっぽさを感じさせない作風です。過度の主人公礼賛や、「ざまぁ」要素はありません。こういうなろうアニメも悪くないなと思いながら見ていました。
子ども向けアニメみたいな雰囲気で、脇役男性キャラのデザインも柔らかい。深夜アニメっぽさを感じさせません。休日の朝に放送されていても違和感がないような絵面とストーリーです。
ちょいちょい引っかかる部分はあったけど、性的な描写はないし平和でいい話だったんですよね、3話まではね…。
それだけに4話で唐突に下半身ネタをぶち込んできたのには驚きましたよ!
ざっくり書くと、媚薬を誤って飲んでしまった女性たちが発情して主人公に迫るという内容です。流石に合体シーンは描かれませんでしたが、性的関係を持ったとも解釈できるような描かれ方でした。
子ども向けアニメに見せかけて不意打ちでやるもんだから、若干吐き気を覚えました…。
(※本文とは無関係です。他意はありません)
落差が大きすぎ。媚薬3Pが来るとは思わなかった。
確かに『回復術士のやり直し』などに比べれば、この程度のお色気要素どうということはないです。でも、このアニメにそういうのを求めてなかったので違和感が凄かった。
ちなみに主人公は貴族の娘から惚れ薬を作るよう頼まれた際、キッパリ拒否してたんですよね(3話)。なんで今回は作っちゃうのよ…。相手が大人ならいいのか?
まあノエラが加わらなかっただけマシですね。発情したのは成人(だと思われる)キャラだけでした。
異世界に作ろうドラッグ(意味深)ストア
突っ込みどころその2。
主人公は創薬スキルを使い、現代日本で作ったら逮捕されるような薬を作ります。麻薬とか覚○剤の類ですね。
エナジー(猛烈)ポーション
疲労回復、覚醒作用があると説明されているのですが、飲んだ人の反応を見る限りでは、かなり強力なアッパー系ドラッグのようです。
老いてヨボヨボの大工さんがこの薬を飲んだら急に元気になって、素手で材木をへし折ったりしてるんですよね。脳をリミッターを破壊し、限界まで力を出せるようにしたのでしょう。
大工さんはこの薬のおかげで、半年かかると思われていた屋根の補修をあっという間に終わらせました。
どう見ても栄養ドリンクの域を超えています。ヒ○ポンをさらに強力にした感じ。
しかも依存性がすごい。多くの異世界住民がこの薬の虜になっています。人目を盗んで飲みまくっているキャラもいるほどです。
ランデンフラワー茶
こっちはダウナー系ドラッグですね。情緒不安定で病的に嫉妬深い女性に飲ませるとあら不思議、別人のごとく穏やかになりました。
いや、ナイフ持って暴れまわっていた人が大人しくなるって、効き目が強すぎるでしょ。大丈夫なのこれ?人格歪めてないですかね?
主人公は「睡眠不足が原因で情緒不安定になっていたから眠れるお茶を処方した」みたいなことを言っていたけど、睡眠不足であそこまで狂わないでしょう。きっと別の病気ですよ。
結局ヤクの効果で無理やり大人しくしたようにしか見えん!それにお茶じゃなくてドラッグでしょアレは。リラックス効果と呼ぶには効きすぎのような…。
ロクショウのソース
主人公が森で助けたリスが、お礼として持ってきてくれた希少な木の実がロクショウ。それを原料として作られる幻のソースです。
なお、このソースのレシピを知っていた料理人は、あまりの旨さにソースを食べすぎて他界したと語られています。やべぇよ…依存性だけではなく致死性まである薬物なんですね。
そんなわけでレシピが失われており誰も作れなかったのですが、主人公のチート創薬スキルで難なく再現に成功しました。
そのソースを馴染みのレストランに提供すると大繁盛!
美味しいとかいう次元じゃないですよねこれ…。依存性のある麻薬成分が入ってるからでしょ。
ちなみに現実でも依存性の薬物を料理に混ぜた事例があります。客を軽度の薬物依存症にしてリピーターを増やすのが目的。中国の話ですが、複数の飲食店がケシ果皮の粉末を料理に使用していたようです。もちろん違法なので摘発されました。
粉状にしたケシを麺やスープ、焼き魚や鶏の唐揚げに練り込んでいたんですって。ケシはアヘンの原料になるやつなので相当ヤバい。
『チート薬師』の話に戻ります。
前述のように、レアなロクショウの実はリスがお礼に持ってきてくれたのですが、ノエラがすべて食べてしまいました。
そこで主人公たちは再び森へ向かい、リスがいそうな場所に例のエナジーポーションを置いて帰ります。すると、ガンギマリ状態になった(と思われる)リスが実を大量に持ってきてくれました。
主人公の発言によれば、ポーションを提供したのはリスへのお礼らしいです。いい話みたいに描かれているけど地味に鬼畜の所業なのでは?「きっと喜ぶ」というノエラのセリフにうっすら狂気を感じました。
そりゃ喜ぶでしょうよ…脳内物質ドバドバだもん。動物まで薬漬けにするとはね。そもそもリスみたいな小動物に飲ませて大丈夫なんですかね?刺激が強すぎて心臓止まるんじゃないの?
薬物で異世界征服
主人公は街の人々から感謝されていますし、良いことをしているみたいに描写されています。しかし実際にはヤク中を増やしているようにしか見えない。
本心では異世界人を薬漬けにして支配してやろうと思ってるんですかね?薬がなければ生きられない身体にして、継続的にお金を搾り取るのが目的か?
タダでポーションを配っているのは怪しい。初めは無料で提供し、依存させてから値段を吊り上げるのはドラッグディーラーのやり口ですよ。
たとえ主人公に異世界を征服する意図がなかったとしても、事実上主人公に支配されてるようなもの。異世界人にとっては危険な侵略者以外の何者でもない。
この異世界の支配者が誰なのか知りませんが、早く対処しないと大変なことになりますよ。医薬品業界は既に主人公によって牛耳られてます。
依存性の強い薬を野放しにすると「ビミノアジー」を連呼する廃人が徘徊する世界になってしまうゾ。
おわりに
子ども向けアニメのように平和な雰囲気なのに、主人公が麻薬カルテルまがいのことをやっているギャップがエグいですねぇ。静かな狂気を感じます。
でもノエラはとても可愛い。ミナはノエラにとって歳の離れたお姉さんという感じで微笑ましい。
頭を空っぽにして女の子を眺めている分には楽しいアニメでした。ざまぁやイキリはないので、なろう系が苦手な人でも見れそう。日常系アニメが好きな人は試しに見てみる価値アリです。
緊張感のあるストーリーはありません。淡々と日常生活を描くだけなので、そういう作風が苦手な人は楽しめないかもしれません。