※この記事は2022年に投稿した、アニメ版『失格紋の最強賢者』の各話感想(1~6話分)を一つの記事にまとめ、加筆訂正したものです。
ネタバレがあります。また、批判的な感想も含まれますので本作のファンの方はご注意ください。
第1話「最強賢者、現る」感想
2022年冬のなろうアニメ『失格紋の最強賢者』第1話を視聴しました。噂によると、原作ファンがアニメの改変に腹を立てているらしい。
筆者は原作未読だからか、特に違和感はありませんでした。ツッコミどころは多いものの、なろうアニメの中では比較的悪くない出来だと思ったんだけどなぁ……。
原作について
『失格紋の最強賢者』の原作は「小説家になろう」にて連載されたWeb小説。アニメ化されるくらいなので、もちろん書籍化・コミカライズ済み。
原作には、サブタイトルとして『〜世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました〜』が付きます。
原作者は進行諸島先生。『転生賢者の異世界ライフ』もアニメ化されています。「弱すぎって意味だよな?」で有名なアレですね。同じ作者の作品だったとは、アニメ化発表まで知りませんでした。
第1話のあらすじ
1話のあらすじを簡単に説明すると、転生した主人公マティアスがヒロインに出会い、試験を受け学園に入り、学園に潜んでいた魔族を倒すというものです。
初っ端から展開が速かったですね。これだけサクサク進んでくれると逆に見やすい。眠くなる暇がありません。
では、ここからは気になった点について書きます。
軽いノリで転生
この作品世界の住人は生まれつき紋章を持っていて、手の甲に浮き出るという設定。冒頭、主人公は自分の持っている第一紋ではこれ以上強くなれないことを悟り、転生することを決意します。
なろうでは気軽に転生しがちですね。命が軽いと言うかなんというか……。Web広告で「よし、転生する!」みたいな軽いノリで転生する漫画をよく見かけたけど、あれは何の作品だったっけな?
なお、原作やコミカライズの読者によると、冒頭の世界観説明や転生を決意した経緯が一切カットされているらしい。筆者は原作未読なので、めっちゃカジュアルに転生しているように見えたけど、実際にはそれなりの理由があったみたいよ。
話によれば、宇宙怪獣が攻めてきたときに迎撃できないと困るので転生したらしい。それはそれで意味がよく分からんけど……。
可愛い?主人公
12歳の少年に転生した主人公は、声も見た目も女の子みたいです。少し可愛いかも?
ただし、大きな魔物を瞬殺してイキったり、鍛冶屋ですごい剣を作ってイキったり、なろう恒例イベントである的当てで過剰な威力の魔法を放ってイキったりします。……やっぱ可愛くなかったわ。
結局いつもの調子に乗ったナローシュ(なろう系主人公)でした。可愛らしいのは声と見た目だけ。
まぁ、エグいことやっても『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』みたいに、主人公が可愛い女の子だったら許される場合もあるからね。主人公を女の子っぽくしたのは戦略的にアリなんじゃないかな?
なお、やることなすこと全てテンプレ通り。なろう作品に触れたことのある人なら分かると思いますが、周囲の人間はやたらめったら主人公を褒め称えます。主人公を接待するために作られた世界って感じ。
無自覚系っぽいところもキツイですね。『賢者の孫』の「またオレ何かやっちゃいました?」的なやつ。主人公本人は「大したことをしていない」と思っているけど、周囲の凡人基準では「とんでもないことをしている」ので驚愕されるという。
ただ、本作の主人公は本当に無自覚というわけではなく、分かってやっているようにも見える。そういう見方をすると、力をひけらかすただの嫌なやつなんですよね。
チョロイン
ルリイという金髪美少女が本作のメインヒロインのようです。しかし、出会いのシーンの既視感がすごい。主人公と彼女の関係性は、『賢者の孫』の主人公とメインヒロイン(シシリー)のそれを彷彿させます。
お互い初対面で一目惚れ。ヒロインのほうはいきなり「彼氏はいません」とか言い出すし、チョロすぎるよマジで。
ルリイは大人しく自己主張の弱いタイプで、なんというか、主人公を全肯定する都合の良い操り人形的ヒロインですね。こういう所も『孫』のメインヒロインとよく似た感じ。
それにしても、なろう系作品では「見た目だけ」で相思相愛になる描写によく遭遇します。一目惚れが悪いとは言わんけど、「中身よりも見た目が大事」というなろう愛好者の世界観が感じられなくもない。
まあ、多くのなろうヒロインには内面が存在しないので、見た目で選ぶのも間違いじゃないかもしれんが。
精神年齢の謎
主人公が照れて顔を赤らめるシーンが何度もありますが、転生したら精神年齢も若くならなきゃだめなのかね?
月夜涙先生の作品『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』のジジイも、転生したら10代前半の娘に欲情してたし……。なろう系では転生すると精神まで少年になるという暗黙のルールでもあるのか?
なろう的お約束に慣れ親しんでない人にとっては違和感がすごそう。あと、精神年齢をガキにしちゃうと転生設定が半分くらい無意味になりそう。
世界観の謎
次に世界観の不可解な点に関して。ネット上で散々指摘されているので、特に気になった部分についてのみ書きます。
まず、なぜか無詠唱魔法が廃れてる件。主人公が教えれば学生でもすぐ使えるようなのものなのに、魔族の情報操作程度で廃れるものなんでしょうかね? 一応説明のシーンはあったけど納得がいきません。
あとは魔族がいちいち回りくどい点。人間そっくりに擬態できるのに直接要人を暗殺をしたり、国の中枢に潜り込むことはせず、デマを流布するだけ。なんか効率悪くね?
ニコ動のコメントで『チャージマン研!』のジュラル星人みたいと言われてたけど、まさにその通りですよね。
そのほか細かい部分だと、学生に紛れていた魔族の名前が「デビリス」だったのには笑いました。すっげぇ悪魔っぽい名前なんですけど。人間そっくりに擬態しても名前でバレるやろ! そこは偽名にしておけよ。
公式サイトのキャラ紹介にアルファベット表記が載っていますが「Devilis」ですからねぇ。しっかり「Devil」が入ってるじゃん! キャラ一覧だとなぜが「Debilis」になってるけどね。正しい表記はどっちだ?
まあ、『失格紋』の世界ではデビルが悪魔って意味じゃないのかもしれないですけど……。安直なネーミングだとギャグ作品っぽく見えてしまうのが難点。
第1話の良かった点
第1話だけでの評価ですが、作画は悪くなかったですね。あと、ヒロイン(や主人公?)の見た目は可愛らしいし、時々挟まれるデフォルメの顔もいいじゃん。
ストーリに関しては若干のばかばかしさを感じつつも、退屈せずに見れるのはいいんじゃない?
なろうアニメには超薄味で一切感情が動かない虚無系がありますし、突っ込みどころは少ないものの、そこまで面白くもなくコメントしづらい作品があります。
そういうのに比べれば、まあ、楽しめる方だと思いました。コッテコテのなろうテンプレをネタとして見る分には結構面白い。
転生の詳しい経緯や転生後の幼少期が省略されたことに怒っている人がいるようですが、原作未読の筆者としては、これくらいテンポが良いほうが見やすいです。
アニメ化する場合、細部の描写が犠牲になり世界観の把握に難が出たとしても、テンポを上げてくれたほうがありがたい。
原作に忠実に描いた結果序盤の展開が鈍足になり、面白くなる前に初見の人が離脱してしまっては本末転倒だと思います。
媒体(メディア)によって向いている表現が違います。世界観などの細かい説明には文章のほうが向いています。
対して映像作品であるアニメで長々と世界観や設定の解説をされると退屈で見ていられません。下手をすればモノローグばかりになり、映像化する意味が薄れます。
また月夜先生作品を例に出しますが、『回復術士のやり直し』のアニメ版は、メディアに合わせた取捨選択がうまく出来ていたと思います。
もし原作に忠実に映像化していたら、説明過多で冗長になってしまったでしょう。アダルトシーンに力を入れるため、小難しい設定の説明や魔物肉を食って能力値を上げる描写をカットしたのは英断です。
(痛覚耐性の説明は入れたほうがよかったかもしれんけど。)
映像作品であるアニメは、小説や漫画に比べ「動き」の表現が得意なので、アクションシーンを中心に抽出し、動きのないシーンを少なめにするのは間違った判断ではなさそう。それは本作『失格紋』にも言えます。
原作ファンは「説明を省略し過ぎでアニメを見ても良さが分からない」と言いますけど、「アニメで興味を持った人が原作を読んで世界観の理解を深める」という流れでいいのでは?
アニメが作られる目的って、基本は原作と漫画版の販促ですし。
第2話「最強賢者、迷宮(ダンジョン)へ。」感想
第1話は、主人公が人間に擬態していた魔族デビリスを倒したところで終わりましたが、2話はその直後から始まります。
第2話のあらすじ
国王に謁見しダンジョンの資源利用権を与えられた主人公が、魔族対策に必要なアイテムを手に入れるため、ヒロインたちとダンジョン探索に向かうという話です。
では、次に第2話の気になった点について書いていきます。
グイグイ来るヒロイン
いきなり主人公に抱きつく金髪ヒロインのルリイ。
距離が縮まるのがはえーよ! 出会ってまだ間もないのにベタベタしちゃってさぁ……。なろうあるあるとはいえ、軽く引きました。
このヒロイン、意外に押しが強いですね。ボディタッチも多い。大人しそうに見えたけど、実は肉食系なのかも。清楚系ビ◯チってやつかもしれません。
なんか色々軽い感じですよね。もし主人公より優れた男が現れたら、すぐそっちに乗り換えそうな印象を受けました。
まあ、なろう系なのでそんな展開はありえないですけどね。主人公より優れたキャラの存在は許されないですし、ヒロインは絶対服従がスタンダード。
万一裏切るようなことがあれば、復讐対象にされ過剰な報復を受けることになりますね。こわいこわい。
無能国王?
国王に謁見した主人公は、魔族討伐の褒美として「全ダンジョンの資源利用権」を要求します。
いや、全ダンジョンってあまりにも要求が大きすぎるでしょ。流石に欲張りすぎでは? 第3話で判明するのですが、この王国は小国ではなく、現実世界で例えるなら少なくともアメリカ合衆国程度の広さはあるんですよね。
主人公本人も「大きくふっかけて」いることを認識しているのですが、国王は「そんなことでいいのなら、いくらでも許可する」と、事もなげに承諾してしまいました。
いやいやいや!重大な利権をそんな軽々しく与えちゃダメでしょ!下手すりゃ主人公に国を乗っ取られるぞ……。少なくとも、一介の学生に与えていい利権じゃない。
なんかこの国王は、「自国の資源の価値が理解できない無能」として描かれているんですよね。
さらに国王は、魔族はいなくなり平穏が訪れたと早合点します。主人公が倒したのは魔族一体だけですし、他に隠れていた魔族が失踪したことも知っているのにね。
残った魔族が攻めてくる可能性を一切考えていないなんて、思慮が浅すぎでしょ……。今まで国が滅びなかったのが不思議ですよ。
この作品も例のごとく、主人公を活躍させるために周囲の知能を低下させているように感じます。知能デバフというやつですね。なろう系作品では時折見られる状態です。
転生後の世界の人間は、国王に限らず無能になりすぎなんですよ。校長も主人公に言われるまで、魔族が攻めてくるという考えを持てていませんでした。大人が頼りなさすぎる。
極めつけに国王は「我々にできることは何もない」と責任放棄し、主人公に「魔族対策の準備を一任する」と言い放ちます。いや、主人公と学生たちに国を守らせるってどういうことなのよ?
王の家来は何をしているんでしょうね? 人材が全くいないのか? 軍隊は存在しないのでしょうか? やっぱり、この国が今まで滅びなかったのが不思議ですよ。
魔族も無能?
国王が無能だと書きましたが、魔族の方も無能っぽいんですよね。お互い無能だから均衡が保たれていたのかな?
魔族は人間世界に数百年もの間入り込んでいたのに、誤った魔法知識を流すだけで直接攻撃を仕掛けることは無かったようです。
主人公の話によれば、魔族は結集すると王国を滅ぼせるほどの戦力があるらしい。そんなに強いんかい!
それなのにコソコソ隠れてデマを流すだけって意味が分かりません。主人公が現れるまでは正体がバレず人間社会に入り込めていたのだから、いくらでも内側から攻撃するチャンスはあったでしょうに。
早めに攻めておけば主人公に結界を張られることもなく、容易く人類を滅ぼせたのにね……。なぜ数百年も待っていてくれたんでしょうね?
まあメタ的には主人公に倒されるためなのですが、それを言ってはいけません。
前世の俺Sugeee!
主人公が宝物庫を見て回ると、前世の自分が作った強力なアイテムがありました。ただし、無能な現代人には価値が分からないので使えない武具扱いされています。
なにこれ……全ての事象は主人公に関係しているんですかね? それとやっぱり周囲が無能化されている。
本当に主人公が気持ちよくなるためだけに存在している世界なんですね。なろう系作品にはそういう傾向があるけど、本作は極端です。
ダンジョンデート?
足手まといになるから……と気乗りしないヒロインたちを説得し、ダンジョンへ連れていく主人公。
3人の得意分野が違うのでパーティのバランスが良い……みたいなことを言ってるけど、主人公は強すぎるから一人で十分でしょ? パーティ組む意味ある?
ヒロインたち自身が言った通り、足手まといにしかなっていない感じでしたよ。結局ボス戦では彼女たちを避難させ、主人公一人で戦ってましたし…。
まぁ、今後の戦いにそなえて、彼女たちに経験値稼ぎをさせたかったんでしょうね。
あと、可愛い女の子とダンジョンデートをしたいという下心もあったのでしょう。主人公は中身おっさんのくせして、未成年のヒロインにデレデレですからね。
第2話にはこの他にも気になるポイントがありましたが、全部書くとキリがないのでこの辺で終わります。
第3話からの感想は次のページへどうぞ。長すぎるとスマホで読みづらいと思ったので分けました。
過去にアップした6つの記事を統合した結果、合計で2万字以上になったので流石に1ページでは厳しいという判断です。