ガンダム初心者がファーストに続き『Zガンダム』TV版を見た感想

『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)の続編『機動戦士Zガンダム』全50話の感想です。多少ネタバレがあるので未視聴の方はご注意下さい。

ちなみに筆者がZの前に見たガンダムシリーズは『鉄血のオルフェンズ』とファーストのみです。

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序盤の印象

『Zガンダム』は作品内の時間でファーストガンダムの7年後の話。Zガンダムの放送開始は1985年。ファーストが1979年~1980年放送らしいので現実の時間経過と割と近いですね。

オープニングテーマは大分今風になっていてオシャレな感じに。

ファーストガンダムの「も・え・あ・が・れ」と比べると隔世の感があります。10年も経っていないのに随分変わったなぁと驚くばかりです。


Z・刻を越えて/星空のBelieve/水の星へ愛をこめて/銀色ドレス (TV版 機動戦士Zガンダム主題歌)

映像のクオリティも高くなっています。絵の線が増えモビルスーツやメカの絵がよりリアルに。ファーストはいかにも古き良き時代のアニメって感じだったけど、急に現代的になりましたね。

続編とは言っても、主人公は新キャラでアムロをはじめファーストのキャラクターの大半は脇役になっています。

アムロは内気な主人公でしたが、Zの主人公カミーユはいい感じに狂っています。女みたいな名前と言われ激怒して殴りに行ったりするヤバいやつ。変な所でキレてすぐ手が出ます。

でも粗暴なだけの人間ではなく内面はとても繊細。正義感と純粋な心を持っていて世の中の理不尽さに必死で抗おうとします。

繊細すぎるため些細なことでも感情が一杯になってしまい、うまく処理できなくなった結果、暴力を振るってしまうように見えました。また、家庭環境に問題を抱えており荒れるのも仕方ない感じ。

序盤はファーストの冒頭を踏襲。クワトロ(元シャア)とその仲間達が主人公の住むコロニーに潜入、偵察。その後主人公が勝手にガンダムに乗り込むところまでは一緒です。

ただその後が違い、カミーユはひと暴れした後シャア達に協力し、ガンダムを奪って逃走。彼らの組織エゥーゴに加わり戦争に巻き込まれていくという展開になります。

これは予想外でした。私怨でガンダムに乗り込んで暴れた結果、えらいことになってしまうというのは意外で良かったです。

謎の暴力

一方、悪い意味で予想外の展開もありました。

むやみやたらと殴ったり殴られたりします。序盤ブライトさんが、ティターンズという威張り散らした連中にボコボコにされるのは衝撃的でした。

やりすぎってくらい殴るんですよね。なぜそこまで描写する必要があるのか首を傾げてしまいます。

ここに限らず意図が良く分からない暴力シーンが多い。過剰な感じがしてちょっと制作陣の狂気を感じました。病んでるように見えます。

モビルスーツ戦ではなく素手でボコボコにしたりされたり。生身での殴り合いがこれでもかってぐらいありました。

何かメッセージがあるんでしょうかねえ。モビルスーツに乗っていたら分からないけど、戦いや暴力というのは痛くて凄惨なものだぞっていう意味なのでしょうか。

毒ガスによる無差別殺人が行われたコロニー(30バンチ)を訪れた際、シャアが、直接ナイフでやらないから大量虐殺ができるというようなことを言っていました。

こういうセリフをわざわざ入れたということは、やっぱり暴力の本質がどういうものか視聴者に感じ取ってほしかったのかな?

間接的な暴力では人の痛みが分からなくなってしまうから、直接殴り合う所を見せ、暴力というのは痛みを伴うものだと実感させたかったのでしょうかね。

鬱展開

Zガンダムでは前作にも増して陰鬱で悲しくなる展開が続きます。もう戦争なんてやめてくれと。人間ってほんと救えないなと思ってしまう。娯楽作品なのにすごく生々しい。

戦争というものの実感が無い世代には描けない雰囲気・世界観だろうなと思いました。ゲーム感覚の戦いとは全く違う。

宇宙世紀というフィクションの背後に現実の戦争が影を落としてる感じで妙に生々しいんですよね。

そのうえ民間人を毒ガスで虐殺しようとする場面が何度もあるし、巨大モビルスーツで街を破壊したり、洗脳・人体改造によって少女を戦闘マシン化し無理矢理戦わせたりと、これでもかってくらい暗い要素が盛り込まれています。見るのが辛かったですよ。

前作主人公のアムロたちも不遇です。前作ラストのハッピーエンドのまま終わって欲しかったなと思ってしまいます。

やっとジオンとの戦争が終わって平和になり幸せに暮らしているかと思えば、アムロはZに至るまでの7年間軟禁状態。脱出してもまた新たな戦争に巻き込まれてしまいます。

しかもアムロは以前の戦争のせいなのか軟禁生活のせいなのか、人間性を一部失ってる感じ。ファースト初期は人をなかなか撃てなかった彼が、今や敵を倒すためなら一切容赦がなくなってます。ファースト後半よりさらに殺人マシーン化している印象。

荒れてるカミーユですが彼にはまだ人の心があり、戦場で人を殺すのにためらいがあります。

でも戦争慣れしちゃった人たち(アムロとか)はそれを甘さだと考え、否定するのがなんとも悲しい。生き残るためにはそうするしか無いとはいえ辛いです。子供向けアニメでここまでシリアスにする必要あるのかなと思ってしまう。

Zを見るとファーストはシリアスの塩梅が上手だったんだなぁと感じます。暗いけど希望がありましたよ。敵ながらジオン兵には人間味があったし、ただただ残忍な敵と悲惨な現実を見せつけるだけのZとは違いましたね。

今回のアムロは戦いを肯定してるのがなんか嫌。人類は戦い続けるしかないみたいなことを言っちゃってるし、悪い意味で大人になってしまってますよ。理想を失ったつまらん大人に。

やっぱり今回の主人公はカミーユという次世代の青年なんだなぁと思わされます。青臭くても理想を持っていて欲しいですねぇ。

でもカミーユは過酷な現実によって精神を破壊され、最終回で廃人になっちゃうんですけどね。悲しいなぁ。

最終回まで見て思ったこと

最後まで見て思ったのですが、全体的に盛り上がりに欠けるガンダムでした。はっきり言うと、そこまで好きになれなかった。ファーストがとても良かっただけに落差が大きいです。

Zでは複数の勢力が登場するのですが、それぞれの目的が分かりにくいので話に入り込みにくいんですよね。

ざっくりといえば連邦軍内部にあるエゥーゴとティターンズという異なった思想を持った勢力の戦いなのだけど、各勢力内にもさらに派閥があるし、中盤からはジオンの残党アクシズまで出てきます。それらが手を組んだり裏切ったりと複雑。

また、各話に通じる大きな目的や物語の終着点が見えてこないのも残念でした。ひたすら小競り合いを繰り返しているだけの内容で盛り上がりに欠けます。

ストーリーの大きな流れが存在しない行き当たりばったりの展開だと次を見たいと思えないんですよね。

ファーストにはジオンを倒して戦争を終わらせるという分かりやすい終着点があったのですが、『Zガンダム』は何をしたいのやら良く分からない。エゥーゴにとってはどうなったら勝利なのでしょうか?

残虐行為を繰り返すティターンズを壊滅させるのが目的かと思えば、黒幕っぽかったジャミトフや暴虐非道なバスクはあっさり片手間のように殺されてしまいます…。

実際分かりやすい終着点は用意されておらず、最終回は打ち切りのような終わり方でした。地球を背景に、壊れた百式がふわーっと漂ってきて「ZG fin」の文字が出て終わりですからねえ。

本当の打ち切りであるファーストのほうがきれいに終わっているというのは皮肉です。

最終回でカミーユは、シロッコを超極悪人扱いして怒り狂った挙げ句殺害しましたが、そんなに悪いことしましたっけパプテマス様。

確かにカミーユの仲間が犠牲になったのは一部この人のせいですが、ラスボスとしては微妙じゃないですか。いまいち何をしたかったかわからないし、こいつを倒してどうなるのって感じ。

終盤の展開に不満

あと、終盤に味方が在庫処分のように退場させられるのはどうかと思いました。

主人公サイドの補正が無くなったのか知りませんが、今まで頑張って生き抜いてきた仲間が次々と雑に死んでいきます。そりゃないよと思いました。

いくらなんでも一気にやりすぎ。退場させるのは仕方ないとしても、最終回付近にまとめてやるとわざとらしく、陳腐になると思います。

そのうえ終盤のモビルスーツ戦は、謎のオカルトパワーバトルになってます。

モビルスーツから妖気みたいなのが立ち昇るし、Zガンダムは光り輝くし、死んだ仲間の意志を吸い込んでパワーアップするし、狂ってるのはカミーユじゃなくてこれを作った人間でしょと言いたくなりました。

全編を通し無駄に暴力的だったり陰鬱だったりする所を見るに、本当に病んでたんじゃないんでしょうかねぇ。富野監督は『Vガンダム』でうつ病になったらしいですが、この頃からやばかったんじゃないかと思ってしまう。

ガンダムはファーストで完結していて、続編を作りたくはなかったのに商業上の理由で作らされることになったという話も聞きますし、作品に恨みつらみが込められている気もします。

高圧的で現場を知らないのに口出ししてくるウォン・リーって、もろに無理難題を言ってくるスポンサーが乗っかっているような。

登場人物のこと

これはどうなのと思う点が色々とありましたが、キャラクターは良かったですね。カミーユすき。狂っているようで実は一番マトモだと思う(最終回近くで本当に狂ってしまいました)。

ピュアな感情や理想を捨てて汚い大人になることができなかった人。大人たちは現状維持しか考えず、戦争ってそういうもんでしょで思考停止。カミーユは悩んでるもんなぁ。

強化人間の女の子が正気を失い敵になっても諦めず説得しようとするのが泣けました。

攻撃されたら自分の身が危ないのだから容赦なく倒してもいいと思うけど、カミーユは最後の最後まで攻撃に踏み切れない所が良いですね。自分の命と同じくらい相手の生命も大切に思っている。

戦いを通して成長するけど、やっぱり理屈や大人の事情ではなく、純粋な感情や優しさに従って生きている。そこがたまらなくいいですね。

クワトロことシャアもいいですねぇ。復讐鬼だった頃とは違い、今回の彼は揺れていて少々頼りない感じ。理想はあるけど組織のトップにはなりたくない、一パイロットとして目立たないところにいたい。傍観者として表舞台に出ず、裏から成り行きを見守りたい。

シャアの苦悩、何を目指すべきか決めることができず揺れ動いている感じがとても人間らしくて良かったです。ファーストの頃みたいにイケイケじゃなかったものなあ。なんか思い悩んでるし、元気がないのですよねZのシャアは。

それとこの人は子供に優しいです。Zの大人はやたらめったら殴るけど、この人は自分が殴られているばっかりでほぼ殴りません。先輩としてカミーユを優しい目で見守っている。近づきすぎず離れすぎず絶妙の距離感がいいですね。

あと相変わらず台詞が面白いです。名言と言うべきか分からないけど、何故か口に出したくなる台詞ばっかり。

「サボテンが花をつけている」とか最高ですね。詩的で含みがある所がいい。このシーンではサングラスが外れうつろな目をしてるのもポイント高いです。

おわりに

全体として捉えると微妙な作品に思えますが、個々のエピソードに注目すると結構見どころがありました。ハマーン絡みのエピソードは良かったです。シャアとの因縁とか興味深い。あの辺りの話はもう一度見たいです。

また、キャラクターの人間関係に注目すると結構楽しめると思います。人物描写は丁寧になされている印象を受けました。

ただし希望も救いもない話なので、ファーストのようなハッピーエンドが見たい人にはおすすめできないですね。一方で鬱展開が好きな人には刺さるかもしれません。