ガンダム『水星の魔女』第1クールの全体的な感想

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TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第1クール(1~12話)の感想です。約5年ぶりのガンダム新作TVシリーズで、SNS上でも大いに話題になっていました。

今回は全体を振り返りつつ、極力ネタバレがないように書いています。ただし、全く内容に触れていないわけではありません。まっさらの状態で視聴したい方はご注意ください。

久しぶりの新作

ちなみに約5年ぶりというのは、『鉄血のオルフェンズ』第2期の放送終了から5年という意味らしいですよ。『鉄血』は、2017年4月に最終回を迎えています。

また『水星の魔女』の放送開始には、『鉄血』の終了とともに消滅した「日5」枠の5年ぶりの復活という意味合いもあるようです。

オルガ団長の死亡シーンが原因ではないと思いますが、新作までかなり間が空きましたね。

5年も空いた理由が知りたいですよ。『鉄血』は、ネット上で執拗にネタにされたり叩かれたりしていましたが、実際のところ商業的にも駄目だったんでしょうかね?

とはいえこの間、ガンダム関連作品が全くなかったわけではないです。TVシリーズとしては『ガンダムビルドダイバーズ』がありました。

ただ『ビルドダイバーズ』は、宇宙世紀でもアナザーでもない特殊な位置づけの作品。ガンダムという兵器が実在する世界ではなく、ガンプラとして存在する世界の物語のようです。(筆者は未視聴なので詳しいことは不明。認識が間違ってるかもしれん…)

あと空白の5年には、映画『閃光のハサウェイ』が公開されましたね。カボチャのダンス(連邦に反省を促すダンス)は、本編を見ていない人も知っているくらい流行しました。

この作品は富野監督が大分前に書いた小説の映像化で、ファーストガンダムと同じ世界の話(宇宙世紀シリーズ)でした。『逆襲のシャア』の続編的な位置づけですね。

対して『水星の魔女』は、他作品とのつながりがない完全新作。久しぶりのアナザーガンダムという点でも注目度が高かったように思います。しかも初の女性主人公。脚本は『コードギアス』などで有名な大河内一楼氏です。

筆者も「これはみるしかないな」と思いました。

第一印象

本編に先行して公開された前日譚「PROLOGUE」を見た時点では今一つ魅力を感じませんでした。

というより、第一印象は良くなかったです。「すげー悪趣味でやだなぁ」と。幼児に人殺しをさせ「ろうそくみたいでキレイだね」と言わせたり、実の父を含め多くの人が死んだ戦闘の後でハッピーバースデーを歌わせたり……。

今回のガンダムはそういうやつなのかと。こういうのを見て歓喜する層が存在するのは知っているけど、個人的には苦手なタイプの表現でした。

また、この時点では誰だか分からんおっさん(デリング)の演説も意味不明で上滑りしてるし、「なんじゃこれ」という印象。

わざわざ研究所を襲って皆殺しにする理由も不明。視聴者にインパクトを与えるために、無駄に残酷で悪趣味な描写をしているようにも感じました。

新技術の倫理問題を口実に研究員を皆殺しにするとか、そっちのほうがよっぽど倫理的に問題あるでしょ。逮捕するとかではなく、いきなり武力行使ですし、『鉄血』に引き続き今回もスペースヤクザモノなのかと思ってしまったよ……。

まあ、本編を見てから振り返れば、その描写もある程度意味が分かるのですが。

おそらく、新技術(GUNDフォーマット)によってアーシアン(地球居住者)が力を付けることを恐れたスペーシアン(宇宙居住者)が、将来の反乱の芽を摘むために襲撃したのでしょう。「PROLOGUE」内でもニュースのシーンで仄めかされてましたね。

倫理問題は単なる口実だったという。

とはいえ襲撃して皆殺しというのはやっぱり過剰な感じがします。デリングらスペーシアンはアーシアンに恐れをなしており、GAND技術を放置したらすぐにでも襲ってくると思っていたのでしょうか?

そもそもアーシアンは人間扱いされてないんですかね? いきなり射殺してもOKとか、法律はどうなってるんでしょう。酷く野蛮な世界ですよ。民間企業が私兵を使って好き勝手できる、ルール無用の世紀末的世界という認識でいいのか?

12話までの印象(1回目)

「PROLOGUE」を見て期待値が下がった状態で本編第1話を視聴。

こちらはかなり好印象でした。比較的明るい雰囲気ですし、主人公をはじめ登場人物は皆キャラが立っていました。テンポも良くて見やすかった。

あっという間にラストシーン。時間が短く感じましたよ。すごく練られたシナリオだなぁと。ラストの百合展開を期待させるキャッチーなセリフも良かったです。

ただ、巨大兵器を使った決闘を、隔離された闘技場ではなく普通に人がいるところで行っていたのは謎でした。「相変わらず野蛮な世界だなぁ」と思いましたよ。

第1話の展開は『少女革命ウテナ』のオマージュだと言われていますが、筆者は一昔前のファンタジー系学園ラノベを想起しました。石鹸枠と呼ばれている作品とかね。

あと、主人公に絡んできた嫌味な貴族をチート能力で返り討ちにしギャフンと言わせる展開は、なろう系学園モノでもよく見るやつです。本作のスタッフは新旧の人気作品を研究して、流行りそうな要素を取り入れているのかな?

この1話は、かなり念入りに、注意深く練られたシナリオのように感じましたよ。絶対に成功させてやるというスタッフの気合が入っているようでした。

第2話以降も怒涛の展開が続き、退屈する暇がなかった。第6話の最後にショッキングで後味の悪い展開があったものの、楽しく見れていました。

しかし、第7話以降はだんだん話に乗れなくなり、「まあまあ面白いけど、そこまででもないかな……」という感想に。決してつまらなくはないのだけど、いまいちピンとこない感じ。

会社づくりの話とか、メイン2人の謎のすれ違いと唐突な和解とか、うーんっていう。

また、例のウィルスによって制作現場が混乱していたらしく何度か放送延期が発生。第1クール最終話(第12話)は、年をまたいだ2023年1月の放送となりました。

その最終話も展開が強引だし、インパクトを重視しすぎで「なんだかな~」という印象。「PROLOGUE」を見たときの悪い予感が的中した感じ。ラストの悪趣味な演出には唖然としました。

ショッキングな描写が話題になり、SNSのトレンド上位に入っていたけど、バズりさえすればいいのかと思ってしまいますよ。

まあラストの展開自体は悪くないと思います。突き詰めればガンダムって人殺しの道具ですし、あの子が親に何らかの方法で操られていたことが明白になったのも良かった。

ただ、あの演出はないと思うんですよね。あまりにも下品すぎる。B級スプラッター映画かな? 話題性と引き換えに作品の格が下がってません?

最終話に対する文句は別の記事で詳しく書きたいです。

2回目の印象

最終話のせいで全体の評価が下方修正されました。「結局バズることが最優先の作品だったかよ! 序盤は最高だったのに、あの終わり方はないわ。ケッ!」と思いながら2回目の視聴を開始。「PROLOGUE」から見直しました。

すると意外にも、1回目ではピンとこなかった第7話以降の面白さが分かってきた。特に第9話が好きになりました。

ある人物が想いを寄せていた人(たち)に拒絶され、それがきっかけで非情になることを決断。悪い意味で大人になってしまう話で切ない。

根っからの悪人ではなかったのに、周囲から誤解された結果、本当に邪悪な人間へと舵を切ってしまうというね。

振り返ってみれば、この後の展開に影を落とすきっかけとなる重大なターニングポイントだったことが分かります。2回見ることで、初見時に見落としていたものが見えてきました。

よく見れば、この回以外でもキャラの心情がしっかり描かれてたのね…。結構エモいシーンも多かった(この点も別の記事で詳しく書く予定)。実は結構泣ける話だったんですね。

1回では分かりづらい理由

『水星の魔女』は情報量がかなり多い作品だと感じました。なんとなく見ているだけでは内容が飲み込みづらい。

学園での人間関係だけではなく、その背後にある企業間の関係も見ていかないと話が理解しにくいと思います。メインキャラは基本的に企業経営者の子供で、勢力争いが学園にも持ち込まれている感じ。

最低でも何々社の代表が誰で、誰の親かというのを把握しないと対立の構図が見えてこない。

終盤からは地球の勢力も登場しますし、学園側にも彼らとつながっている者がいたりと、更に複雑な状況になります。

また、これまでのシリーズにはなかった本作独自の設定や用語も多い。GANDフォーマットとか、パーメットとか色々独自設定が出てきます。

それらは作中で詳しく説明されません。セリフ等で軽く触れただけで話が進んでいくので、ガンダム初心者か否かに関わらず、1回見ただけではよく分からないような…。

筆者はよく分からなかったけど、みんなは1回で分かったのかな? 1回目は「これは誰の会社だっけ?」とか、色々考えながら見ていたので、他の要素を結構見落としてたよ。

一応、繰り返し見れば分かるようには作ってあるので、そこまで不親切だとは思わないですけどね。

ネットが普及した現代ならではの作りかもしれません。解説動画や解説記事が沢山出ているので、それらを確認しつつ見れば1回でも分かるかも。

まあ、なんとなく見てもそれなり楽しめるようにはなっていると思います。絵はきれいですし、戦闘シーンも迫力がありました。

そうそう、人物・組織関係の複雑さ以外だと、意図的に散りばめられた謎要素・考察要素がありましたね。

主人公の正体とか、母親の目的とかね。これに気を取られるとまた別の要素を見落としてしまうというね。やっぱ情報量が多くて1回では処理しきれんわ。

なお、上記の謎は回収されないまま第1クールが終わってしまいました。引っ張りますねぇ~。否応なく続きが見たくなる構成は上手い!

 

今回はこの辺で終わり。次はネタバレ有りで具体的に良かった点、気になった点を書こうと思います。

次回:良かった点、気になった点―『水星の魔女』第1クール感想Part2

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